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残響世界の聖剣譚 -VRMMOで鍛えた魂で侵食されるこの世界を守ります-  作者: 気力♪
第三戦 VSアルフレシャ 自称王女と螺旋の槍
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高砂姉妹

「すまんなぁ、なんだかんだ30分近くも仲裁させてしもうて」

「……美緒さん、途中から楽しんで煽ってましたよね?」

「知らんよー」


 ここは、高砂姉妹の家。京都においてそこそこの茶の名家らしいと教えられたが、その家の大きさは普通くらいだ。

 和室が少し多いというのが違いだろうか? と琢磨は思う。


 聞けば、「最近リフォームしたんよー」と教えてくれた。


 琢磨の目の前にいるのが高砂美緒。長い黒髪にいたずらっぽい笑顔の似合う顔をもつ女子高生だ。その容姿はとても整っており、成長すれば多くの男を侍らせるような女性になりそうだと琢磨は思う。


「それで、俺は帰っていいですか?」

「帰るって、どこに?」

「そりゃ……」

「ホテルに泊まるくらいなら、ウチでもええんとちゃう? 風見君」

「まぁ、確かに盗られて困るものはそんなにありませんけども」

「決まりやな。お姉に伝えてくるわぁ」


「お姉、風見君泊まるってー」

「あら、それではお夜食の準備などは必要でしょうか?」

「……受け入れすぎじゃないか?」

『マスターは家出少年ですし、優しい方ならこのようにするのでは?』

「いやしないから。普通に警察に突き出すのが立派な大人だよ」


 そうして、姉妹のペースに巻き込まれながら琢磨はなんとか自分の危険性を訴える。

 自分は巷で噂の異界殺人鬼であり、見ず知らずの他人なのだと。


「知りませんわそんなこと! 私と美緒があなたを信じると決めたのです! それを否定するのは私たちへの侮辱ですわ!」


 その輝きに満ちた笑顔が琢磨には眩しくて仕方ない。

 この、高砂瀬奈という女性はこういう”自らの輝きで皆を照らす者”なのだろう。


 そのことが、ひどく煩わしく羨ましい。


 こんなヒトらしく在れたなら、自分も何か違ったのだろうか? と、琢磨は思った。


 ■□■


 夜食を断り荷物にある断熱フィルムを纏い眠りにつく琢磨。

 その姿は、まるで借りてきた猫のように大人しかった。


「お姉、私風見君を……」

「みなまで言わずともわかりますわ。彼、変な子ですけど悪い子ではないですものね」


 その姿に安堵したのは高砂姉妹だ。

 14で家を出て各地を転々としている。それが今の琢磨だ。それも多くの人に傷つけられたのが原因でだ。


 普通なら警戒心で眠ることなどできないだろう。突然招き入れられた他人の家なのだから。しかしすぐに眠りについてしまっている。よほど疲れがたまっていたかのように。


 そのことは健康管理AIのメディからも言われている。「ありがとうございます」と。


「それでお姉、本当に警察に連絡せーへんでええの?」

「もうしました、けれどあの少年の失踪届は出ていないと」

「……ほんまに?」

「ええ。警察の方が風見君の保証人になっているうえに、位置情報、健康情報などの提出はきちんとされているので問題はないそうですわ」

「……なんか、首輪付けられている犬みたいやな」

「ですから、私たちにできることは屋根を貸し、安らぎを与えることくらいでしょう。それ以上のことは折を見ておじい様に相談してみますわ」

「なんか警察のお偉いさんやったんだっけ?」

「そのように聞いていますわ」

「なら、大丈夫かなぁ?」


 そうして、姉妹が相談事を終えて眠りにつき、いつもと違う朝を迎える。


 翌朝、いつものように美緒が朝食の支度をしようとするとすでに琢磨は起きていた。目はきちんと覚めており、眠気などは感じられない。


「……おはようございます、美緒さん」

『おはようございます美緒様。朝食のセットは時間通りに。一人増えて材料が足りない分はマスターが買い足しておきました』

「え、外出て買ってきてくれたん?」

『たまにはインスタント以外の料理を食べるべきだと進言したのです。こちらの都合ですよ』

「それに、泊めてくれた恩があります」

「……ええ子やなぁ、琢磨くんは」

「撫でようとしないでください」

