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大魔導士と呼ばれた侯爵令嬢 世界が汚いので掃除していただけなんですけど… 【書籍2巻&コミックス1巻発売中!】   作者: K1you
1年生編

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30/690

入学

 オーレリアと王都を観光して、海水浴に行って、今世初の温泉を堪能して―――王都に遊びに来た訳じゃないからね。


 この国の始業は秋からになる。昔、夏前の雨期になると、王都が水害に遭うため、各地の貴族が支援物資を持って王都に集まり、復興がひと段落した時点から学院を開始していた名残らしい。

 欧米みたいだな、なんて暢気な感想は早々に粉々になったよ。勿論、夏季長期休暇の由来も同じだからね。旧名、復興休暇。休めたのは授業だけだと思うけど。

 私、その時代に転生しなくて良かったよ。


 貴族は既製服なんて着ないから、制服はない。

 だからって規制なしだと、奇想天外な格好の人が湧いてくるから、白系のシャツとブレザーだけは規定されてる。ブレザーは華美が過ぎないもの、とあるだけだから、色の指定もされてない。装飾以外の金と銀は王族の専用色だけど、他は何でも許される。

 袖や裾、ポケット口に刺繍や装飾品を付けるくらいで、他は生地の質や柄で差別化するのが普通。胸に紋章を入れてる人も多いね。

 あくまで原則だから、背中に大きな竜の刺繍を入れている男の子とか、フリルをいっぱい付けてドレスみたいにしている子とか、宝石を大量に縫い付けたビーズアートみたいな子もいるけどね。

 貴族の判断に、いちいち文句付ける人もいないしね。

 インフルエンサーのつもりかもしれないけど、奇抜が過ぎて、評判を落とすだけだよ。


 私は、赤いブレザーとチェック柄のスカートを用意した。派手なのは好きじゃないけど、袖に芙蓉の花を刺繍してもらった。地味過ぎると貴族らしくないと言われるからね。でも、胸の紋章だけで十分派手な気がするよ。貴族的にはこれを柄とは見做さないらしいけど。


 おとなしめが好きなオーレリアは紺色のブレザーに灰青色のスカート。前世制服的な組み合わせだけど、籠手を描いた盾を雲模様で飾った紋章があるだけで、随分印象が違う。

 丸襟のブラウスが可愛いね。

 もっと動きやすい格好だと思ってたから、ちょっと意外。風魔法なら、スカートが捲れる心配しなくていいのかな?


 私とオーレリアだけでこんなに違う訳だから、講堂に集まると目がチカチカしたよ。色とりどりの子女500人以上がアーチ型の講堂に詰めかけてる訳だから、無理もないけどさ。


 入学式なんて、世界を跨いでも違いはあんまりなかったよ。

 お偉いさんのお話は、何処の世界も長いって再確認したくらいかな。隣のオーレリア含めて、船漕いでる人はいっぱいいたよ。私はオーレリアの頬っぺつついて起きて(あそんで)ました。

 国王様から始まって、宰相、各種大臣、魔塔と軍の責任者、都長、学院長。耐久長話レースは半日続いたよ。国の有力者全員来る必要あったかな?暇なの?責任者出て来い!って叫ぼうと思ったけど、一番最初に出てきてました。ここ、王立だからね。




 学院は日本の大学の単位制に近いから、式の後は教室に集合、なんてない。

 次の予定は学院生の交流パーティー。

 憂鬱な予定が続くよね。


 パーティーは夜だから、一旦解散。

 時間の余裕はあるけど、公式のパーティだから、次はドレスを着なくちゃいけない。制服が正装扱いだった日本の学校は楽だったとしみじみ思う。


「レティ、受ける講義を相談しましょう」

「あー、うん」


 オーレリアには悪いけど、私は生返事。


 学院の講義内容は、必修科目と選択科目に分かれてる。

 必修科目は基礎を中心とした初等教育、選択科目は将来の専門に応じた内容を選べる高等教育。

 単位の修得はテストの合否で行われ、テスト自体は何時でも受けられる。つまり、初日に合格してしまえば残りの授業は免除されて、単位が手に入る。何なら、講義開始前に受けても問題ない。必修でも選択でも同様に。

