chapter 05 理想の覚悟
四小隊唯一の軟派男、草薙勝人は待機室が併設された掩体の二階、開けた広間の自販機コーナーで屯っては時間の消化を行う。一言でいうなら暇潰し。言い換えればサボりである。
長椅子に腰掛け、流行りの清涼飲料水で喉を潤す。嫌味のない爽快な甘味が喉を過ぎた。左手首に巻かれたウェアラブル端末を起動させ、ホログラフィックを空間に出現させる。
手際のよいフリック操作で整列したアプリから流行りのSNSを開き、一昨日ナンパした女の子からの連絡を確認する。
「返信無し………というか既読も無し。いやぁ、世間は世知辛いねぇ~」と態とらしい独り言を呟く。
楽しみが一つ減り退屈だけが残った。退屈な時間も流し込めれば楽なのになと考えて、空になった缶をゴミ箱へ放る。
出動のない平時の時は、毎度時間を消化する事しかやることがない。と言えば誤解を生むが、訓練や演習といった恒常業務はある。しかし、毎日行うわけではない。実機を使った訓練は週二回程度、技術が発達した現代ではシミュレーター筐体で十二分に訓練が行えた。実機を酷使することで発生する整備の増加は戦力低下を招く恐れと、機体寿命を縮めるという理由で実機訓練は年間の回数が規定されている。といっても、大戦以降は予算と開発が拡充されているわけだから酷使しても変わらないだろうと草薙は考える。
所詮、戦人も兵器といえど消耗品。使い潰す事が前提なのだから、後生大事に抱える必要はあるのかと考える。
ただ、この組織は組織改革なんて言葉を毛嫌う体質であり、同時に世間体を考慮した対外的なイメージを損なわないため、旧自衛隊時代の質素倹約な風土を遵守している節は感じられる。
組織としては最善だが実働隊の一翼たる操縦士からしたら、練度が下がりかねない最悪な状況でもある。
「ったく、南雲の奴とは違うってのに、どうしたもんかな俺も」
天井に振り上げた腕、そしてそこから伸びた先にある手。その手を緩慢に握って再び緩慢に広げる。無意味な動作と分かりつつも、草薙は訳もなく手の開閉をしていた。
握った手の温もりからフラッシュバックする実機を触った記憶。操縦桿を握った感触。指先の触覚が無機質なプラスチックの冷たさを想起し、機械と神経共有を図った自身の感覚すら引き起こされ、そして引き金を引いた数々の現場を芋づる式に思い出していく。
シミュレーターでは得られない生の質感。仮想ではない現実の現場。指先や肌で感じる現場の息吹はシミュレーター筐体では得られる筈もない。多岐に渡る地形と環境、射撃や格闘を初めとする戦闘技法、そして追い詰めた罪人共の顔。
嫌な記憶だ。出来ることなら忘れ去りたいが、生憎『シティ・ガーディアン』には就労に伴う記憶の編集等の厚生手当はない。外部メモリに記憶を格納して自分の頭からは、仕事の記憶を洗いざらい消し去ることなど許されないのだ。違法性もなく況してやストレスケアの一環として大手企業では推奨されているにも関わらず、『シティ・ガーディアン』は採用していない。
「戒めのためか……」
握った手を開いて独り呟く。治安を維持し国民の恒久的繁栄の一翼を担う、しかしそれは引き金を引くことで得られる幸福なのだと隊員へ戒めるために、就労記憶を抜き去らないのかとも邪推してしまう。
「嫌だね~、独りでいるといつも余計なことを考えちまう」
手を下ろし、いつになく弱気な表情をする。操縦桿を握って早くも5年が経つ。戦人に乗る自分に飽きが来たか、それとも引き金を引くことでしか守護神の名を冠する組織に嫌気が差したのか。
濁った気分を胃へ押し込むように草薙は、清涼飲料水を飲み干す。口元から垂れた液を拭い、気ままに流れゆく退屈を吟味する。
