表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大魔導士と呼ばれた侯爵令嬢 世界が汚いので掃除していただけなんですけど… 【書籍2巻&コミックス1巻発売中!】   作者: K1you
王位決着編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

305/694

盗賊の情報 1

 この辺りには元々、盗賊の類は出なかった。


 元侯爵領はお父様がきっちり管理していたし、元エッケンシュタイン領は荒廃が過ぎて盗賊も襲う価値を見出せなかった。

 人道に反すと言うリスクを、端金では犯せない。盗賊の心理なんて理解できないけれど、そう言うものらしい。


 でも扶心会からの貸し付けで財を得、私の領主就任で復興までの徴税を停止したから生活に余裕が生まれた。領都建設を通勤制にした事もあって、地方にもお金が巡った。

 そのせいで、盗賊にとっての利益がリスクを上回ったのかもしれない。

 治安維持の為に冒険者へ巡回を依頼していたものの、どうしても数は少ない。獣や魔物への想定はあっても、徒党を組んだ人間への備えとしては不十分だった。不備は理解していても、事実として人的余裕は無い。

 その隙を突かれてしまった。


 賊は大人数、組織だって活動している可能性が高い。


「スカーレット様、わたくしは一度領地へ戻ります。エッケンシュタインでも同様の事が起こっているかもしれません。すぐに、すぐに確かめなくては……!」


 ベネットの報告を聞いたノーラは、慌てた様子で席を立った。

 自分の民が凶刃に晒されているのかもしれない。

 そう思っただけで、居ても立ってもいられなかったのだと思う。止める暇もなかったよ。


 情報収集に暫定領主当人が出向く必要はないし、次に備える為にも情報が集まりやすい場所にいた方が良い。あらゆる事態を想定して準備を進めておく事も領主の仕事となる。

 とは言え、感情的になってしまったノーラに待機は難しかったかな。

 気持ちは十二分に分かるし、諭すのは帰って来た時にしてあげよう。


 私だって腹が煮えている。

 それでも責任を負う者として、努めて冷静でいなければと自身を諫めた。今の私に必要なのは激昂する事じゃない。速やかに対策を練り、領内の安全を確立しないといけない。


 情報収集、討伐隊の編成、被害地の救援、防備の拡充、対策の選定等々、やるべき事は山積みになっている。


「ベネット、面会希望者は応接室?」

「いえ、怪我が酷い者もいましたから、医務室に通してあります。回復薬は与えましたが、直接向かわれますか?」

「すぐに行くよ。ベネットは他の作業者から情報を集めて」


 面会者の身を清めさせて、貴族の前に出ておかしくない程度に取り繕うまでゆっくり待つ、なんて慣例は私に要らない。

 身体が汚れている事や服装がみすぼらしい事を不敬だとは思わない。今はいろいろと時間が惜しいし、無理を押して報告に来てくれた人達を待たせるなんてとんでもない。


 何より、被害がまだ広がるかもしれないこの状況でじっとしているとか耐えられない。

 冷静である事と悠長にしていられる事は別なんだよ。




 私が医務室に急ぐと、そこには3人の姿があった。


「―――! スカーレット様!」


 内2人は作業員だけあって私を知っている様子だった。私もなんとなく見覚えがある。

 平伏しようとしたのを手ぶりで止める。


 私に会う為か、一応は着替えていても汚れまでは落とせていない。その中には血を拭った跡が見て取れた。多分、コントレイルで移動中に服だけ借りたんじゃないかな?

