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大魔導士と呼ばれた侯爵令嬢 世界が汚いので掃除していただけなんですけど… 【書籍2巻&コミックス1巻発売中!】   作者: K1you
領地振興編

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4度目の秋、喜びの日

 288周 闇の年秋節 1の月1日、私としては歴史に残していいくらいの重大行事が行われる。


 私はその為に3日前から王都を訪れ、領都コキオに招聘する研究者達について王城へ報告し、分室として王都に残した学院内の旧研究室で進捗の確認を行い、めざとく面会依頼を取り付けてきた貴族に対応した。


 領地に引き籠る以上、王都へ来たなら面倒であっても最低限をこなさないと身体が空かない。


「帰るまでにイローナ様のお茶会には顔を出さないとだし、旧研究室移転候補の下見、子爵領所属研究者と魔塔の協力取り付け、まだまだやる事いっぱいあるね」

「レティは騎士団襲撃以来の王都ですからね。もう4カ月近くですか?」

「そんなとこかな。折角、領地に堂々引き籠ると宣言した訳だしね」


 コキオへ家庭教師を呼んで勉強を進めているオーレリア達も、テストは学院で受けないといけない。当然、王都へ向かう頻度は私と大きく差が開く。


 ちなみに、一応今でも学院に私の籍はある。

 結局、飛び級の前例は作らない方が良いだろうと、ジローシア様が用意した卒業証書は使わなかった。旧研究室移転は専用工房設立も含めてじっくり考えたかった為、私としても都合が良かったって事情もあった。


「今日の為に時間を作った訳だし、残ってる仕事については後で考えればいいかな」

「まさかとは思いますけど、今日の為に学院籍を残したとかではないですよね?」

「考えなかった訳じゃないよ。でも、四六時中見守れる訳じゃないし、そんな事考えてるって知られたら嫌われそうだからね。そんなの生きてけないよ」


 何と今日、カミンの入学式があった。

 その後の歓迎式典に参加するのはお姉ちゃんの義務だよね。


「欲求に素直なレティですけど、そのくらいは察せるんですね」

「私を何だと思っているのかな。私が参加すると会場が混乱するって殿下にも釘を刺されたから、こうして隠れて見守ってるんじゃない」

「普段から貴族と面会してるレティには、今更子息令嬢との交流は必要ないから登場を遅らせてほしいって要請だった筈ですけどね。隠れて見守るって選択肢は想定外だったと思いますよ。しかも、最新技術の無駄遣いです」


 実のところ、入学歓迎式典は既に始まっている。

 私の視線の先ではカミンがそつなく挨拶を交わしていた。カミンの前には長い列ができている。今年は王族の入学はないから、私の時と違って途中で仕切り直す必要もない。

 同じく侯爵令息のコールシュミット三男より列が長いのは、嫡男ってだけじゃなくて私との繋がりを求めてだろうね。


 実際、この状況で私がノコノコ出て行くと、パニックになって新入生同士の挨拶どころじゃなくなるかな。

 だからって時間を置いて会場入りって選択肢も拙い。殿下の立場なら普通でも、開会後に入場するのって基本的に王族だけだからね。思い上がっていると受け取られかねない。ここでの行動は逐一親の耳に入る。


 そこで使ったのが新技術、存在を隠す魔道具って事になる。


 ノーラがクランプル()ドレイク()を見えなかった力場を応用して、無属性魔力で私達を覆ってみた。

 姿が見えなくなるって訳じゃない。だけどこの世界の人間は、目視と同時に魔力を感知して認識しているみたい。既に現世での生活が長い私もその感覚に馴染んでる。だから、高濃度の魔力をまとうと視界が揺らいで感じる。

 それだけで存在を隠せたりはしないんだけど、無属性には魔力感知を掻い潜るって性質がある。これを魔道具で上手く調整すると、見えているのに認知から外れる。気配を断つとか、影が薄いって状況を意図して作れる。


