それから これから
百合っていうレベルじゃねぇぞ!
レズ成分が微粒子レベルで存在してます
ここから先は一方通行になりますので、苦手な方は そげぶ してください
私たちの体は元に戻った。
遥とはそれからいっぱい話し合って。
……それで。
「香奈多ー、朝だよ」
……。
……。
昨日はたしか……。
「香奈多、起きた?」
遥にちゃんと、私の声で、好きって言って……。
それから?
「……おはよう」
「おはよう、香奈多! 嫁が朝の準備を終えるまで寝ているとは、いい御身分ですな。ご飯できてるから早く食べて学校行こう」
嫁じゃ、……無くはない。
「……何で遥がうちにいるの?」
「むしろ何で、香奈多は私のベッドでグースカ寝てるのかが聞きたいですな」
……。
昨日、家に帰ってない?
「ご飯冷めちゃうから早く食べて。……とりあえず着替えて。……脱ぐ服ないけど」
どおりで、肌寒いと思った。
……。
……。
「制服はそこね。皺にならないようにちゃんとたたんであるから褒めて。……脱がしたのは私だけど」
――――何があった!
……記憶は、無くは、……ない。
「ぷぷっ、早くね、カナカナー♪」
……。
…………ふあ!
遥の家のリビングへ行くと、妹ちゃんがご飯を食べてた。
「…………」
……すんごい目で睨んでくる。
「……へんたい」
……。
心あたりが多すぎる。
「……彼方ちゃん、おはよう」
「わたしの名前をよばないでください。……きのう、いっしょうぶん、よばれてましたので。お二人はつかれてないんですか? わたしががっこう行くまで、ねてたらよかったのに」
……本当、ごめん。
「大丈夫! これからは香奈多のこと、カナカナって呼ぶから」
遥が軽食が乗ったお皿を持って会話に入ってくる。
「昨日の夜、ベッドの上で私のことハルって呼んでたから。これでお揃いだね。それともハルハルって呼ぶ?」
……呼ばない。
「……それじゃあ、わたしは行きますので、お二人はいつまでもいちゃいちゃしててください。いっしょに行くのが、はずかしいから、早く出たいとかではないので」
離れて歩いてよねって奴か。……ただし、照れではなく、呆れのようだけど。
「えー、彼方も一緒に行こうよ。それで三人で、手を繋いで歩こうよ。香奈多と、こんな子供欲しいねって家族計画を話し合いたいんだけど」
「……お姉ちゃんは私のこときらいですか? お姉ちゃんまできらいになりたくないので、わたしは一人で行きますね」
……。
やっぱり嫌われちゃってたか。
……おそらく病室での出来事だと思うけど。あの時、たぶん妹ちゃん少し起きてたよね。……それだけじゃあ無い気がするけど。
「大丈夫、彼方が私を嫌いになるなんてことはないから。今日は一緒に寝よう。三人で」
「いやです。うるさくて、ねむれそうにないですから」
「静かにするから! うるさかったら、口閉じるから。おたがいの唇でふさぎ合う練習するから」
「……やっぱり、……せかいは、こんなにも、みにくい」
妹ちゃんが変なこと言ってる
中二病か?
