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大魔導士と呼ばれた侯爵令嬢 世界が汚いので掃除していただけなんですけど… 【書籍2巻&コミックス1巻発売中!】   作者: K1you
1年生編

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残った疑惑

 結局、警備隊の尋問でも、新しい事実は出てこなかったらしい。

 強いて挙げるなら、学院の一角に連中が確保したフロアがあって、そこに私を監禁するつもりだったってくらいかな。学院には施設管理者がいるんだけど、お金と権力で黙らせていたらしい。

 アートテンプ男爵令息がきっかけとなって、ラミナ伯爵令息とツウォルト子爵令息が人手を集め、私を襲撃しようと目論んだ。そう結論付けて、法に則って処罰すると聞いた。

 私としても、彼等には二度と関わりたくないので、そこに否はない―――んだけど……。


「お嬢様、お茶が冷えますよ」


 オーレリアを招待したお茶の時間でも、先日の事件について考えてしまっていた私を見かねて、フランが口を挟んできた。

 おっと、もったいない。

 私の好みは甘く香るフレーバーティー。あんまりゆっくりしてると、折角の香りが飛んでしまう。


「まだ先日の件が気になりますか?」

「まあ、ね」

「レティが気にするだけの理由があるんですね」


 オーレリアも気にかけてくれてたみたい。


「過去の監禁事件についても白状したらしいけど、被害者は男爵令嬢が何人かと、子爵令嬢が1人だけ。万が一の場合でも、権力で黙らせられる相手を選んでたと思う。夢見がちなボンボンはともかく、チンピラ達はそのくらいの危機感は、持っていた訳でしょう?」


 少なくとも、数年に渡って明るみに出ないだけの工作はしてあった。


「なのに、私を狙ったのは、リスクが高過ぎると思って」


 先生方は上位貴族子女の動向には常に気を配っているし、日中出歩けば声をかけてくる生徒に事欠かないくらいには、私は注目されている。私が姿を消せば、その日のうちに大騒ぎになる。変な噂があったとしても、お父様の意向に関係なく、教師も周囲も、侯爵令嬢が事件に巻き込まれた可能性を放っておけない。

 過去には王家の血も入った、国に4家しかない侯爵位はそれだけ重い。


「結局、彼らがリスクを踏み越えたのは、ある噂を聞いたから」

「第3王子に婚約拒否されたお嬢様を、旦那様が見捨てたという、あれですか」

「そう。いろいろと突っ込みどころがあるのに、連中がこれを真に受けたのはバカだったからって事は、間違いないよ。でもこの噂、結局出所がはっきりしないでしょう?」


 11人全員に詰問してみたけど、お互いの名前を挙げるばかりで、他に広がっている様子はない。

 追加で名前が出たのは2人だけ。

 トリス・ドライア伯爵令息とアイディオ・ガーベイジ子爵令息。

 後者は連中の顔つなぎをしたらしいので、警備隊がかなりきつめに問い質したと聞いた。碌な情報はなかったみたいだけど、車に隠れて出ても来られなかった性根で、警備隊の聴取に耐えられるとは思えない。だから証言に嘘はないと思う。


 問題はもう1人の方。


「ドライア伯爵……第3王子派閥ですよね」


 オーレリアも、私と同じ懸念に至ったらしい。


「イジュリーン様とは元々友人で、相談されて意見しただけ。共犯と呼べるほど関わってないから、警備隊も強く出られなかった」


 警備隊も、薄い根拠で貴族を相手にして強気には出られない。彼等の多くは爵位を持たない貴族籍の三男、四男。せいぜいが騎士爵くらいまでなので、職責を超えてこの件を捜査するには身分が足りない。

 それに、今回程度の関わりでは、お父様が出張ったとしても、ドライア伯爵家の責任追及は難しい。


「唆したのは間違いないんでしょうけど、白を切られると、どうにもなりませんね」

「うん。ドライア令息とは一面識しかないから、恨まれる覚えはないし、家同士も接点は少ない。正直、動機に見当が付かなかったけど―――第3王子の意向があるなら、話が変わるよね」