「はぁ、事件とか起きねぇ………よな」と独り溜息をつく。
「溜息ついて、何してるんですか?」
唐突な声で身体が撥ねる。顔を上げると垢抜けた端麗な顔立ちが、草薙の豆鉄砲食らった顔を見ていた。
覗き込んだ彼女の眼は不純を知らぬ子供のようであった。
「しょ、小隊長! どうしてここに……?」
開口一番の一際デカい声で驚く草薙を前に、小隊長こと都留桜花は見た目とは裏腹な彼の姿に、自然と笑顔を溢す。
「ははっ、草薙さんは以外とビビりさんなんですね!」
「しょ、小隊長……、笑わないで下さいよ~」
「ごめんなさい、剰りにも可笑しかったので……つい」
「それより、小隊長はどうしてここに? もしかしてサボりだったりします?」
まさかと誤魔化す笑顔をしていたが、後ろに隠す物体が財布だと認める。どうやら小隊長もサボりに来たのだと草薙は察した。
「しかし、今時財布なんて珍しいですね」
「あっ、やっぱり? キャッシュレスは死語か……、クラウドマネーが世間一般なのに財布を使ってる人なんて絶滅危惧種だよね」
財布から一枚のカードを出す。それが電子マネーを使用するための端末だと理解した。
「げぇ、電子マネー! 骨董品どころか博物館行きの代物ですよ~」
「お爺ちゃんから貰った物なんだけど、以外と耐久性高いし、今でも使えるから便利なんだよ」
物珍しく見る草薙は電子マネーで缶ジュースを購入する都留を眺める。ふと自分の右手を擦る。
「電子マネーを使用してるところを見ると、失礼ですが小隊長は右手にチップを入れてないのですか?」
キョトンとした顔で彼を見る。少しの間を置いて言葉の意味を解し、都留は白い歯を見せて質問を否定した。
「そんな訳ないでしょ。日本でと言うより真面な国で暮らすには右手にナノチップを埋め込むのが常識。草薙さんも知ってるよね? それにちゃんと左手にだって就労情報管理用のナノチップが入ってるんだから」と、彼女は鼻を高くして説明した。
「普通はそうですよね」と草薙は相槌を打つ。
先進国が国民を一括管理のため、身体へナノチップの挿入を義務付けたのは、いつ頃だったか。日本にチップが導入されたのは戦前の頃だと教わったなと草薙は思い出す。
チップは利便性に長けていた。有機カプセルに封入された一ミリ四方のそれには、国民一人一人の戸籍から学歴、職歴、罪歴等々あらゆる情報を保存して一元管理している。簡単に言うなら身分証明の役割を果たし、チップが挿入されていない者は社会で国民どころか人と認識されない。そうなれば公務員どころか日本国籍なんて取得できない。質の悪い冗談を言われているようなものだ。
「入ってなかったら、私不法滞在者として逮捕されてますよ」
「ははっ、ですよね~」
適当な笑いと相槌で誤魔化す。デリカシーの無いことをしたなと草薙は少々バツの悪い気分に飲まれる。
軟派な彼は女の子への対応は人一倍敏感だった。傷つけないのは勿論のこと、悲しませることも怒らせることもしない、それが女遊びに長けた彼の最大限の敬意である。しかし不意に出た言葉、身から出た錆とでもいうべきか、後悔の念に苛む。
(全く俺としたことが、失礼なことを聞いちゃったな……)
唯一の救いは都留本人が気に止めなかった点だろう。彼女の器の広さに救われ、草薙は胸をなで下ろす。そして気取られぬよう一瞥する行動を何回か繰り返し、彼は都留の可憐を再確認する。
(しっかし、こんな可愛い子ちゃんが幼馴染みだなんて南雲の野郎も、隅に置けねぇな。俺だったら直ぐ口説くのによ)などと軽口を考えつつも、都留の眩しさに目を逸らす。
