ろくでもない神の御使い
《私》は搾取される側だった。
産まれてから死ぬ今日まで害ある者にいいようにされてきた。
幼少期の心の傷は癒されることはなく人間不振な上にうつ病を拗らし、ふと目についた廃ビルの方へフラフラと歩いて行ったのは何故かわからない。
疲れた。もう死にたい。ただ終わりにしたかっただけだと思う。
気づいたら廃ビルの屋上にいた。
いざ柵を越えようと思うけど怖くて手が震える。
そっと、柵に掴まって下を見る。夜だから当たり前だけど底は暗くて見えない。闇が口を開けて待っているみたいだ。
うん。怖い。今日はやめよう。
何度目かの自殺をやめて家に帰ろうと思った瞬間
バキッ!
「…えッ?」
突如浮遊感を感じる。
老朽化や錆もあるだろう気づいたら柵ごと一緒に落ちていた。
こうして《私》は確かに死んだ。死んだはずなんだ。
気がつくと《私》は真っ白くて何もない場所に倒れていた。
起き上がり辺りを見渡すとさっきまでいた廃ビルの近くではなく、病院でも無さそうだな。
頭がボーッとする。ふと後ろに気配を感じ後ろを振り向くと一人の女性がいた。
彼女はなにやら大きな本を抱えてわたわたとあわただしくしている。
《私》の視線に気がついたのかそれまであわただしかった彼女は《私》に声をかけた。
「やっほー!元気にしてる?なーんかやつれてるわねぇ」
ケラケラ笑いながらの第一声がこれである。ろくでもない気配がするな。
「まぁ、自殺じゃあなくてよかったじゃない?自殺だったらさ。ホラ、ペナルティとか色々あってこっちも手続き面倒だったしさ!」
1回地獄に落とさなくてはいけなくなるし!
ボソッと呟いた事は聞かなかった事にしよう。
「あぁ、私は創造神の御使いよ。」
テンション高いなー。死んだばっかりな人に対することじゃねぇな。
「では早速ですがあなたには神様になってもらいます!」
やっぱりろくでもなかった。