「いけずぅ」


 そうして、部屋の様子を改めて見る。朝のもろもろの準備は本当にこの少年がやってくれたようだ。

 以外に家庭的? と美緒は思うが、メディが指示をだしてそれに従っただけだろう。


 そんなことを思うと、自身が未だパジャマであることを思い出す。


 そして、男性経験のない身でありながらちょっとからかってやろうといういたずらごころ同じく湧いてきた。


 ので、タクマの正面に美緒は座った。

 わざとボタンを少し外し、下着が見えるようにした状態でだ。


 過激かな? と美緒は思ったが、それに対して琢磨は何の反応もない。

 注視することも、ドギマギと目をそらすこともしないのだ。


 これでは自分に魅力がないようではないか。と美緒は思い、もう少し大胆に胸を強調していく。

 美緒の胸は普通サイズはあるので、これでちょっとはいたずらになるだろうとの思いだ。


 しかし、琢磨は動じない。それどころか「この部屋、少し暑いですかね?」と室温を気にしている様子だ。


 つまり、それは、見て、そのうえで興味がないという事だった。


 それが、美緒の乙女心(暴走エンジン)に火を付けた。


「なぁ琢磨くん」

「なんですか?」

「君、男色家なん?」

「失礼すぎやしないかこの人」

『マスターはきちんと女性に性的興奮をする人種です。安心してください』

「メディ、お前も乗るのか」

「なら、ウチのおっぱい見た責任取らんとあかんよね?」

「見せつけてきたのはそっちだと思うんですけど、確かに不躾でした。謝ります」

「なら、なんかいう事あるんちゃう?」

「そうですね……」


「夏が近いとはいえ、まだ冷えます。体調に違和感はありませんんか?」

「天然かいな。心配してくれるのはウチ的にはうれしいけど、なぁ」

『すみません、マスターがこんなので』

「ええよ、ある意味信用できたし」


 そういって自室に戻り部屋着に着替える美緒、そのついでに瀬奈を起こしてきたようで、奥の和室からはなにやら騒がしい音が聞こえ始めてきた。


「そんじゃ、琢磨くんの作ってくれたご飯を食べようなぁ。楽しみだわぁ」

「作ったのは自動調理器(クッカー)ですよ」

『申し訳ありません、マスターのノリが悪く』

「お前は悪乗りしすぎだよ。ちょっとは落ち着けメディ」

『……そうですね、失礼いたしました』


 そうこう言っていると、すっと現れたのは先日彫刻家の男性に対して狼藉を働いた人物とは思えないほどおしとやかに見える金色に染めた髪の女性がいた。しかしその雰囲気とは別に活発そうなその笑顔は、自分は元気いっぱいだと言わんばかりだった。


「おはようございますわ! 美緒、風見くん! 朝食にいたしましょう!」

「「朝から声が大きいです/わぁ」」

「……息ぴったり!? まさかそういう事ですの美緒! 茨の道ですわよ今の彼と共に行くのは!」

『失礼ですが、瀬奈様の暴走はどうやったら止まるのでしょうか?』

「止まらへんよーこういうお姉は」

「いや二人とも失礼が過ぎるだろ」

「あ、でもウチのこと可愛いって言ってくれたら変わるかも?」

「言うまでもなく可愛くて綺麗な方じゃないですか。家族思いで優しくて……」

「そうですの! 美緒は可愛いんですのよ!」


 そうして妹のエピソードを多く語りだした瀬奈に対して、真剣に相槌を打つ琢磨。


「いややわぁ」と言いつつも後が面白そうだからと黙っている美緒。


 それからほどなくして、日曜朝の朝食は始まった。

 古き良き日本食。ご飯に味噌汁におひたしに納豆だ。


 そんな朝食が、高砂姉妹と琢磨の生活の始まりだった。



 ■□■


 彼を好きになったのは、もしかしたら一目ぼれだったのかもしれない。


 別に姉のように鮮烈に助けてくれたとかそういう理由があるわけではない。


 ただ、その上っ面に思えた優しさ思いのほか厚かったことが信用したいと思ったきっかけで。


「俺は、人殺しです。そんな迷惑をかけるわけにはいきません」という彼の懺悔めいた声に秘められた迷いに絆されて。


 そして、そんな彼の日常の普通の素敵さに、私は恋をした。


 私、高砂美緒は風見琢磨くんが好きになった。そんな朝だったと、振り返ってみれば思うのだった。

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