 卒業の条件は、必修の単位を揃えるだけ。ただし、貴族子女の交流が、学院の第一目的なので、中途卒業はない。

 必修内容は入学前に予習して、多くの者がテストだけで終わらせる。4年かけて選択科目を履修するのが一般的と聞いていた。


 オーレリアのお誘いは、この選択科目を合わせましょうって事。

 仲のいい友達と、授業をできる限り揃えようと思うのは当然だよね。分からないところは教え合って、テスト前は一緒に対策。

 オーレリアがそれを望んでくれてる事は、理解できるんだけどね。




 10日程前、入学手続きの後、講義内容を見た私は吃驚したよ。

 選択科目含めて、未修内容がありません。

 むしろ、ハバーボス大陸語とか、ルミテット教国の歴史とか、南部遊牧部族の文化とか、寒冷生息魔物の生態とか、講義予定にない知識もいっぱい履修済みですけど!?


 私、王都に何しに来たの?

 4年間、卒業はできないんだよ!?

 考えてみれば、幼少期からとはいえ、6年間あれだけ勉強したんだから、学院の履修範囲で収まる筈もないけれども。


 いや、お父様たちがどうして私に勉強させたのか、フランが説明してくれたから理解はできる。

 国が今、王位を争って割れている事も知っている。

 そこに来て、私の立場が微妙なのも分かる。

 追加で学んだ内容も、無駄にならないものばかりだと思う。


 でも、立ち直るのに少し時間をちょうだい。

 次に帰ったら、私同様に頑張ってるカミンをいっぱい褒めてあげよう。




「学院講師試験、ですか」


 私としても、オーレリアと一緒に勉強したいのはやまやまだけど、どう考えても叶いそうにない。テストを受けずに、内容を知ってる講義に出るのが許されるほど、侯爵令嬢の立場は甘くないしね。

 隠しても仕方ないので事情を説明して、これからどうする予定かも伝える。

 まあ、驚くよね。

 ちなみに、オーレリアも3割くらいは選択科目も学習済みで、空いた時間は騎士の訓練に混ざるんだって。


「まずは学院のテストを終わらせなきゃだけど、選択科目の単位を全て取り終わったら、特例の試験が受けられるんだって」


 前例のない試験ではないらしい。何年かに一度は受験する者がいると聞いた。例えば、第2王子とか、お父様とか。


「家の方針でいろいろあるとは知ってましたけど、改めて聞くと驚きますね。じゃあ、レティは先生になるんですか?」

「ううん、講師になると学院施設に専用スペースが割り当てられるから、しばらくはそこで領の仕事をする予定」

「ああ、家の仕事を持ち込むには、寮は機密性が乏しいですからね」


 王都邸はあるけれど、そこに籠ると子女との交流が果たせない。だから、学院の一角に籠る、と。

 宛がわれる仕事は、強化魔法練習着関連の諸々。領地で仕事を引き継いだ文官を心配してたら、私に降ってきました。

 知らなかっただけで、元々その予定だったんだろうね。


「余裕ができるなら、魔法の研究はしたいかな」


 主にモヤモヤさんの、とも言うけど。


「魔塔に入るんですか?」

「そこまで本格的に始めるかは分からないけど、講師になったら閲覧できる専門資料が増えるらしいからね」

「講義する気になったら、教えてくださいね。絶対、受けに行きますから」


 知ってたけど、ぐいぐい来るよね、オーレリア。絶対、の圧が強いよ。


 学院生活始まりました。

 思っていた学生生活は無かったけども。

お読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
あー、この世界も制服がないんですかー、前世暗殺者のお嬢様の世界も制服がなかったなー、皆さんドレス姿の中で1人だけ大人っぽいのを着てたけど、こちらは一応基準があるのが、いいね! スカートの長さはどうなん…
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