 ちなみにこの無属性の性質については、ノーラのところにある蔵書にそのままあった。既知の筈なのに、何故かあまり活用されていない。

 更にグラーさんから聞いたところによると、無属性の斥候が使う技術としては案外有名との話だった。ただし、魔法じゃなくて技巧の一環って扱いらしい。

 無属性だから存在感が無いって訳でもないんだろうけど、無属性術師の絶対数が少ないだけあって研究者は割と不遇みたい。


 既知情報の組み合わせであっても新技術には違いない。

 一昨日王城へ行ったついでに報告したところ、用途制限技術って扱いに暫定した。諜報や暗殺に向き過ぎて混乱を招くって理由みたい。あくまでも魔力的な誤認だから、磁気的、光学的なレーダーを作れば対策はできるんだけどね。

 風魔法の防音と組み合わせると密会に便利だとか、機密保持に最適だとか、利点はあるから完全禁止の方向にはならないだろうって話だった。その手続きの為の書類をいっぱい書かされたよ。


 更にこの魔道具の長所として、視界には入っているから記憶には残るって点がある。後で思い出そうとすると、どうして声を掛けなかったのか分からないのかもね。私への接触を親から厳命されてる子は叱られるかもしれない。でもおかげで、遅れて会場入りして顰蹙を買うって事態からは免れた。


 そんな訳で、会場の中央近いテーブルで堂々カミンを愛でている。

 ストーカーじゃないよ?

 弟の成長を頼もしく見守っているだけだからね。普段、領地を遠く隔ててなかなか会えない事もあって、貴重な機会をじっくり堪能してるだけだよ。


 ついでに視界を動かすと、キャシーとノーラも学生達に囲まれていた。

 まだまだ貴族との繋がりが少ないあの2人は社交に励んでもらわないといけない。


「キャシーは随分頼もしくなってきたかな」

「もう1年以上、事あるごとに揉まれてますからね。数を熟しただけあって身分差が大きくても動じなくなりました。ですけど、ノーラはまだ危なっかしいですね」

「好悪で対応に差が見えるね。もう少し感情を隠せるようにならないとかな」


 カミンと違って、ノーラは見ててハラハラしてしまう。感情に疎いところがあるから、相手の苛立ちを察せないんだよね。一部、ちょっと塩対応が過ぎてる気がするよ。


 ずっと隠れているのは私だけで、オーレリアもさっきまで挨拶を受けていた。煌剣の事もあって、特に男の子から人気みたいだね。


「オーレリア様、お疲れ様です。姉様のお世話を任せてしまってすみません」


 そうこう話していると、カミンもテーブルへやって来た。

 身内の間で、ここは避難所として機能している。


 あれ?

 それより、カミンからすると私ってお世話される側?


「まだ列は途切れていませんけど、離れてしまって良かったのですか?」

「しつこく婚約を喰い下がってくる面倒な令嬢がいましてね。退く様子がないので逃げて来てしまいました」


 魔道具の甲斐あって、逃げたと言っても視界には残っている状態なので、疑問を抱かず列を維持するって不思議な状況になってるね。

 ちょっと面白い。


「婚約者が決まっていない侯爵令息ですものね。おまけにレティの弟ですから、言い寄ってくる女性も多くて大変ですね」

「……」


 まるで動じた様子のないオーレリアの反応に、カミンは少し固まった。カミンってば、3年前からずっとオーレリアが憧れのままだからね。

 まるで伝わってない様子が哀れではある。


 お姉ちゃんとしては、オーレリアが義妹に欲しいから背を押すべきなのか、ウザがられないように静観するべきなのか、ちょっと判断に迷うよね。


「さっきは少し面倒な相手に捕まってしまいましたが、断るだけなら簡単なのですよ」

「そうなのですか? 私も参考になります?」

「オーレリア様には難しいかと。僕の場合、自分の婚約については姉の縁談が決まってから考えますって答えるだけですから」


 ぐふっ!


 ニヨニヨ微笑ましく見守っていたら、とんでもない流れ弾が飛んできたよ。

 もしかして、それで当面通す気なの?

 私、いつの間にかカミンの反面教師になってた?


 残念ながら簡単に覆せる気がしないから、体のいい隠れ蓑の下でしばらくオーレリアを狙っててくれるかな?

お読みいただきありがとうございます。

ブックマーク、評価で応援いただけると、やる気が漲ってきます。

今後も頑張りますので、宜しくお願いします。

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