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大魔導士と呼ばれた侯爵令嬢 世界が汚いので掃除していただけなんですけど… 【書籍2巻&コミックス1巻発売中!】   作者: K1you
王位決着編

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オーレリアからの依頼

 結局、ガノーア領は首都のみを治める最小規模の領地となった。

 タウゾ・ガノーアは陛下の意向通り処刑、彼の子は全員亡くなっている為、爵位は孫が引き継いだ。

 エッケンシュタイン元伯爵と違い、領民への圧政はなかった事からガノーア家の断絶だけは免れた。ただし準男爵位まで降格した為、後継者の在位中に功績を上げないと次代へ家を残せない。

 エッケンシュタインに並ぶ悪逆の地として名前が知られてしまったから、かなり厳しい舵取りになると思う。


 襲撃に加担した元騎士達には、兵役を課した。およそ10年、魔物領域を切り開く最前線で戦ってもらう。死刑で償ったところで、誰も報われない。戦地で命の重さを存分に思い知ればいい。

 都合よく、生活圏を取り戻すために魔物の討伐を急務とする場所が帝国の西にあった。


 でもって元々ガノーア子爵領だった土地の大半はと言うと、私の南ノースマーク領へ併合された。子爵に遺恨はあっても、民に責任を追及する気はないから統治するのに異論はない。


 仕事が増えたって事でもあるけど、労働力も増えたと受け入れた。

 元エッケンシュタイン領と違って困窮してないから比較的手がかからなくて済む。ただし、元々子爵の土地としては大きかった私の領地が更に拡大した為、周囲との軋轢は増えるかもしれない。


 ガノーア元子爵に味方したローマン伯爵も、取り決め通りに当主が交代した。

 その後は悲惨で、仲の良かった長子と末子が失脚し、ほとんど追い出される形で家を出た次男と三男が戻ってきた。蟄居した元伯爵に対して反感があるのは勿論、この2人の仲も険悪なせいで家が割れたらしい。

 私の知った事ではないし、貴族の継承争いとしては珍しくもないので勝手にすればいい。

 積極的な関与がなかったリジャ子爵とカーギー男爵には多額の賠償金が課せられる。かなり甘めの量刑だけど、領地の規模からすると厳しい支払いになると思う。それでも無辜の民を襲ったガノーア元子爵を味方して、支払いを待つような酌量の余地はない。


 そしてディルスアールド侯爵家の失墜で勢いを失った第2王子派閥はと言うと、今回の一件が明るみになると同時に反社組織の一斉検挙を殿下主導で行った。自派閥からも膿を出し、国を害する存在は決して許さないと清廉さを最大限にアピールした。

 貴族の支持を失った代わりに、民衆からの名声を得たって感じだね。

 ただで転ばないのがアノイアス殿下らしい。


 こういう機を見る才気は、ジローシア様を失った第1王子派閥からは欠けてしまっているかな。

 そんなアドラクシア殿下も派閥が盛り返す機会を無駄にする気はないみたいで、飛行列車ソールで北の小国家群へ足繁く通って存在感を高めている。あらゆる言語が堪能なイローナ様を最大限に生かしているよね。


 そして、長過ぎる冬休みを満喫していたオーレリアも戻ってきた。

 もう随分春めいてきてるけども。


 ずっと遊んでいた訳じゃないのは聞いていた。ダンジョンから引き揚げたタイミングで通信も貰っていたからお互いに事情も知っている。


 何でも、攻略が捗り過ぎたらしい。

 今回の探索で初めて踏み込んだ深階層は想定よりずっと広く、複雑ながらも深く深く続いていた。中規模と規定されていたウェスタダンジョンは、下層の発見で大規模ダンジョンへと更新された。

