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大魔導士と呼ばれた侯爵令嬢 世界が汚いので掃除していただけなんですけど… 【書籍2巻&コミックス1巻発売中!】   作者: K1you
諸国満喫編

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思いがけない発見

 改めて、ゴミから悪魔の心臓へ視線を移す。

 どうしてあれが立体として成立しているのか分からない幾何学模様は共通しているけれど、模様の構成はそれぞれだった。何か意味があるのかな。


「何も知らずに見ると綺麗なものもありますね」

「うん。私達には分からないけど、魔物からすると意味のある形態なのかもしれないね」


 思い出すのは前世であったQRコード、面で構成してある点は同じだよね。あれは囲碁をヒントに縦軸、横軸の組み合わせで情報を表していた。そこへ高低軸と色差を加えて複雑化したもの、なんて可能性もあるのかもしれない。

 もっとも、面に厚みがなかったり、面同士が点で交わっている個所もあるあたり、不思議物体なのは間違いない。


 封印庫には6個の悪魔の心臓が並んでいた。台座の数も合う。


「これらの保管記録は残っていますか?」

「用意してあります。ただ、100年を越えると曖昧な記述も多いのですが……」


 この場所は放置された時間が長いせいでホコリも多い。その痕跡から推察するなら台座を隠した可能性はないとは思う。

 とは言え、それでは査察が十分とは言えないので記録の提出を求めると、既にオットーさんが用意してくれていた。それなりに重要書類だとは思うのだけれど、枢機卿が彼を止めるそぶりは見せなかった。


 確かに、一番古い記録からずっと悪魔の心臓は6個だと記してある。念の為お願いしたオーレリアの簡易鑑定でも、インクの古さに偽装の痕跡はないみたいだった。

 つまり、記録を誤魔化して悪魔の心臓を悪用しようと思ったなら、100年は前から計画する必要があったことになる。不可能と同義だね。


「でもこれ、入庫記録がありませんが? いつ、どこから持ち込まれたのか分からないのでしょうか?」

「申し訳ありません。私達も調べたのですが、商人から買い取った、信者が提出してくれたなど、不確かな記録しか見つかりませんでした。今後は筆記を徹底したいと思います」

「入手先が明らかになったなら、戦士国で粘体を暴走させた異物がどこで見つかったものなのか推察できたのですけれど……」


 今の状態だと、自然発生すら否定できない。それはそれで放っておけない事態になる。


「意図的に隠蔽したかどうかも不明と言う訳ですか?」

「……そうなります」


 教義に基づいて回収してる訳だし、危険物なのは事実だから、普通に考えれば記録が不十分だなんてあり得ない。色々といい加減な教国らしいとも言えてしまうのだけれど。

 実際のところ、不明瞭のまま隠したのは数百年以上も前になる。オットーさん達を責めたところで、真相が明らかになると言うものでもない。

 6個全てが記入漏れとは思えない。

 入手先を明らかにできない理由があったのだろうってだけでも、解明のヒントにはなるかな。教国にとって都合の悪い何かだと言う情報は得られた。それで少しは可能性を潰せる。


「王国としても、戦士国の事件に教国の関与はなかったのだと確認できました。盗難、紛失でもなく、封印状態に問題は見受けられませんでしたので、新しく見つかった悪魔の心臓の保管も引き続きお願いします」

「戦士国事件はかなり深刻なものだったと聞いています。ここにある異物まで悪用される事のないよう、しっかり保管させていただきましょう」

「いやいや、何より疑いが晴れて良かった。痛くもない腹を探られるのは、面白いものではありませんからな」


 アイテムボックス魔法を教国で披露するつもりはないので、フランに持ってもらっていた箱ごと悪魔の心臓を渡す。

 恭しく受け取ったオットーさんは、すぐに台座の準備を命じて書類の作成に取り掛かり、枢機卿とその他の司教はあからさまにホッとした様子を見せた。

 多分、これで私が帰ってくれると思ったんじゃないかな。

 痛い方のお腹は絶賛調査中だけどね。そういつまでも、その椅子に座ってはいられないと思うよ。


「レティ! これ! これ見てください!」


 当面は諜報部に調査を任せて帰ろうかと考えたところで、オーレリアが大きな声を上げた。公の場での反応としては珍しい。


「その本がどうしたの? …………って、奇跡の霊薬!?」


 私も、思わず声を荒げていた。そのくらい衝撃が大きい。

 ゴミの中に本が紛れていたのには気付いていたけれど、てっきり禁書の類だろうと思ってタイトルまでは確認していなかった。


 奇跡の霊薬。

 その名前が表す通り、奇跡みたいな偶然の下で生まれた、奇跡の効力を発揮する薬。飲めばあらゆる怪我や病を癒し、一説によると死者すら蘇らせたと言う。

 実物は現存していない。伝承が残っているだけだから、何処まで真実かははっきりしない。丁度、初代聖女の活躍を切っ掛けに教国が誕生した頃に発見が噂された霊薬だから、その製法がここにあるのは不自然とまでは言えない。


「ですよね? 間違いありませんよね?」

「世間に晒せないからこの封印庫にある訳で……、なんとなく真実味を帯びてるよね」


 オーレリアも随分混乱して見える。無理もない。

 私としても、とんでもなく吃驚だよ。


 と言うか、どうしてこれがここにあるの? 偽物?


 真偽なら何処かの研究機関に預ければすぐ判明するだろうし、本物なら普通に国宝になる。製造が困難だったとしても、それだけの価値はある。真偽を確認するだけでも歴史に残る。

 これをゴミと一緒にまとめてあるとか、バカなの?

 せめてきちんと保管しようよ。改めて教国に呆れたよ。

お読みいただきありがとうございます。

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今後も頑張りますので、宜しくお願いします。

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