「遥、そろそろ行かないと。……お皿、片付けるの手伝うよ」
とりあえず、話を切り上げて学校行かないと遅刻してしまう。
家を出ると、私たちは(妹ちゃんは結局、先に行った)自然と手を繋いだ。
もう慣れてしまった自分はいるけど、やっぱりおたがい恥ずかしさはあるようで、少し顔が赤くなってしまう。
それでも、私は答えたから。
離さないって。
学校の教室についた時に、ようやく、ずっと遥と手を繋ぎっぱなしだったことに気づいた。
さすがに学校の中で百合だと思われるのは避けたい。
……最悪、先生に呼び出されるし。
「なになにー? あんたらそんな関係になったのー?」
さっそく、友達が茶化してくる。
「うん!」
止める間もなく遥が肯定してしまったが、ここは悩みどころだ。どこまで話していいのか……、それとも、いつもの冗談だと軽く返せばいいのか。
広まるのは避けたいが、まあ、こいつも友達だ。
ある程度は話しておきたいし、完全に否定するのは私も嫌だ。
「結婚式には呼ぶからね」
そこまでは言ってほしくなかったな。
でも、逆に冗談と取りやすいか。
実際、女の子同士で結婚できるはずがない、子供ができるわけでも無いし。だからこそ、敬遠されているという所もあると思う。
「そうかそうか、なら、お姉さんからの忠告だ。とりあえず学校の中では、そういうのは控えた方が良い。先生に目をつけられるし、……何より……暑苦しい! なんだい! 二人で幸せそうな顔しちゃってさー。私も早く彼氏欲しいよ!!」
授業が終わり下校時間になる。
さすがに二日連続で外泊はできないので、大人しく遥とは別れて帰った。
「……ただいまー?」
自分の家の中に声をかける。
母親はいるはずだ。緊張する。
「おかえりなさい。……ちょっと来なさい」
さすがに呼ばれたか。
「昨日はごめん、連絡しなくて。ちょっと遥の家に行って話をしてた」
「……相手の家の人に迷惑をかけないようにね。恋もいいけど、まだ学生なんだから勉強もちゃんとね」
この気持ちを、ちゃんと恋と言ってくれるのか。
……でも、ごめん。妹ちゃんにすっごい迷惑かけてます。
「今、料理作ってるから」
「そっか、私も手伝うよ」
「手伝いはいいから。作った料理を遥ちゃんの家に、持って行ってもらいたいんだけど」
お詫びの品かな。
遥はよろこぶと思うけど。うちの料理のレシピを覚えられるから。
「あと少しでできるから、とりあえず着替えてらっしゃい」
自分の部屋に戻り、着替える。
この2、3日の出来事が嘘のように、部屋は静まり返っている。
……このベッドで遥と一緒に寝た。
変な意味じゃなく。
会いたいな。
まあ、これから会いに行くし、母親から頼まれたのだ。大手を振って会いに行ける。
「香奈多」
呼ばれた。
会いに行こう。私が好きな人に。
連絡はしてないけど、さっき別れたばかりだから家に帰っているだろ。
遥の家に行く途中で妹ちゃんを見かけた。
「うあー、香奈多さん……」
露骨に嫌な顔をされた。
「こんにちは、彼方ちゃんは、今、帰り?」
「……そうですが」
小学生にしては下校時間が遅いと思うけど。
「どこかに寄ってたの?」
「…………ちょっとゴミをそうじに。香奈多さんみたいなやつです」
なんでそんなに目の敵にするかな。
昔みたいに笑い合いたいんだけど。香奈多おねーちゃんって駆け寄って来てくれたころが懐かしい。
遥の妹だからって理由だけじゃなくて、単純に彼方ちゃんも好きだから、なんとか誤解を解きたいんだけど、迷惑しかかけてないので嫌われるのも仕方ないのか?
「彼方ちゃん、手、つなごっか?」
「ええー。……お姉ちゃんだけではなく、わたしにも手をだすつもりですか」
「違うよ、ただ彼方ちゃんと仲直りしたいだけ」
それでも歩み寄りたい。
ちゃんと話してって、遥に教えられたから。
妹ちゃんがおずおずと手を伸ばしてくる。
じれったくなって、私からその手を握った。少し、手が熱い。……走ってたりしたのかな。
「私はこれから遥の家に行くけど、彼方ちゃんは用事終わったのかな。一緒に帰って大丈夫?」
「……はい、とどこおりなく」
……? なんか難しい言葉を使うようになったな。
それでも、妹ちゃんは私の手を振りほどいて逃げることは無い。
近くで見る妹ちゃんは、やっぱりまだまだ子供に見えた。
「そういえば連絡してないけど、遥って家にいるかな」
「……きょうは買い物の日じゃないので、まっすぐ家にかえってるはずですよ」
まあ、行ってみればわかるよね。
遥の家に着き、妹ちゃんに玄関の鍵を開けてもらう。
「ただいま」
「お邪魔します」
遥の靴はあるようだ。帰ってきてるらしい。
「おかえりー!」
家の奥から遥の声がする。でも、顔を出してはこない。……いいにおいがする。これは、……何か作ってる?
