冒険者ギルドに行こう ドヤ顔聖女
着替える為に一旦別れ、寮の前で待ち合わせた。
「……レティ? その恰好で行くのですか?」
「うん!」
何故か戸惑っているオーレリアへ、元気に答える。
折角冒険者ギルドに行けるのだから、衣装だって今日の為に揃えた。
アニメのカッコ良かったヒロインを参考に、なんちゃって冒険者でまとめてある。カットソーとショートパンツの上にロングコートを羽織り、胸と腰をベルトで絞めてスカート風に裾を広げている。
コートは肩までだけど、肘から手首までのつけ袖をリボンで止めてある。そしてロングブーツにオーバーニーソックス、少し色気があるのが定番だよね。私の歳なら、健康的くらいで済む。
私としては可愛くミニスカートでも良かったのだけど、ここだけはフランが折れてくれなかった。実際に冒険へ行く訳じゃないから、中が見える心配いらないのにね。
「……」
「……(ふるふる)」
私は気合いを入れたのに、オーレリアはいつものお忍び服だった。フランも付き合ってくれなかったし。
あと、何で無言で会話してるの?
「冒険者登録……しようって訳じゃ、ないですよね」
「うん、活動の時間は作れそうにないしね」
「なのに、そんな装備を用意したんですか?」
「変かな? 冒険者に見えない?」
ベルトとか、ヴァイオレットさんを参考にしてるから、そんなに外してないと思うんだけど。
強調する胸はないから、アクセサリー以上の役には立っていないとか、深く考えない。
「……とても似合っては、います。ただ、全て新品を身に付けるのは新人くらいです。なのに服の品質は駆け出しらしくありませんから、冒険者として見るのは難しいです。お忍びだと、すぐに分かりますよ」
む、それは想定外。
お忍び服であっても、品質を落とすのはフランが許してくれないから仕方ない。コートとか防刃素材だしね。コスプレでもいいや。碌に使えないレイピアとか吊ってるくらいだし。
冒険者ギルド本部は軍施設を抜けた先にある。
非常時に連携を密にする為だね。先日の大火でも、多くの冒険者が救助活動に参加していた。
他に支部が北と南にあって、王都全域を網羅している。
競技場のような建物が目に入る。
訓練場や研修所、資料館、武器庫など、複数の役割が詰め込まれている。競技場っぽいのも比喩じゃなくて、冒険者同士の闘技会なんかも行われているらしい。収穫祭の武道大会でも、予選会場の1つになる予定。
各領地の支部とは規模が違う。
同時に、剣と銃と大陸を示した紋章も見えた。
冒険者ギルドには、国境を超えた武力の所持が認められている。その力は民の為との方針の下、統率された軍隊とは異なる武力が集まる。
入り口をくぐると、広々としたホールとなっていた。
正面には受付らしき窓口が、右手には大きな掲示板、いくつもの依頼書が貼り付けてある。思ったより雑多な雰囲気はない。多分、依頼者が気後れしないよう、整然と管理されてるんだと思う。
揉め事を避ける為か、ランクや依頼内容毎に窓口が細かく分かれていて、役所みたいな印象もある。
ただし左側には、堂々酒場があったりする。
冒険者同士の交流を助ける潤滑剤だったり、依頼人との面談の場だったりするらしいけど。酔えば口も軽くなるし、依頼が上手くいけば、振る舞い酒の1つもしたくなるのかもしれないね。
勿論、奥に談話室もある。
緩い面談を望む人ばかりじゃないし、人に聞かせられない話もあるだろうしね。
残念ながら、ホールは閑散としてた。
時間が悪い。昼を大きく回った今から仕事を始める人はいないし、報告に帰って来るにはまだ早い。依頼人と内容を詰めているグループがいくつかと、空いた時間で情報交換している人達しかいない。
酒に溺れる時間にも早いし、不良冒険者に絡まれるのは難しそう。
「お久しぶりです、オーレリア様」
私が興味津々見渡していると、職員の1人が話しかけてきた。
恰好を見るに、貴族専門の折衝担当。用があるなら屋敷へ呼び出すのが貴族の普通だけれど、直接伺う人もいない訳じゃない。急ぎの場合とか、人に言えない面倒事を抱えた人とか特に。
悪印象を与えない為か、職員の所作は柔らかく、服装も不快感を与えないようしっかり整えられている。
「お連れ様とご一緒は珍しいですね。こちらの可愛らしい冒険者さんは―――」
にこやかに話しかけて、その途中で固まった。
ばれたかな?
ひと目で緋の聖女と分からないよう、コートは白を基調に、赤いラインを入れるくらいに留めたんだけど。
「噂の聖女様にお会いできて光栄です。私、副ギルド長のセイファスと申します」
おや、ただの職員さんじゃなくて、ここのお偉いさんだった。
考えてみれば、貴族の相手をするなら役職も必要だよね。相手を軽んじているとか思われたら、大変だしね。
恭しく礼をするけど、声は抑えてくれた。
冒険者コスプレの意味を察して気を使える人みたい。
どうでもいいけど、フランは何に驚いているのかな?
「私を御存知で?」
「はい。大火の折、私も救護所におりましたので」
なるほど。
流石に挨拶してない人まで覚えてないや。それどころじゃなかったし。
「本日はどういった御用向きでしょう? 本日、ギルド長は不在ですので、宜しければ私がお話を伺いますが」
「お願いします。魔物の事で、少し相談があるのです」
副ギルド長セイファスさんの案内で、受付の奥へ進む。
その先には扉が金で装飾された、豪華仕様のエレベーターがあった。どう見ても賓客用、貴族に階段上らせる訳にはいかないんだろうね。
もっとも、王都邸とか高層建築物は少ないから、階段に抵抗のない貴族は多いと思う。勿論私もそう。まあ、気遣いと思って受け入れようか。誰がデザインしたのか、その金ピカ扉は私の趣味じゃないけどさ。
ふと思ったけど、階段ってのも1つの手だよね。
わざわざギルドまで来たし、今は魔物の浮遊種を検討中だから、頭の隅に置いとこう。
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