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大魔導士と呼ばれた侯爵令嬢 世界が汚いので掃除していただけなんですけど… 【書籍2巻&コミックス1巻発売中!】   作者: K1you
2年生編

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魔眼の検証

 言われて初めて気付いたけれど、檻へ向いたノーラの視線は、中にいる、丸くずんぐりした個体からズレている。


 本当に見えていないんだ。


 思ってもみない事態にギョッとする。

 同時に納得もいった。見えてないなら、話に混じれないのも当然だよね。


 でもどうして?


「も、申し訳ありません。わたくし、お役に立てなくて……」


 あ。

 今は原因なんてどうでもいいや。先にノーラを落ち着かせないと。


「大丈夫ですよ、エレオノーラ様。貴女が悪いとは限りません。見えないという事も、1つの結果ですから。原因は皆で考えましょう」

「ウォズの言う通りです。竜については、分かっていない事が多いのですから、鑑定できないという新事実かもしれません」

「それよりあたしは、ノーラの状態が心配です。他に見えてないものはないですか?」

「キャシー、無理言わないの。見えて、見えていないかどうか、ノーラ自身に分かる術はないでしょう」

「あ、そうか」

「でも、でも検証は必要ですね。日常生活に困るようでは、問題ですから」


 うん。

 私の出る幕なかったね。

 頼もしい仲間達で安心するよ。


「じゃあ、竜の事は置いておいて、先にノーラの眼について検証しようか。まずはどんなものが見えないか、確認するところからかな?」

「あ、あの、わたくしは困っていませんから、気にしていただかなくても結構ですわ。収穫祭まで時間もないのですし、研究を優先してください。他の魔物は見えていますから」


 ノーラならそう言うだろうとは思ったけどね。

 でも今回は余計な遠慮だから、押し切らせてもらう。


「技術の確立には正確な情報が必要だから、私達はノーラができる事を把握しないといけない。まあ、それ以前に、友達に問題があったら、普通に助けるよ。ノーラが私達の役に立ちたいのと同じ、私達だってノーラを気にかけているからね」

「誰かを助けたいと思ったレティは止まりません。おかげで聖女の名前が一人歩きしているくらいです。お友達の為なら尚更です。遠慮するだけ無駄ですよ」

「おまけに、おまけに今回はノーラの魔眼への好奇心も含んでますから、気にする必要もありません」

「は、はい。ありがとう、ございます……」


 説得は要ったけど、受け入れられただけでも進歩かも。もう少し前なら、ノーラは恐縮するだけだったろうし。


 と言うか、オーレリア達のそれは、フォローなのかな? 私って、そんなに自分勝手に見えてるの?


「とにかく、仮説を組み立てよう。一緒に貰ってきた魔物は見えているなら、決定的な違いは対象が竜って事だよね」

「でもレティ、それだと、これ以上検証しようがありませんよ」

「オーレリア様がイーノック皇子に頼んだら、他の竜も貰えるんじゃないですか?」

「……キャシーは私を帝国に売る気ですか?」

「い、いえ、そんなつもりじゃ……」

「エレオノーラ様の魔眼に関する事ですから、帝国を巻き込むべきではないと思います。エレオノーラ様の価値は、竜より高いですし」

「そもそも、そもそも友人なのですから、比べられるものではありませんよね」

「ごめんなさい、あたしが軽率でした」


 失言ではあったけど、一つ可能性ではあるから、これ以上咎めるほどではないかな。そもそも話の振り方も悪かったしね。


「他の竜での確認は、最後に回そう。あと考えられるのは、隠蔽魔法のようなもの?」

「俺達には普通に見える訳ですから、可能性は低いと思います」


 確かに、ノーラ専用の隠蔽とか、意味が分からない。


「竜が鑑定を弾く可能性は残りますよね。レグリットさんにもお願いしてみますか? 今ならレティのお屋敷にいますよね」


 うん、それは有りだね。

 フランに呼び出してもらおう。


「少し、少し気になるのですが、ノーラは魔法を色で判別するのですよね?」

「はい。属性毎に、光って見えます」

「無属性、無属性だから透明に見える、なんて事はないでしょうか? 安直過ぎますか?」


 マーシャに言われて、無属性魔物の代表格、スライムへ視線を向けた。


「念の為に訊くけど、ノーラ、アレが見えないなんてないよね」

「はい。スライムは見えていますわ」


 だよね。

 魔眼を明かしてくれた時も、回復薬を見たからだった。それで私の付与と、量産品を見分けたんだし。


 だけど、なんとなく気になった。1匹掴んで持って来る。


 スライムと竜の差は?

 属性以外に共通する部分がないくらい。でも、スライムが魔物の原点だって仮説を信じるなら、竜の本体は魔石とその周辺の器官って事になる。

 その動力となるのは魔力。魔法とは異なる体系で奇跡を起こす。だから、含有魔力量の大小で、魔物の優劣が決まる。


 なら、その差を埋めたら?


 いつもみたいにモヤモヤさんを注ごうとして、思いとどまった。ノーラが見るなら、私とスライムの属性は同じじゃない。

 代わりにポーションの原液、濃縮した魔素を振りかけた。


「ノーラ、これなら、どう? さっきと何か、違いは見える?」

「あ、はい。今度は透けて見えますわ」


 おお、と皆がどよめく。


 多分、これが答えに近い。マーシャの仮説通り、無属性は透ける。それが高魔力体なら更にってところかな。


「ところでノーラ、あっちの飛び鼬は、どんなふうに見えてる? 普通の魔物と違いはある?」

「はい。これまで見た魔物は多くありませんが、魔力を体内に収束させていましたわ。けれど、ここにいる魔物は、魔力を外側に張り巡らせています。人が強化魔法を使った状態に近いですね」

「! それって、それって、力場が見えているのではないですか?」

「多分ね」

「つまり、魔力の膜で常に覆われているって事ですよね。竜の場合も恐らく」

「うん。同時にこれが、ノーラが見えない原因じゃないかな? もともと薄く見えにくい上に、更に無属性の膜に包まれて、完全に視界から消えたんじゃない?」

「……もしかしてレティなら、その力場を剥がせるんじゃないですか?」


 魔法の分解か。

 竜がこのサイズなら、私の魔力量より多いって事はないから、できるかな。


 私はミニ箒、アーリーを竜に向ける。


「ノーラ、ちゃんと見てて。すぐに戻ると思うから」

「は、はい」


 ぶつける魔力があんまり多いと、竜に被害が出るかもしれない。慎重に魔力を練る。


「やっ!」


 私の掛け声と同時に、ノーラの目が大きく開いた。

 ついでに竜が、コテリと落ちた。


「! 見えました! 見えましたわ。丸くうずくまった可愛いトカゲですよね!」


 可愛いかどうかは、意見が分かれると思うけど。


 でも見えた事には違いない。

 ノーラの魔眼に異常はなかった。これで、検証を進められるね。

お読みいただきありがとうございます。

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今後も頑張りますので、宜しくお願いします。

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― 新着の感想 ―
強化訓練用ラバースーツを着たレティの服と同じってことか~
[気になる点] >「おまけに、おまけに今回はノーラの魔眼への好奇心も含んでますから、気にする必要もありません」 >「そもそも、そもそも友人なのですから、比べられるものではありませんよね」 どもったりし…
[一言] 魔力が見えていたからこそ 姿が認識出来なかったんだね 光学迷彩みたいな感じかな? さて次回は可愛いトカゲさんの色々が 明らかに。楽しみ楽しみ。
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