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大魔導士と呼ばれた侯爵令嬢 世界が汚いので掃除していただけなんですけど… 【書籍2巻&コミックス1巻発売中!】   作者: K1you
2年生編

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研究室の本気

 オーレリアの勧誘をかわした翌日、まだ諦めていない気のする彼女を諫めながら、収穫祭への参加についてウォズに相談した。

 当日までもう時間がない。

 準備が要るならすぐにでも動き始めないとね。

 お祭りになれば、財布の紐が緩む人も多くなる。普段できない事を試す機会でもある。何もしないのはもったいないよね。


「確かに物販は避けた方が無難でしょうね。来客を受け入れるだけの余裕が学院にありません。中央公園を借り切って、販売所の奥でスカーレット様が手を振っていてくれるなら、いくらでも売り上げが伸ばせそうですが、今回は止めておきましょう」


 冗談のつもりかもしれないけど、笑えないからね。

 あの拝むような、讃えるような視線に晒されてないから言える事だよ? 何の御利益もないのに祈られると、呵責で心が削れるからね。期待って、背負い過ぎると本当に重いから。


 あと、今回はって予防線張ったの、聞こえたよ。

 この先も絶対やらないからね。


「一応、いつ相談されてもいいよう考えてあります」


 おお!

 私なんて話の流れで漸く思い出したのに、流石卒がない。


 ……さっきの聖女物販(じょうだん)が案の1つだったりしないよね?


「中央公園でのイベントへ参加するのはどうでしょう? スカーレット様の活躍は広く知られていますが、大衆の場に顔を出された事はありません。お声を聞きたいとの意見は多いです」


 おや、意外に堅実だった。

 ノースマークでは普通の活動だけど、王都で出しゃばる真似はしていない。

 元々は自分の民だって認識がなかった。私はノースマークの令嬢だから。でも、聖女として持ち上げられて、扶心会に多くの寄付を貰って、いつまでも余所者って訳にもいかないよね。


 折角のお祭りなのに、お金儲けを絡ませないのはウォズらしくない気もするけれど、いい機会かもしれない。


「無事収穫を迎えられた事のお祝いと、納税へのお礼を言えばいいのかな」

「ええ。内容はスカーレット様にお任せしますが、聖女基金への協力の感謝を伝えても良いかもしれません。王都の人々は、一貴族としてでなく、聖女様としての参加を望んでますから」


 なるほど。

 寄付のおかげでどれだけの人達が救われているのか、喧伝する訳だ。

 きちんとした用途に使われている事の周知にもなる。聖女の宣伝もあるんだろうけど、私ここの領主じゃないからね。


「ついでに募金箱でも置く?」

「そうですね。貴族や富豪でなくても、善意で参加できるのだと知ってもらうのは良いですね。多くは期待できないでしょうが、お祭りの空気が後押ししてくれるでしょう」

「皆もそれでいい?」

「ええ。実際に人の場に出るのはレティですから、貴女が良いなら、問題ありません」

「聖女と、聖女様との対面を望む声は私も聞いています。多くの人々にとって良い事だと思います」

「わたくしも、異論はありませんわ」

「……あたしはどうでもいいです」


 あ、キャシーがやさぐれている。


「それでグリットさんが帰って来る訳じゃありませんし、あたしの為に戻るなんて言ってくれませんでしたし、そもそも先に誘えなかったあたしが悪いんですし……」


 うん、とってもめんどくさいね。


「でも、でもキャシー、貴女には他人事じゃないでしょう?」

「……どういう意味?」

「家を、家を継ぐって決めたのでしょう? 貴族で居続ける予定のない私やノーラはともかく、大勢の前でレティ様とのつながりを周知しておく事は、必要でしょう?」

「……そうだけど」

「ウォルフ男爵家は田舎貴族で、王都には知っている人なんてほとんどいないんだから、貴女はレティ様の協力者なんだって知ってもらわないと」


 珍しい。

 マーシャ(おねえちゃん)に叱られてる。


「気持ちが、気持ちが分からないとは言わないけれど、家長になるなら、尚更公私の区別はつけなさい。そんな様子で、信用してもらえる訳がないでしょう?」

「ごめん……。レティ様もすみませんでした。ウォズも、その、話の腰折ってごめん」

「いえ。でも確かに、スカーレット様とご一緒された方が、今後の為になると俺も思います。……それから、オーレリア様もお願いできますか?」

「ええ。戦征伯、国軍にも協力している事のアピールですよね」


 突然話を振られても、オーレリアに迷いはない。


 貴族として人前に立つなら、家の名前は外せない。

 税金で生かされて来た私達は、いつだってその責任を背負っている。


 そんな様子を目の当たりにして、キャシーの背筋も自然と伸びた。


「それから、参加する催しは夜になります」


 ?

