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大魔導士と呼ばれた侯爵令嬢 世界が汚いので掃除していただけなんですけど… 【書籍2巻&コミックス1巻発売中!】   作者: K1you
1年生編

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撃退

「何か御用ですか、ラミナ様」


 前方組の中心らしい男性に、一応、用向きを聞いてあげると、何人かが明らかに狼狽え始めた。話が違うと顔に書いてある。

 もしかして、紋章を堂々と晒しながら、素性を隠してるつもりでいた?胸に紋章を入れるのを、ただのファッションとでも思ってるのかな?容姿や身体的特徴以上に証拠能力高いんだよ?

 彼等と挨拶した覚えはないから、白を切れば逃げ果せるとでも考えてたのかもしれない。だけど、伯爵家2人、子爵家5人、男爵家4人、もう全員覚えたよ。


「侯爵令嬢様に家名を知られているなんて光栄だね。流石、博識でいらっしゃる」

「入学早々、講師試験まで受けるくらいだ、出来の悪い我々なんて視界に入ってないと思ってましたよ」


 後方の中心はツウォルト子爵令息。長男とは先日挨拶したから、次男か三男かな。朴訥そうだったお兄さんとはまるで似てないね。

 現在進行形で、視界に入れたくないとは思ってるよ。


「私が誰か知らない、と言う訳ではないようですけれど、こうして大人数で囲むだけで、こちらは恫喝されたと見做せるのはご存知ですか?」


 恫喝罪に当たる例として、きちんと規定されているよ。


「アンタが侯爵様や学院に報告すれば、そうなるかもしれませんが、ね」

「そんな風に口先はご立派な御令嬢でも、ちょっと痛い目に遭ってもらうと、大人しく口を閉ざしてくれるんですよ」


 ニタニタ笑いながら、暴力を仄めかす。

 全員がそこまで覚悟を決めてる訳じゃないだろうけど、少なくとも中心の2人は素性を知られても、被害者の口を封じて凌ぐ気らしい。

 まあ、丸太のような太い腕、見上げるような体躯でもって、獰猛な獣っぽい顔で睨まれたら、普通の女性なら何も言えなくなってしまうかもしれないね。


「淑女としては、こういう時、悲鳴くらい上げた方がいいのかな?」

「向こうを付け上がらせるだけかと。それに、お嬢様にか弱い振る舞いは似合いません」


 それもそうかな。

 さっきのラミナ伯爵令息の口振りからすると、こうして令嬢を脅すのも初めてじゃないみたい。そんな奴に弱さを見せるなんて、無いよね。


 大体さっきから視線が気に入らない。

 嗜虐的な目で私を見下しているのに、フランの胸を見る時はだらしなく緩んでる。イラッとするよね。

 フランが汚れるから、見ないでよ。


「いやいやご立派、強がるね。それとも、助けが来るとでも思ってます?」

「カロネイア嬢が講義に出ていて、来られないのは確認済みですよ」

「折角の護衛と離れて行動するなんて、危機感なさ過ぎでしょう。学院なら大丈夫とでも?」


 え?


 今、何と言いました?

 護衛?

 もしかして、オーレリアが?

 友達と行動してたら、私の護衛と思われてたの?


 吃驚だよ。

 思わず後方のフランを確認したら、彼女もきょとんとしてた。普通に友人付き合いしてたつもりだからね。


 この件は、後で状況を確認した方が良さそう。

 侯爵令嬢(わたし)が伯爵令嬢を護衛として使っているなんて誤解が広まったら、どんな弱みを握られたのかと、カロネイアの名前に傷がつく。私としても、友人を護衛だなんて思われたくないしね。


 意外にも、盲点に気付かせてもらった訳だけど、もういいかな。

 いい加減、不快だし。


 知らない男11人に囲まれる。

 前世だったら、こんなに怖い事はなかったと思う。男達に悪意がなかったとしても、震えて顔も上げられなかったかもしれない。


 従者にお世話されるのが当たり前で、ペンより重い物を持つ事が少ない私の腕は、前世より細いくらい。

 でも、この細腕を頼りなく思った事なんて一度もないんだよ。


「死なないように、気を付けてくださいね。手加減とか、考えた事ないので」


 警告だけしてあげて、前へグッと踏み込んだ。


 不意を突いたつもりはなかったけれど、フラン以外は誰も反応していない。構わず伯爵令息の二重顎をかち上げた。


 ―――ところで、実は私、強化魔法を使っていない。


 私のラバースーツ魔法は、あくまでもモヤモヤさんを漏らさない為の独自の工夫。魔力を体の内に留めて活性化させる強化魔法とは、似ているだけで、実際は違う。

 ラバースーツ魔法でも身体機能が強化されるのは、使う私のイメージに影響を受けた、副次的な作用なのだと最近知った。

 魔法の事を何も知らないまま作ったオリジナルなので、イメージはSFに登場するパイロットスーツや、ヒーロースーツ。体を覆うだけで良かったのに、余分な要素が追加されている。


 だからこの魔法、本気で使うと、私を超人に変える。


 打ち上げられたラミナ氏は、天井に激突、逆V字軌道を描いて廊下に墜落した。


「へ!?」


 驚いてる暇、ないよ。


 続けてツウォルト氏を攻撃するべく、距離を詰めたつもりの私だったけれど、目測を誤って体当たりになった。かっこ悪。

 私とぶつかった子爵令息は、周囲にいた2人を巻き込んで、廊下の端まですっ飛んで行ったよ。知恵の輪みたいにもつれ合ってて、ちょっと引く。


 オーレリアみたいに華麗に舞うのは難しいね。

 どうしても、イメージと実際の動きがずれてしまう。彼女みたいに、毎日鍛錬積んでる訳じゃないから仕方ないけど。私の場合、最低限の自衛で十分だからね。


「ば、化け物!?」


 失礼な事言って2人ほど逃げた。

 逃がすと思う?


 フワリと跳躍して回りこむ。

 ラバースーツ魔法発動中なので、周りからは矢の様に飛んで見えたかもだけど。


「お嬢様、あまり無防備に飛び上がられると、スカートの中が見えますよ」


 あ、しまった。

 私は少年漫画の主人公じゃない。貴族令嬢は気品が大事。


 でも、まあ、記憶が無くなるくらい殴れば、問題ないよね。

お読みいただきありがとうございます。

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[良い点] ((((;゜Д゜))))ばけものだー
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