四小隊きっての軟派男は、久方振りの昂りを吟味した。男の性に任せ口説き落としたいが様子を見る。女を落とす武具たる言葉を選ぶ。先程は失敗したが同じ轍は踏まない。人は印象に左右されるのだから、話題の振りようによっては生理的に無理などという最悪な結末も有り得る。
(趣味、好物、休日の過ごし方、さてどれから切り出すべきか。いや、いっその事、食事にでも誘ってみるか)などと一人浮かれる。
浮ついて算段を講じる草薙を前に、都留は不審がることもせず粗雑な話し口調で話題を振る。
「そういえば、私が着任してから一週間経ちますけど、出動要請掛からないですよね」
「えっ? あ、あぁ! 出動要請……?、出動要請ね」
稲妻にでも打たれたかのように草薙は撥ねた。上擦る彼の声は取り繕うとして言葉遣いも上擦ってしまう。それが面白かったせいか都留は微笑む。
「どうしたんですか? ボーとして?」
「いや、ほら、小隊長殿が剰りにもお綺麗でしたので、つい見取れてしまいまして!」
「フフッ、お上手なんですから。草薙さんってば面白いことをいうですね」
微笑む彼女を見て、掴みは良しだと草薙は心中でガッツポーズを取る。ペースの主導権は握っている、このまま食事の誘いにでもと考えたが、草薙は先程の質問への返答が未だだったことを思い出す。
「それにしても出動要請なんかが気になるなんて、珍しいですね」
「いや、そこまで気になるわけではないんですけど、……ただ」
「ただ?」とオウム返しに答える。
さっきの微笑みとは対照的に、彼女の表情は何かを思い詰めて曇る。女性には相応しくない表情だと草薙は感じとる。その表情の理由に関心をもち、思い切って彼は聞いた。いつも通りの口説くための武器たる晴れた笑顔を携えて。
「何か悩み事ですか? でしたら俺、微力ながら何でも聞きますよ!」
「草薙君は優しいんだね」
歯を見せた彼の顔に、思い出の中の南雲を重ねる。違う人間であることは理解しているが、重なった瞬間には何故だか口を開いていた。心に蟠ったもの全てを吐き出していた。
「私達って……人と都市を守るんですよね?」
「そりゃあ、そうですね。それが俺達の仕事といいますか、まぁ早い話が任務とか義務ですからね」
「だったら…」と口を開く。
そして呟く「人の命を奪ったとしても?」
空気が張った。今にも千切れそうな琴線のような、息を呑むと表現するが正しいとさえ思える緊張感が一瞬ではあったが流れた。
静寂の中で草薙は気まずい空気を呑むと、いつもの立ち振る舞いで口を開く。
「あぁ……誰から聞きましたそれ?」と問い質すと、都留は「南雲巡査部長から聞いたんです」と話す。
あの馬鹿野郎と頭を掻く。同期で入隊し教育課程から今日に至るまで南雲とは腐れ縁に当たる。それ故、草薙は彼のことを理解していた。昔から自信家であり異様に志も高く、操縦桿を握る才能も高かった。
それがいつ頃か、いや、あの一件以来だったか一周過ぎて別人みたいに成っちまったなと草薙は思い出す。
「南雲巡査部長とは幼馴染みで、昔の彼はもっと明るくて、あんな感じじゃ……。少なくとも、殺せるなんて言える人じゃないんです」
「入隊した時からここまで一緒でしたけど、そいつは俺にも分からないです。人の気持ちなんて明日には180度様変わりしてるもんですから……」
それらしいことを呟いて嘘をつく。あの一件以来、南雲は良くも悪くも手を抜かなくなった。手を抜くというのは手加減をしなくなったと言うことだ。機械的に淡々と熟し精度を高め、本物の機械と違わないほどに正確無比に遂行していった。情状酌量という甘い言葉もなく冷淡に引き金を引く。
何故かは分かる。しかし、それを今の草薙の口から彼女へ伝えることはしなかった。伝えたところで容易に呑み込める内容でもなければ、一目で見抜いた都留の性格からして食い下がることは、想像に難くない。
