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大魔導士と呼ばれた侯爵令嬢 世界が汚いので掃除していただけなんですけど… 【書籍2巻&コミックス1巻発売中!】   作者: K1you
2年生編

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ファンタジー世界は何でもあり

 私に力場を分解されて、転がったドレイク種は、目を丸くして周囲を窺ってから、檻の隅で小さくなった。

 力場の再展開はすぐにはできないのか、自然界ではあり得ない現象に晒されて混乱したのか、身体を端に寄せて警戒を続けていた。寄った先は壁じゃなくて檻だったから、あんまり意味のある行動ではなかったけれど。


 しばらく警戒した後、キィーッ! と高音を発してから、ゆっくり浮かび上がった。

 発動にはかなり魔力を使うみたいで、大量のモヤモヤさんが溢れたよ。アーリー持ったままだから、すぐに掃除したけども。


「この様子だと、浮かぶ事が防衛行動でもあるのかな?」

「竜としてはかなり小さいですし、爪や牙も攻撃に向いていませんからね。レティの魔法が、かなり警戒心を刺激したようにも見えました。浮かぶ事が、どう防衛と繋がるかは分かりませんが」

「少なくとも、少なくとも地上の魔物に襲われないからでしょうか?」


 それで身が守れる地域に生息してるって事かな。


「浮かぶ時の印象からすると、浮力でしょうか? あたしはそんなふうに感じました」

「いえ、何かに反発する力が働いているようですわ」


 反発?


「見えたの?」

「ええ、徐々に魔力を収束させていたようです。完全に消えたのは、浮かぶ直前だと思いますわ。力場自体は見えませんでしたが、身を守る為、何かを弾こうとする意図は読み取れました」

「守る? 飛ぶとか逃げるじゃなくて?」

「はい」

「身を守っているの? これで?」


 プカプカ浮かぶ様子からは、まるで察せない。


「試してみますか?」


 言いながらオーレリアは細身剣を鞘ごと竜に突き付けた。


 そのまま軽く、ぐいと押す。


 それだけの筈が、オーレリアは剣を取り落とした。想定外とはいえ、隙を見せた事が恥ずかしかったのか、慌てて剣を拾い上げる。


「オーレリア?」

「すみません。思ったより強い力で押し返されたので、手が滑りました」


 漂う竜側に変化はない。


 オーレリアに剣を借りて、私も突いてみる。こんな面白い現象、試すしかないよね。


 うん、剣先は竜に届かない。

 竜から5センチ程度で押し返される。力を込めると、その分強く返ってくる。見えない壁を突くんじゃなくて、同極の磁石を近付ける感じ。

 備えてないなら、剣を支えられないのも分かる。

 これが力場範囲なのは間違いない。何処を突いても、同じくらいの距離で力が働く。満遍なく全体が覆われている。ノーラが強化魔法に例える訳だね。


 キャシーとマーシャも、勿論後に続いた。


 ぐいぐい押すけど、竜が動く気配はない。

 なるほど、防衛行動だね。

 小さくても竜だけあって、常識で測れる代物じゃなかったよ。


「きゃっ」


 考えをまとめようと竜から視線を外していたら、キャシーが短い悲鳴を上げて倒れた。


「面白いのは分かるけど、加減して突かないと。力を入れ過ぎると危ないよ」

「してないですよ! 急に強い力で押されたんです!」


 え?


「まさか、反発の程度を調整できるの? ……流石、竜だね」

「……竜ですね」


 あんまり突付くものだから、届いてなくても、竜を苛々させたみたい。


「反射の力場ですか。限界はあるのでしょうが、鉄壁ですね」

「ううん、反射の魔法はあるけど、これとは別ものだった」


 私も付与した事があるから間違いない。

 ウォズの意見を否定する。


「反射は接触した物体に、逆方向の力を加えるものだった。触れる前に弾いたりしない。それに、反射だと、クランプルドレイクが浮いてる理由にならないよ」

「別の力場を働かせているのではないですか?」

「可能性がないとは言わないけどさ。浮こうとする様子はなかったんだよね、ノーラ」

「はい。ただ、短い時間でしたので、絶対とは言えませんわ」

「じゃ、もう何度か試してみようか」


 サッと、箒アーリーを向けた。

 不確かでも、再現性があるなら確度が上がる。


 ノーラが触れれば、もう少し詳しく情報が得られるんだけどね。

 ゆっくり近づけると、鞘で触れる事もできた。脅威と判断されない程度なら、反発力も弱くて済む。

 でも今は突き過ぎて、竜の気が立ってしまった。

 噛めば指を喰い千切るくらいはできそうだから、触れての鑑定は、またの機会に回そう。




 代わりに力場の分解を三度繰り返したら、明らかに不機嫌そう。さも迷惑といった様子で、私を睨むようになったよ。警戒どころか、敵意を感じる。攻撃手段があると危ないから、少し離れようかな。


「身を守る以上の意図はないようですわ」


 ノーラのお墨付きが出た。

 対象の感情を読んでいる訳ではなく、魔力に込めた意図を感じ取るから、見落とし以外で間違いはないらしい。


 浮かんでいるのは、副次効果と思っていい。


「でも、でも、反発力でどうして浮くのでしょう?」

「反発……反対の方向に働く力、反作用、斥力……。ものを持ち上げる力、浮力……その反対って事は……」


 え!?


 重力、万有引力が物体を星の中心側へ引き付けている。その逆に働く力、言葉だけなら知っている。


 反重力。


 電気の(プラス)(マイナス)、磁力のN極とS極といった、引き付ける力と反発する力は同時に存在して、相互関係にある。だから引き付ける力である重力にも、反作用側の力がある筈……なんだけど、確認されていない。

 前世、今世共に、ね。


 この太ったトカゲモドキを浮かせる力が、反重力!? 確かに、存在自体がファンタジーではあるけれども。


 腑に落ちない感が酷いよね。


「反重力……ですか?」


 オーレリア達に説明しても、このやるせなさ感は伝わらない。前世ほど、突き詰めて研究されてないからね。


「でも、こうして存在すると分かったなら、再現はできるかもしれませんね」


 ……そうなんだよね。


 無いと思い込んだままだと、魔法に落とし込めなかった。噛じった常識が邪魔してた。

 でも在ると知ってしまった今、既にできる気がしている。科学からファンタジー事象に墜ちた途端に、これだよ。しかも、イメージを補強する現物が目の前にいる。


 今回ばかりは自分の出鱈目さに、呆れたよ。

お読みいただきありがとうございます。

ブックマーク、評価で応援いただけると、やる気が漲ってきます。

今後も頑張りますので、宜しくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] まぁ、質量による斥力が働いてたらどっか吹っ飛ぶだろってかんじではある 質量って要はエネルギーをその場に押し留める力のことだから、その反対は常に動き続ける質量ゼロのエネルギーの光な感じはする
[良い点] 物理様はログアウトしました。 たとえ反重力があったとしてもそう相殺することはない、とツッコみたいところですが、異世界だから仕方ないですね。 察するに不思議な結界みたいを作って、本来の重…
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