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自称、巻き込まれ体質の事件譚  作者: 松本真希
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魔女の魔法

「この地には昔、ある女性がいた。彼女の名前は今には伝わっていなくて、分からない。


多くの人が、上手く魔法を使うことのできない中で、彼女は多くの魔法を使うことができたという。


彼女は、魔法が上手く使えない人にでも使えるようにと、詠唱を作り出した。


いつしか彼女は魔女と呼ばれるようになっていた。そんな魔女には愛する人がいた。


いつしか二人は、結ばれて、近所でも有名なほどに仲が良かったそうだ。


そんな二人は些細なことで諍いになって、一緒に町に行くという約束を破って、魔女は彼と町に行かなかった。


彼は、仕方なしに一人で出掛けていって、山道で、馬が足を滑らせて、馬もろとも谷底に落ちっていった。


魔女が慌てて駆けつけたつけた時には、彼は息を引き取った後だった。


魔女が一緒に行っていれば、彼が死ぬことは、なかったかも知れない。


彼が亡くなった時、魔女は心に決めた。彼を必ず生き返らせることを。それまでは死ぬことができないと。


そこで、魔女は自分に永遠の命の魔法をかけた。


どうやって、その魔法を成功させたのか、全く分かっていない。けれど魔法は成功した。


私は、絶対に彼を生き返らせるという強い思いと、必ず魔法が成功するという自信が、この魔法を成功させる鍵だと思うだけれどね。


火とか水とかの魔法は具体的だから想像しやすいけど、これは、ひどくぼんやりとしたものだから、やはり、魔女しかできない魔法なんだろうね。


未知の魔法を成功させる自信なんて私には無いよ。


それでだ、永遠の命を手に入れた魔女は、人里離れたところで生き返らせる魔法を一人で探し始めた。


それから、何年経ったのか。魔女を知る人が誰もいなくなって、魔女の存在自体が伝承となった頃、彼女は気付いてしまった。


死んだ人は二度ともどらないこと。


人の体を成したものを作れたとしても、そこには、決定的になにかが足りない。


魔女は絶望して、自ら命を絶った。最後に魔女はこんな言葉を残している。


『私たちは今を生きる者だ。過去は、私たちの中に捕らわれ逃げ出すことはできない。時間は絶対的に真であり、それを曲げるのは絶対的に偽である。』


魔女は、時間の中に留まり続ける自分は間違っているし、時間を戻して、生き返らせることもできないと思ったのだろう。


では、永遠の命の魔法をかけた自分自身を殺すことができたのは、魔法が思いだからだ。


命を永らえるなら、それを思い続けなければいけない。それは、魔法というか、もう呪いだ。


これが、永遠の魔法が今に伝わっていないし、誰も成功してこなかった理由だよ。」


「なぜ、そんなに詳しいことが分かるのですか。かなり昔の人なのでしょ。」


俺は、まるで、見てきたかのようなジーク先生の口調が気になる。


「彼女の日記だよ。今でも、強力な状態保持の魔法がかけられていて、傷さえつかない綺麗なものだと聞いたことがある。


その日記は、ある男がどこかの森で、見つけたものらしい。


魔女の住んでいた所が分かるかも知れないと、調査隊が派遣されたらしいのだが、二度とその場所にたどり着けなかったそうだ。


失った魔法を再現する鍵があるはずだって言って、みんなが、血眼になって探しているのさ。


この国でも、魔女の住処だった所を見つけたものにはかなりの報奨金が出るはずだよ。」


権力を手にした王が次に望むのは、どこの世界でも永遠の命なのか。


全員、始皇帝と同じなんだな。辰砂とか飲んでいたりするのか。


俺なんて、一日、二十四時間でさえ、ゲームがないこの世界では、時間を持て余して暇だというのに。


そんな長い命を得て何になるのだろうか。時間を潰す方法が寝るしかないじゃないか。



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