「まぁ、そのうち自分から話してくれるんじゃないですか?」と適当なことで場を繕う。
都留は納得の顔をしてなかった。だが、今は納得して貰うしかない。でなければ後々に支障が出てしまう。
重く淀んだ空気を入れ替えようと話題を切り換える。最近の流行りか、音楽の話か、何にせよ草薙が楽しげな話題を振ろうとするも、堅い表情の都留が遮る。
「もう一つ聞きたいことが有ります」
「何でしょう?」
「本当に人を殺すんですか?」
南雲の言葉が見せた現実に、彼女は困惑していた。引き金を引く訓練は受けた。戦人の操縦訓練も受けた。当然のことながら暴徒鎮圧やテロゲリラへの対処訓練も行った。訓練用のドロイド相手に引き金は引けたが、実際にとなると話は違ってくる。
都留は正義感に溢れて曲がったことが嫌いな頑固さも兼ね備えていた。それが幸いして疑問を懐いたのだ。
多くの人に治安維持という最大限の幸福を与えるなら、人殺しも許されるのか。そこに都留は疑問符を付けたのだ。
「都市の治安を守るために、人を撃つなんて可笑しいと思いませんか?」
「小隊長殿、人ではなく模倣品です。イミテロイド、奴らは人間ではない」
「でも、人の形をしているんですよね?」
「いやまぁ、そりゃあそうですけど……」と口を濁らせる。
人の形を得たものが人間。いや違うだろと草薙は一蹴する。人の形を得てるならアンドロイドも含め、言うなれば全てが機械で構成された戦人も人間だ。しかし、それは違うと判断できる。
深い溜息をついて頭を掻き毟る。難しいことを考えるのは苦手だ。草薙は柄でもないと踏ん切り、社会へ出た新人に先輩としてある程度の知恵を与える。
「はぁ~。こういうの本当、俺らしくないんだけどなぁ。先ず始めに撃つのは人間ではなくイミテロイドです。で、それを捕獲及び抹消を任務としているのが、我々というのは理解してますね?」
「それは理解してるわ」
「なら良いじゃないですか。何を迷う必要があるんです?」
「迷う必要って……普通は迷うものじゃないんですか? イミテロイドと人間って別けてますけど、姿形は人間そのままなんですよね?」
草薙は無言で頷く。
「だったら!」と声を荒げた彼女を制止して、目の前で余裕に振る舞う草薙は口を開く。
「労働従事者、レイバー、奉仕者と呼び名は様々。遺伝子操作で人間より優れた肉体と頭脳を持つ有機人造素体、それがイミテロイド」
「でも人間と同じ似姿なら人間じゃないの」と疑問符を含ませた口調で話すも、草薙は首を横に振った。
日本の司法は六法に加えて『人造人間法』という製造から取扱い、犯罪行為への対応等が記された法律が存在する。
人間と人造人間には似て非なるもの。法律によって権利を保護され自然に生育されたものが人間だと草薙は、飄々と軽口を叩くように語った。
方やイミテロイドは人口減少に伴う労働力低下を補うため、人為的に製造された有機人造素体である。
「だから、法律上イミテロイドは人間ではないんですよ。俺達と同じように言語を話し理解し考えもしますけどね」
「でも、やっぱりそんなの可笑しいですよ。都市の平和のために人を撃つなんて………私には!」
「出来ない………なんて言わないで下さいよ」
都留の本音を草薙は先回りして潰す。
出来ないとはいえない、それは当然のことだ。命令違反、服務違反、それもあるが一番に言えることは自分の存在否定に繋がるからだ。撃てないなら、出来ないなら、何故『シティ・ガーディアン』へ来た。予めのレクチャーを履修は受けている。人の営みを守るとは、そう言う事だ。
「でも、それでも、私は……」