 それに見合ったダンジョン素材や遺物も多く発見し、カロネイア伯爵家の個人的な探索とはいかなくなった。


 ダンジョンは国の財産に位置付けられている。

 これに挑む冒険者も、きちんと申請しないといけない。そして探索の進度を細かく報告する義務が生じる。面倒がある分、新発見や未踏領域更新は正式な功績として記録されるんだけどね。


 国の最高峰戦力(カロネイア将軍)が携わっている事もあって、この機会に探索を進めるだけ進めておこうと、国が主導するダンジョン攻略になった。

 ダンジョンから発掘される宝物類も美味しいし、攻略したってだけで歴史上4例目の快挙となる。しかも大規模ダンジョンの攻略例はないから、国が乗り出すだけの価値が十分にあった。

 軍の攻略部隊が次々投入され、冒険者も多くが集う。私が開発したもの含めて新兵器も惜しみなく注ぎ込んだと言う。


「で、次は私の番って事?」


 兵器扱いと言っていいよね?

 魔導士ってそういうものではあるけども。


「元より軍属ではありませんし、爵位を持つレティにダンジョン攻略は命令できません」


 ダンジョンへ行くなら生死は自己責任、保険も補償もない場所へ子爵領主に赴けなんて、ディーデリック陛下でも命令できない。

 そんなの貴族の特権を脅かす事態だからね。


「ですからこれは、私からの個人的なお願いです。力を貸してもらえませんか?」

「何があったの?」

「現在31層を攻略中なのですが、奥へ向かう通路を塞いだ魔物を討伐出来ないんです」


 まず31層って数字に驚く。

 過去に攻略した3カ所は20層に満たなかったと聞いている。


 そして、討伐出来ない魔物がいるって事が信じられない。


「当然、カロネイア将軍も挑戦したんだよね?」

「ええ、けれど魔物はあまりに大きく表面が堅くて、父の棍でも傷1つ付けられませんでした」


 カロネイア将軍の強化魔法は他に類を見ない。

 彼のオリジナル魔法ってくらいに極めてある。ワーフェル山では竜の骨を砕いていた。打撃では国内最高位となる。


 それ以上の威力となると対竜用の330mm砲か、私の臨界魔法くらいしかない。

 前者は移送に時間がかかる上、大きさ的にダンジョンでの使用に向かない。持ち運びやすいのは私の方だよね。


「不壊属性とか持ってたら、流石に私でも無理だよ?」

「ダンジョンですから絶対とは言い切れませんけど、そんな伝説上の存在はいないと思いたいです。その確認の為にも、ノーラにも同行してもらいたいと思っています。勿論、レティとノーラの安全はカロネイアの威信に賭けて確保します。2人は部隊の中央を歩いてもらうだけで構いません」

「わたくしは問題ありませんわ。お力になれるのなら、是非手伝わせていただきます」


 オーレリアからと言うか、カロネイア伯爵家からの正式な要請なので、判断は私に委ねられている。いつかみたいに危ないからって、フランにも止められない。


 私としても、前々からダンジョンへ行ってみたかった。しかも深層へ行けるなんて、今回を逃すときっと無い。

 オーレリアから新素材発見の連絡を貰う度、すっ飛んで行きたかった。


 つまり、私の返事は決まってる。


 とは言え今の私は子爵、欲望を先行させて領地を空けられない。

 焦らす気はないけどスケジュール確認を優先していると、指名されていないキャシーが口を挟んだ。


「レティ様、あれの試運転に丁度いいんじゃないですか?」

「あー、なるほど。上手くいくならダンジョンに活用の道も開けるね」


 ダンジョン体験に未知の魔物、しかもカロネイア将軍に恩も売れる。更に新発明の実験も兼ねられるなら無理するだけの価値もある。


 だけどキャシー。

 ダンジョンへ行く気満々だと知って、後ろで婚約者(グリットさん)がハラハラしてる様子だけど……いいのかな?

お読みいただきありがとうございます。

ブックマーク、評価で応援いただけると、やる気が漲ってきます。

今後も頑張りますので、宜しくお願いします。

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