魂の洗濯場
「はぁ?」
《私》は思わず口を半開きにして自称御使いの彼女を見た。
「えっとですね~。ああ、これこれ」
ゴソゴソと何かを取り出した。
大きな本で表紙には[~初心者向け~これであなたも神様になる!]
「いや、まてまて!何で私が神様?になるって前提で話進めているの?それに此処は何処なの?」
やっと聞きたいことを言えた。
彼女は怪訝な顔をすると少し考え、何か閃いた顔をした。
「あぁ、そうだったそうだった!いつもの人達なら転生や転移とか勝手に解釈してくれていたのでスルーしてました!」
あぶないあぶないと呟き、彼女は水晶を出して映像を見せてきた。
「まず、あなたには神様になってもらう理由はあなたの前任者が仕事を放っておいて何処かに行ってしまいました!」
水晶に映し出されたのは地球とは別の星
「前任者さんはですねぇ。置き手紙を一つだけおいて旅に出たみたいです。」
彼女はピラッと紙を見せてきた。
そこには
[後は任せた!ちょっと飽きたから旅に出るね♪]
と書かれている。
「此方もですね。困っているのですよ!何より前例がありませんからね~」
上も上なら下も下である。
「気づくのがちょっと百年遅かっただけですよ!」
百年も気づかないのも大概だがよく気がついたな。
「気がついたら任せていた星が衰退の一途を辿っているし、定期連絡はサボってる他の神様もいますからねぇ」
片手を顔に当ててやれやれと呟いている。
「そこで!この魂の洗濯場で漂白されてたあなたを見つけました!」
ズビッと《私》に指を指した。
「この魂の洗濯場では死んで魂が汚れ傷ついているのを治して次の転生に向けての準備場所です!」
回りは何もないんだが?
「普通は魂なんて見えませんよ~。私みたいなお役目がある者しか見えませんからねぇ」
「どうして私も他の人と同じ転生じゃないの?」
「実はですね。普通に洗っていたんですが、何故かあなたの魂の傷が治らず、ずっと漂白してたんですけどね。これ以上漂白してたら魂が消滅してしまうな~どうしようかなーっというところであなたに神様の資格が現れました。」
「えっ…」
それでは《私》は消滅か神様になるかしか道がない?
「途中までは上手く洗えていたんですよ!あなたのプロフィールや友人関係その他あなただった事を今言えますか?」
「私の名前は…。あれ?と、友達は。仕事…は?」
頭がボーッとしているからか思い出せない。常識以外スッポリ抜けているみたいだ。
「ホラね!ま、そーゆーことで神様になってくださいね!」
説明をするのが面倒になったのか次の話をしたいからなのかわからないがうやむやにされた。
色々聞きたいが、話が進まないので黙って聞くことにする。