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大魔導士と呼ばれた侯爵令嬢 世界が汚いので掃除していただけなんですけど… 【書籍2巻&コミックス1巻発売中!】   作者: K1you
2年生編

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ジローシア様のお茶会

 話は少し遡る。


 2年目の新学期が始まった頃、王城から招待状が届いた。

 差出人は、ジローシア様。

 つまり、いつものお茶会のお誘い。王子の名前で届くやつと違って、強制力はない。余程の事情がなければ応じるけれど、研究を優先していいよう配慮してくれている。


 いつもは、ね。


 招待状の最後を、新しい化粧品を楽しみにしている、と締めてある。ここを読み違えると、大変な事になるって、春に思い知ったよ。要するに、次の品を持って来いって催促だからね。

 以前にスルーした時は、アドラクシア殿下が研究室までお使いに来た。勿論、ぞろぞろ側近連れて。頼むから新作を出してくれって、頭を下げられたよね。どんな八つ当たりを受けたんだろう。人前で第1王子に畏まられる居た堪れなさったら、なかったよ。

 聖女様は、王子の弱みを握っているんじゃないかって、学院中の噂になったよね。勿論、火消しには苦労した。間違っても、殿下がパシリに来たとか言えないし。対処を間違えたら、不敬罪で首が飛ぶ。

 二度と繰り返してはいけないと、心に刻んだね。


 お茶会を開いては、自慢ついでに配るので、消費がとっても早い。ジローシア様の人脈作りに役立てて心証は良いし、これ以上ない宣伝だから私の利も大きいけども。


 その日も、新作を携えて王城へ向かった。


 王城での社交は、ノースマークでは本来お母様の役割なのだけど、私は聖女スカーレットとしての参加になる。当たり前だけど、他に未成年なんていない。


「まあ! 今回はフェイスクリームの新作なのですね。夏を越えて、お肌も疲れているから助かります」


 お土産があるなら、ジローシア様はいつでも上機嫌です。

 ジローシア様の使う分がなくなった訳じゃないから、何かしら話題になるものがあれば、満足してくれるよ。


「皆さんも、是非試してみて。今日も、スカーレットさんが自信作を届けてくれました」

「前のも良かったから、楽しみですわね。スカーレット様が次々新商品を作ってくださるから、心強いわ」

「私は今回の香りの方が好きね。まるで本物のお花みたい。近頃、きつい香りを敬遠するようになっていたから助かるわ」


 そう言って喜んでくれるのは、テーグラー伯爵夫人と、ガッターマン前伯爵夫人。どちらも第1王子派だけど、テーグラー夫人は戦争に逸りがちな旦那さんを諫めてくれている。ガッターマン伯爵家は、キッシュナー伯爵に近い立ち位置のところだね。

 私がお付き合いするべき人達を、ジローシア様が集めてくれている。


「ありがとうございます。今回の香りは特に、開発者が気を使ったようです。気に入っていただけたなら、きっと喜びます。香りにこだわった商品は、まだいくつか候補があるようですから、続けて商品化できるかもしれません」

「それは楽しみね。是非と伝えていただける?」


 営業みたいな真似してるけど、私はこれらの開発に関わっていない。魔漿液の化粧品利用における、基礎開拓が私の研究であって、化粧品事業は既に私の手を離れている。

 私はただ、委託したメーカーを回って新製品を運んできただけだよ。


「贅沢を言わせていただけるなら、ハンドクリームの改良をお願いしたいわ。先日いただいたものは、つけた後のべたつきが、少し気になるの」

「多分、できると思います。平民向けの商品には、働く女性を対象としているものもあります。それをテーグラー夫人に相応しい品質へ昇華するよう伝えますね。夫人は伯爵と剣の稽古もされるそうですから、使用後の滑りがないよう速乾性で、手の荒れが残らないよう魔漿液多めで調整させていただきます」

「助かるわ。剣を嗜むからと言って、綺麗な手を諦めなくて済みますもの」


 貴族用働く女性シリーズなんてのも、需要がありそうだね。


 ここでの意見は開発と売れ筋の参考になるから、化粧品会社も私の報告を待っている。

 そういった事情が噂になって、私は王都中の化粧品メーカーと付き合いがある。魔漿液事業を断る会社もなかったしね。


「新しい化粧品事業は、好調のようだね。私の知人も、投資した甲斐があったと喜んでいたよ」


 化粧品自体ではなく、事業景気について振ってきたのは、ハミック女伯爵。第2王子派に所属するやり手と聞いている。


「魔漿液を使った高級路線が貴族の方々に人気の分、従来品が市民の富裕層に流行しているそうです。これまで手に入らなかった、一つ上の品に手が届くと喜んでいました。この特需はもうしばらく続きそうですよ」

「大火なんて暗い話の後でも、好景気が続くのは嬉しいね。聖女様々だ。ただ、こんな時だからこそ、良からぬ事を企む輩も現れる。ジローシア様の弟君も、何やら良くない集まりに加わっていると聞いたよ」


 確かアドラクシア殿下の護衛を首になって、軍に異動になったって人だったかな?


「それはジローシア様もご心配でしょうね。それは若手貴族の集まりですか?」

「いや、軍の中でも言動が過激すぎて、主流派から爪弾きにされた者達だそうだ。一応、勉強会と銘打っているそうだがね」


 この件はオーレリアとも共有が必要だね。ハミック伯爵は、それを見越しているだろうし。


 お茶会では、自分で探る他、こんなふうに情報を流してもらえる事もある。化粧品運搬係の対価としては、破格だと思う。


 何度か参加して知ったけど、このお茶会、優秀な女性が顔を揃えている。お菓子と美容の話しかしていないように見えて、油断なく周囲を窺っていたりする。ここで夫の愚痴をこぼしたら、家の内情を洗いざらい探られる、なんてことも珍しくない。鴨と狩り手が明確に存在するよね。

 世間話を、いつの間にか領地の裏話にまで誘導する手腕は、私も勉強させてもらってる。


 これだけの人選を、派閥を越えて行えるのがジローシア様だからね。手の広さには、敵う気がしない。

すみません。

前置きが長くなってノーラの話まで辿り着けませんでした。


お読みいただきありがとうございます。

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今後も頑張りますので、宜しくお願いします。

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― 新着の感想 ―
ん-、第一王子派ではないと言いながらやたらと王子妃の要望(我儘)には否応なく応えてるレティの姿勢は、派閥に取り入ろうとしていると思われても仕方ないのでは? 揉めない事が一番ではあるけど、第一皇子をいず…
[一言] お茶会と呼んでるけど、実は貴重な情報交換会だったとは…そんな意図はなかったのだろうけど、これが奥様達の井戸端会議を侮ると足元掬われるって奴か(ちょっと違うかもw)
[一言] ノーラの話は、あれで終わったのかと思いました。
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