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大魔導士と呼ばれた侯爵令嬢 世界が汚いので掃除していただけなんですけど… 【書籍2巻&コミックス1巻発売中!】   作者: K1you
諸国満喫編

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レティの敗北

 テルミット教国については当面アドラクシア殿下に任せて、私は領地へ戻る事にした。無関係でいられる気はしないから、あくまで一旦の帰還だね。


 で、少しだけ久しぶりの領主邸では、最悪の報告が待っていた。


「申し訳ございません、お嬢様! 留守を任されておきながら、守り切る事が出来ませんでした」


 ベネットの謝罪が上手く頭に入って来ない。どうにも思考がまとまらない。

 胸の中に悔しさと不甲斐なさが渦巻いて、自分の感情を制御できない。


「許さない、許さない、許さない! 私の素材を返せーーー!!!」


 叫んだところで犯人には届かない。

 事件はもう1週間も前って話だからね。私の怒りだけが虚しく響く。


「本当に申し訳ありません。どんな罰も覚悟しております」


 衝動のまま叫んだ私は、腰を折る限界ってまで頭を下げたベネットを見て少し頭が冷えた。

 私の矛先は犯人……鏡像怪盗だけど、彼女は自分が叱られていると思ったらしい。何処までも恐縮してしまっていた。今の私は怒るより、責任を感じる彼女へ声を掛けるべきだったね。


「ごめん、ベネット、顔を上げて。貴女に怒っている訳じゃないよ」

「し、しかし―――」

「貴女が悪いなんて思ってない。確かに留守を任せたのは貴女だけど、侵入者対策は私の責任だよ」


 この屋敷は広さの割に使用人が少ない。現地雇用の使用人はベネット達古参に比べて経験が劣るって事情もあるけれど、何よりの理由は私が大勢を雇うのを好まないからだね。多くの使用人は研究所や実験施設の環境を整える為に使っている。

 その分、フランやベネット達の負担は大きい。

 だからと、セキュリティ面は魔道具を頼ったのも私。大勢の騎士を配置するより“模型”による防護体制を選んだ。


 だと言うのに、また怪盗に狙われた。

 再び私の不在に現れたのは偶然か意図的か、しかも今回は私が大事に保管していた魔物素材を盗まれた。


 対策を重ねたから大丈夫だと屋敷を空けた私が悪い。

 目的の品を手に入れた怪盗はまた煙のように消えたとは言え、屋敷の誰かが襲われる可能性もあった。中途半端な防犯対策で屋敷の皆を危険に晒した私が悪い。

 万全でないといけない筈のセキュリティに隙を残した私が悪い。


「ベネットに任せたのは“模型”の運用までなんだから、私の想定を超えた結果にまで責任を負う必要はないよ」

「お嬢様……」

「それより、何があったか詳しく聞かせて。国からの依頼を遂行している私の邪魔はできないって連絡を控えてくれていたんだよね? 映写晶の精査なんかは終わってるんでしょう?」

「はい。ですが、多くの映写晶を設置した“模型”内ではなく、怪盗は屋敷の中に現れました」


 この時点でいろいろと訳が分からない。

 正規の手段を踏まずに屋敷に入ったなら“模型”の中に囚われる。空間が繋いであるんだから抜け道はない。


 実際映写晶を確認してみると、例によって長いマフラーで顔を覆った怪盗が、屋敷の中へ忽然と現れた。前回の侵入で構造を把握したのか、宝物庫の傍だった。随分屋敷の奥になる。

 “模型”に入っていないなら内部で見張る騎士やクロが反応できる筈もない。


「他の映写晶には映ってなかったんだよね?」

「はい、目視での発見報告もありませんでした」

「どういう事なんでしょう、レティ様?」

「うーん……。怪盗は空間魔法が使えて、“模型”との接続面を飛び越えた? それとも魔法が無効化できるとか?」

「レティ様なら可能でしょうけど……」


 つまり、ほぼ無理って事だよね。


 コントレイルの実用化でアイテムボックス魔法の習得者が増えてきているとは言え、自在に空間魔法を使うとなると難易度がまるで変わる。そんな優秀な魔法使いが噂にすら上らないとか考えにくいかな。


 せめて犯行の様子を観察しようと凝視したところ、突然ノイズが入って映像が途切れた。


「ノーラ、これって……」

「ええ、呪詛で間違いありませんわ」


 映写晶は鏡面上に映った記憶だから呪詛の認識歪曲で乱す事ができる。魔力を抜く事で映写晶を止められた前回の失敗を生かして、映写晶に触れられないよう巧妙に隠した筈なのに、今度は映像自体が歪められてしまった。


 まさか、また呪詛が関わってくるとは思わなかったよ。


「この時点で警報が鳴り、私達も侵入に気付きました」

「屋敷に直接入って来られる事態を想定してないせいで、侵入警報は“模型”の中にしか設置してないからね。ベネット達が聞いたのは呪詛探知機の方って訳だ」

「はい。すぐに宝物庫へ駆けつけたのですが、宝物庫の前を見張る騎士は昏倒しており、何も覚えていませんでした」

「そして、ご丁寧に残した鏡の犯行声明だけがあった、と」

「……その通りです」


 呪詛探知機が反応した際に備えて、対策用の魔道具を渡してはあった。とは言え、虚属性の催眠効果で無理矢理正気を引き出す代物だから、常時稼働はさせられない。

 屋敷の奥に突然怪盗が現れて、しかも呪詛を発動させるなんて想定の外が過ぎる。魔道具の起動が間に合わなくても仕方ない。


 今度こそ確実に捕らえる筈だったのに、悉く上を行かれてる。これだと私が屋敷にいたとしても、捕まえられた自信がないよ。

 盗みを成功させたなら次があるとも思えない。腹立たしいけど完全に私の敗北かな。

お読みいただきありがとうございます。

ブックマーク、評価で応援いただけると、やる気が漲ってきます。

今後も頑張りますので、宜しくお願いします。

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