「遥ー。入るよー」
声をかけて中に入る。遥はやはりキッチンに居た。
「香奈多、いいところに! クッキー作ってみたから食べてみて」
あの遥が料理をするなんて。
うちの料理レシピもいくつか母親から教えてもらってたみたいだし、私の胃袋をつかむつもりだろうか。……なんて、緩む頬を誤魔化すために失礼なことを考えた。
「はい、どうぞ♪」
遥が私にクッキーを手渡して、……くれない。そのまま口に入れてくれるつもりだ。恥ずかしいけど、ありがたく頂く。チョコチップが入っているようでおいしい。
「香奈多、ごめんねー。少し座ってて」
遥は家事に忙しいようだ。
母親は働いているし、妹は小学生だから、自分がやるしかないのだろう。
「手伝うよ」
ほっておけないので、私も席を立つ。
「ありがと、それじゃ。……それ、畳んでくれるかな?」
遥が指すのは洗濯物。
……これは。
「お姉ちゃん、……もしかして、……おねしょしちゃいましたか?」
ベッドにかけるシーツが干されているのを、妹ちゃんが遠慮しながら聞いてきた。
「うん、そーなの。二人で寝たらいろいろ漏れちゃうんだよ。……愛とか?」
「言わないでいいから」
赤くなった頬でシーツを取り込む。
シーツを畳んで片付け終えると、まだ遥は働いていた。
忙しい時に邪魔しちゃったかな。
「遥、これうちのお母さんから、料理のおすそ分けだって。ここに置いていくから、二人で食べて、私は帰るから」
「待って香奈多、もう少しで終わるから。……渡したい物があるの」
遥が、私に?
「私の部屋に行ってて、すぐ行くから」
なぜか赤くなってる顔で、遥が言ってくる。
遥の部屋は綺麗に掃除されていた。
……ベッドには新しいシーツは設置済みだし、散らかってもいない。私はクッションを一つ手に取り、それに座り、遥を待つことにする。
しばらくすると遥が小さな箱を持って部屋に入ってくる。
「……お待たせ」
「いや、全然」
遥もクッションを手に取り、私の目の前に向かい合うように座る。
「「………………」」
無言になってしまう。
渡したいものがあるそうだけど、少し緊張してしまう。
……まさかとは思うけど、指輪とかじゃないよね?
もしそうなら、できれば私の方から渡したかった。……って、結婚指輪とかじゃないし、それにまだ高校生だよ、私たち?
「…………これ」
遥が小さな箱を私の方へ渡してくる。
もう一つは遥の方へ。
それは二つあった。
「…………開けて、みても、いい?」
心臓が鳴ってる。
「……うん、おそろいなんだ。……香奈多にもらってほしい」
おそろい。
……いつか、自分も、何か残る物を用意しようと心に決めた。
おたがいにわかる物を。
大事だって、いつでもわかる物を。
入っていたのは、小さな……、卵型のボールのような?
「……ん、なにこれ?」
「おそろいなんだ、これ! 香奈多に使ってほしい。……むしろ私が香奈多に使ってあげるから! 大丈夫、痛くしないから、痛かったら、その時は自分で練習するから! ああ、捨てようとしないで! 買うのすんごい恥ずかしかったんだからー!!」
ふう
………
遥を愛の狩人にすることによって 香奈多の株を上げる作戦は成功しましたね
遥が好きな方は 私と同じ病気ですので 病院行ってください
現実の話はこれでラストになります
次話は誰もが忘れてるゲームに戻り 最終回を迎える予定です