項垂れる彼女の肩にポンと手を置く。
「まぁ大丈夫っすよ。引き金を引くのは俺と南雲ですから。小隊長殿は後方で指示を飛ばして頂くだけで万事オッケーですから」
「後方で見てるだけって……」
笑顔から覗く冷気が都留を舐める。血の通った人間とは思えない冷たさ。情が感じられない笑っていない目だ。
「小隊長殿、貴女は希望と夢一杯で来たかも知れないですけど、そいつは早いとこ捨てちまった方が良いですよ」
「捨てた方が良いって……、でも草薙さんだって最初はそうだったんじゃ」
「だからですよ。とっとと捨てて割り切った方が楽になれます」
仮面を思わす貼り付いた笑顔は草薙が出来る最大限の優しさであった。
南雲と同様、現場を幾重にも潜ってきた。だからこそ彼女の言い分も理解を示せる。しかし、その割り切れない考えが悲劇を生むことも周知している。だから今は深く考えさせず盲目的に従ってくれと言葉巧みに誘導するしか出来ない。
「まぁ、そんなに深く考えずに俺達を使って下さるだけで結構ですから………ね?」
「で、でも………」
やはり納得はしていない。予想はしていたが南雲以上に頑固な娘と見定める。草薙も器用人間ではない。そして納得するまで付き合う程、人情深くもない。
都留の頑な意思に諦観し、草薙は背を向けた。
「あの……まだ、話は……!」
「ちょっと急用思い出したんでね、今日はこの辺で」
彼は去り際に立ち止まり、一瞬き程の時間を空費しては背けた背中で言葉を捨てる。
「一つだけ忠告しときますけど、その甘さは早く捨てた方がいいですよ」
最後の一文に静かな力を込め、「それでは」と捨て台詞を残して階段を降りていく。
足音が遠くなり静寂が都留を包む。彼の去った後は小空間の休憩スペースですら酷く広大に感じた。ガランとし、換気窓から射す夕日が虚無感に強調を与えた。
一人項垂れ拳を締める。
都市の守護神は、端から見れば正義のヒーローと違わぬ姿を魅せる。だが、現実は人の安寧のためにイミテロイドと呼ばれる人の模倣品たる人造人間を処理する組織。
理想と懸け離れた現実。その差異、ギャップという荒波に都留は呑まれる。
何故、システムは私をココに導いた。虚しいだけの自問自答を繰り返す。推奨したのはオラクルと呼ばれるシステムそのものだ。しかし、最終意思の決定は自らの手である。
私の想像は甘かったのか。それとも自分で勝手な理想を思い描いてただけか。恐らくはその両方であり、まだ加算されるべき要素はあるのだろう。だが進む切っ掛けを与えたのはシステム……、いや違う。違うと都留は強く否定した。
粉塵の中、自らを盾にして守ってくれた存在を脳裏に閃かす。今でも鮮明に思い出せる目に焼き付いた光景。あの時見た巨人の背中、英雄的に映えるその背中に、少女だった頃の都留は憧れた。
だから今ここにいる。システムの導きではない、自分の意思で『シティ・ガーディアン』として生き始めた。
「でも、私は………」
引けるのか引き金を。その覚悟を有せるのか疑問であった。そっと右手を見る。柔肌に包まれた豆も少ない綺麗な手だ。無垢な手、経験を知らない赤子のような手。その手を何度か開いては閉じて開く。
「私は………!」
失望なんてするものか。そう固く誓って刻むかの如く私を連呼する。
引き金を引くかもしれない。だが別のやり方、撃たずとも殺さずとも逮捕で彼等に法を執行できるはずだと念じ込む。
項垂れた頭は真っ直ぐと前を向く。覚悟が決まったか、その顔立ちは凛として眼に力を添える。
いつか夢見た背中になる。都市の守護神になってやると気概を持って彼女は叫ぶ。
「見てなさいよ! 私は私のやり方でこの都市を守ってみせるから!」