 なんでわざわざ夜?

 私達未成年だから、夜のイベントに出るには学院の手続きが面倒じゃない?


「折角ですから、光芒の魔道具で入場を彩りましょう」


 あ、実用化の目途が立ったんだ。

 年末にカミン達へのお土産にと作った光魔法のおもちゃ。ビーゲール商会に技術を渡した後の経過は知らなかったけど、研究は続いていたみたい。


「権利は譲ったんだから、ビーゲール商会でお披露目しないの?」

「緋の聖女、スカーレット様の演出に使った方が、宣伝になるでしょう? 多くの人が一度に目にしますよ」


 うん、ちゃんとウォズだった。

 思考がきちんと金色(かねいろ)してるよ。


「そこでお願いがあるのですが、舞台の演出を幻想的で、厳かに盛り上げる魔道具を開発できませんか?」


 おっと、何やら無茶振りが来たよ?

 半月もないって分かってる?


 研究室としての参加っぽいけどさ。

 儀式への参加じゃなくて、お祭りの余興だし、あんまり貴族然とするより良いかもだけどさ。


「例えば、例えばレティ様が空から登場する、とかですか?」


 ちょっと、マーシャ!?


「いいですね。滑空するより、ゆっくり舞い降りると雰囲気が出そうです。そういったものをお願いします」

「スカーレット様なら、魔法で何とかなりませんの?」

「いえ、空中浮遊の魔道具はロマンです! この機会に、あたし達で挑戦しましょう! レティ様頼りは最後の手段です」

「それならレティのドレスも合わせたいですね。着地の際、ふわりと広がると素敵じゃないですか?」

「今から仕立てるのは難しいですね。お嬢様が所持しているものだけでは、見栄えを満たせそうにありません。お母様にお借りできないか、問い合わせましょう」


 どうして皆、そんなに乗り気かな?


 キャシー、今は私事でいいと思うよ。もう少し拗ねてて大丈夫だから。

 それからフラン、どうして貴女まで混じっているの? 私を着飾る情熱放っておいて、いつも通り私の後に控えていてくれて、いいんだよ?


 う、でも空飛ぶ魔道具は魅力かも。


 風魔法で人を浮かすのは現実的じゃない。揚力を得るには、それを受けるだけの翼が要るからね。今回の場合は、無属性の空間魔法かな? 魔物が浮く力場の再現に挑戦するのも面白いよね。その場合、属性は何になるんだろ?


 悪目立ちしたくないのに、魔道具のアイディアは湧いてくる。


 これ、ウォズの術中だよね。

 光芒の魔道具、後出しだったし。

 聖女の名声を高めて、新しい魔道具の開発が進む。一挙両得を狙われてる。

 それが分かっても、逃れられそうにないのが問題だよね。面白いって思った時点で、振り払える気がしない。

 私以外も含めて、ね。

 構想にかけた時間で、既に負けている。


「よし! 皆で飛行方法を考えようか。私としては、滑るみたいに公園を回りながら高度を下げるのも、捨て難いと思う」

「覚悟、決まったみたいですね、レティ」

「さっすがレティ様! 最高の演出にしましょう!」

「飛び方が決まらないと、魔道具の構造も定まらないからね。急いで決めてしまおう。成功例、ないんだから時間厳しいよ」

「初代導師が研究した際の備忘録を読んだ事がありますわ。失敗例ですけど、参考になりますか?」


 お、助かる。

 流石エッケンシュタイン博士、研究してたんだ。


 こうなったら、ずっと語られるくらいの派手な演出を考えようか。お祭りだもの、悪ふざけは本気でやらなきゃ、ね。


お読みいただきありがとうございます。

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今後も頑張りますので、宜しくお願いします。

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― 新着の感想 ―
おー、遂に飛行魔法かー コミカライズの表紙が微妙にそんな感じの絵なんだよね。 お父様から貰った箒に腰掛けて、お母様から貰った箒を左手に持って高く掲げて、斜め上を見てる構図なんだよねー てっきり学院入学…
[気になる点] 言葉を繰り返すというのは吃音症という神経障害の症状の一つというのはご存知でしょうか? 読みづらさもあり、毎回そこで物語から冷めてしまいます。 キャラ付けとのことですが、設定より幼く感じ…
[気になる点] 同じ単語を繰り返すのはなんなんですか? 誤字脱字では無さそうですが口癖の演出ですか?それにしてはその口癖の人が多いですよね。めっちゃ読み辛い。
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