 この間、虚仮にしたところだからね。


「その仕返しとして、お嬢様を襲うように仕向けるなんて、行き過ぎではありませんか?」

「面目を潰した訳じゃないけど、周りにイエスマンばかり置いてるなら、さぞかし衝撃だったんじゃない?」

「実は、あの後、周囲の反応が変わってきているんです」


 オーレリアが言うには、私が最短で講師試験を受けた事が広がって、第3王子には見る目がないと、さらに立場を無くしてしまっているらしい。それに、私がやり込めてしまったものだから、第3王子を軽視するような発言まであるとか。

 で、そのヘイトは私に向かう訳か。

 いなくなってしまえばいい、と。

 行き過ぎだろうと、突き通せる立場の人だからね。

 今のところ接触はないけれど、第1,2王子側にノースマークが付くのは拙いから、今の内に私を排除したい、なんて思惑もあるかもね。


「それに、騎士教練の試験も受けましたよね?」

「もう、1ヶ月くらい前になるかな」

「その時に強化魔法を使いこなしていた様子が知られて、文武共にレティの実績を疑う者はいません。私と自主訓練しているところも隠していませんから、なおさらです」


 あー、試験の連続で頭が沸いてて、オーレリアの誘いに飛びついたヤツね。息抜きが嬉しくて、ラバースーツ魔法の加減を間違えた時だ。


「それも噂になってますから、私がレティの護衛だとまだ思っている人は減ってきています」


 誤解でオーレリアに迷惑が掛かってないなら良かったよ。


「その噂を、先日の輩は知らなかった訳ですから、情報操作されていたのでしょうか?元々素行が悪くて浮いていたそうですから、お嬢様の噂から隔離するのは難しくなさそうですよね」


 男尊女卑がまかり通る世界だし、私が強化魔法を使うと知っても、女性に負ける筈は無いって思い込みで、襲撃は起きたかもね。特に主犯の2人とか。


「それができるのは、比較的身近にいた者、だよね」


 つまり、第3王子の息がかかった可能性が高いトリス・ドライア伯爵令息。


「明確な証拠がある訳じゃないけど、そんなに間違っていないと思う。フランは覚えているでしょう、襲撃に加わった11人以外に、近くに2人いた事」

「……そう、でした」


 フランの索敵に間違いはない。

 はじめは見張りだろうと思っていたけど、捕まった連中からそんな話は出ていない。警備隊にも確認したけど、駆け付けた際には見当たらなかったと聞いた。


「逃げただけなら、事情聴取で名前が挙がった筈だよね。それがないなら、連中は離れていた2人を知らなかった」

「前後に分かれていた襲撃犯の、それぞれ一定の後方に控えていましたから、偶然居合わせた可能性は低いと思います」


 残念ながら視界に入ってこなかったから、後に回して他を片付けている間に消えていた。捕まえて尋問しておけば、今こうして悩まずに済んだのにね。


「あの2人が何の為にって考えたら、まあ、襲撃を見届ける為だよね」

「唆した本人か、顛末を報告する人間、ですよね。暴れるお嬢様をどこまで確認できたかは分かりませんが」


 まあ、ラバースーツ魔法開放状態の私を見たら、普通はすぐ逃げるよね。


 王子本人が確認に来るとは思えないから、代わりに人を遣ったとか、あり得そう。

 結局、私1人であっさり解決してしまったから、これも噂になって、王子の立場はまた狭まるんだろうけど。

 これで諦めてくれたらいいけど、力尽くが駄目なら、別の方法を考えるとかしそうなんだよね。


 物理的に私をどうにかできるとは思えないけど、後ろに王子がいるなら、権力的には向こうが有利なんだよね。愚かではあったけど、しっかり教育は受けているからバカではない筈。思い通りにならなかった事が少ないだろうから、その分諦めも悪そう。


 あんまり面倒な事にならないと、いいな。

誤字報告を頂きました。

見落としを見つけてくださって、ありがとうございました。

細かい点も気になるタイプなので、嬉しかったです。


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― 新着の感想 ―
頭が沸くだと逆上せている感じなので湧くの方じゃ無いかな? 頭に虫が湧くみたいな感じで
[一言] 侯爵家の令嬢を誑かそうとした諸々、侯爵家としての立場から、しっかりと埋め合わせを貰った思うけど、どれくらい貰ったのかと思うよ。
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