 回復薬で傷を癒しても、体力や心労への効果は無い。今は休んでもらった方が良いと思う。


「何があったか、聞かせてもらえますか?」

「は、はい。オレ、じゃない、私? それがし?」

「……落ち着いてください。言葉を改める必要はありません。頭の中で言うべき事をゆっくりまとめて、貴方の言葉で話してください。この場で何を言っても、咎める事は決して致しません」

「あ、はい……、はい。オ、オレ、ウル村のもんです。で、その、こっちが兄貴のセブ。普段はここで働いてます。あーっと、俺はゾフ、です。んで、あっちが隣村……つっても、山の向こうだけども、今朝、ラマン村から逃げてきたテガ……、です」


 最後に紹介されたのは、まだ私と同じくらいの子供だった。

 余程大変な目に遭ったのか、随分と憔悴して見える。まだ恐怖は去っていないみたいで、身体を縮こまらせていた。


「えと、今は領主様の奇跡で大丈夫そうですけんど、うちの村に来た時には酷い有様だった。そんで、テガが言うには、一昨日、突然村が襲われたっつー話でした。村に滞在していた冒険者様も殺されちまって、テガは必死で逃げたみたいだ。昼も夜もなく、ひたすら山を越えたって聞いてる。だもんで、多分、村はもう……」

「……無事である可能性は低いでしょうね」


 私が口にした残酷な現実に、テガ少年はピクリと震えた。

 ひょっとすると、想像させてしまったのかもしれない。だからと言って、気休めを言っても仕方ない。


「それ聞いて、オレ達はその事をすぐ周りに知らせねぇとって思ったんです。けど、オレ達が走るより飛行列車の方が早いって気付いて、いつもの迎えの時間を待つ事にしたんです。……そしたら、もう少しで時間だってところで、山賊どもがオレ達の村にも来やがって……」


 賊の動きが早い。

 テガ少年を追った可能性もあるけど、山を越えた先まで勢力を伸ばすかな?

 山奥の村では実入りも少ないかもだけど、複数の村を襲えばその分リスクが跳ね上がる。実際、こうして存在が露呈した訳だしね。


 考え無しに動いているだけなのか、想像以上に規模が大きいのか。

 盗賊団の規模が大きいならそれだけ多くの財を狙わないといけないとは言え、それで標的が山村ってのも、何やら不自然さを感じるね。


「確認させてください。ウル村を襲った賊達の移動は車でしたか?」

「ああ、車だった。スゲェ勢いでぞろぞろ乗り付けてきたんだ」

「なるほど、そうなるとテガさんを追った可能性は低いですね。ウル村とラマン村、2つを結ぶ山道はありません。必然、盗賊は山を迂回した事になります。恐らく、そこに別の村があると知っていたのでしょう」


 領主になって叩き込んだ知識を掘り出しながら、推測を口にする。

 私が知ってるって事は、少し調べれば盗賊にも手に入る程度の情報ではある。逃げる子供を追って、銃や魔法の射程内に捉える事なく山を越えたって線よりは、初めからどちらも襲うつもりだった可能性が高い。


「……かもしれねぇな。アイツ等の装備はすんげぇ整ってました。車もごついヤツで、銃も、防刃着ってんですか? そんなのも揃っていて、俺等が抵抗したくらいじゃ、どうにもなりそうになかったです」

「そんな中、よく逃げられましたね」

「運が良かったんだ。山賊どもは、飛行列車が定期的に来るってぇ事を知らねぇ様子でした。あれは明らかにお貴族様の持ちもんだから、討伐に来たと思ったんか、スゲェ勢いで散ってきました」


 充実した装備で山村を襲う盗賊。

 しかも、定期的に領地中を巡回しているコントレイルは知らない。


 どうも、おかしな情報ばかりが出てくるね。


「オレ達は早く領主様に知らせねぇとってそのまま飛行列車に乗ったんだ。そんで、何人かは応援を呼ぼうって、近くの町で降りました。オレ達が助かったのはスカーレット様のお陰で……、その、ありがとうごぜぇました」

「お礼を言うのは、私の方です。大切な情報を届けてくれて、ありがとうございます。それに、皆さんが無事で良かったです」


 何よりの本心だった。

 当然、盗賊は許せない。私の身内に犠牲が出た事、腹立たしく思っている。


 でもそれ以上に、生還者がいてくれた事が嬉しい。


 心内に渦巻いている感情を、彼等に晒す必要はない。これは、盗賊共に贖わせるって決めてるしね。

お読みいただきありがとうございます。

ブックマーク、評価で応援いただけると、やる気が漲ってきます。

今後も頑張りますので、宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