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遥 ばれる

遥の正体がばれるのは二日目にしようとしたけど、エンドレスエイト並に、また同じ感じで進みそうだったので、速攻ばらしました。そのせいで二日目が大幅変更。

「おかえりなさい!」


 妹ちゃんのテンションは変わらないまま、無事に家には着いた。周りからは仲のいい姉妹に見えてるだろうから当然だけど。

 しかし、当事者の私としては、ハートマークが眼球に縫い付けられているような視線をずっと向けられていて気が気じゃなかった。


 ……具体的には電車の中で、なぜか私の膝に座りだした時とか。

 手を繋ぐだけでは我慢できないようで、ついに私の腰に抱きついて、最寄り駅からこの家まで歩いてきた時とか。


 ……小さな子は好きなのだ、私は。


 ただし、それは、無邪気に笑いかけてくれる場合に限る。


 こんな、恋どころか『怖くて眠れないから一緒に寝てください。まあ、朝まで眠らせませんけどね』って邪気を孕んだ視線を小学生に向けられたら、もう家まで送ったんだから私はここで帰らせてもらうって言いかけても、別に問題はない気がしてくる。


 ……でも、相手は小学生なのだ。


 夜に一人で家にいるのは寂しいと思うし、ご飯の準備も小さな体でやるのは大変だから、仕方なしに妹ちゃんの後に続く。


「……お邪魔します。ご飯の準備しようか」


 遥なら言いそうなセリフを防ぐため、何をしたいか先に告げた。妹ちゃんが脱ぎ散らかした靴を揃えながら、私も家の中に入る。


 ここは魔王の城だ、もう逃げられない。


 『えー、それとも、わ・た・し』がやりたかったって顔をしながら見てくる妹ちゃんは、柱の陰で落胆している。

 だが、君は今ミスを犯した。しっかり者の妹ちゃんにあるまじき行為を。


 ……道中ミスだらけだが。


 こいつは遥だ、間違いない。


 そうすると、私が心配しなきゃいけないのは、遥じゃなくて妹ちゃんなのか?

 いや、遥の体に妹ちゃんが入ってると考えるのは早計だ。


「香奈多も食べていってよ」


 雑音が聞こえる。集中したいから静かにして。


「……香奈多? どうしたの?」

「遥のこと、考えてた」

「んふー」


 んふー、じゃねえよ!


「……妹ちゃん、ご飯電子レンジでチンして。私はお皿出すから」

「まかせてー、あれ?」

「どうしたの?」

「冷蔵庫にー、手が届かないのでー、また抱っこしてほしいな!?」

「……いつも使ってる踏み台あるでしょ、それ使って」

「えー、小学生っていつもこんなことしてるの? 大変だね」


 もう、隠す気はないのか?

 ……こっちも開き直って遥って呼べばいいのか?


 でも、いったい何でこんなことになってるんだ? 聞くのは怖いが、恐怖ではなく単純にめんどくさい。……遥は楽しそうだし。

 

「―――それじゃあ、いただきましょう!」


 ご飯の準備ができて食卓に並べられる。私が来る予定はなかったので、ご飯の量は少なくなっていた。作り足す時間もないけど、もう料理はお皿に盛りつけられているので、今更ここで帰るのも悪い気がする。


「香奈多、あーん?」


 ……やると思った。

 

 死んだ目で妹ちゃんが差し出してきたご飯を見るけど、どうやらやめる気はないようなので、観念して妹ちゃんの箸ごとご飯を口に含む。


「…………」


 何を待ってる、私はやらないぞ。

 残念そうに食事を再開しようとした妹ちゃんだが、何かに気づいたみたいで、自分が使ってる箸をじっと見つめている。


 それは、小学生がしていい目じゃない!


「……妹ちゃん、ご飯食べたら私は帰るから」

「えっ!? せっかくなんで、泊まっていってください!」

「……いや、帰るよ。明日も学校だし」


 そういえば妹ちゃん(遥)は明日どうするのだろう。小学校に通うのか? 


「妹ちゃん、明日はどうするの? っていうか、今日学校行った?」

「いえ、今日は休み……ました。……昨日の夜にお姉ちゃん?が倒れて、そのまま一緒に救急車で病院行って、お昼前に一度家に戻って、それから心配だったんでもう一度病院行って、お姉ちゃんと少し話した後に、―――香奈多さんが来たんです」

「……大変だったね」

「いいえ。……でも今、すごく眠くて」

「それじゃ、ご飯片付けるからちゃんと寝たほうがいいよ」


 私は椅子から立ち上がり、食べ終わった食器をキッチンに運んで洗い始めた。遥と一緒にご飯を食べることはよくあったので、食器をしまう場所は知っている。


「私も手伝います!」


 妹ちゃんが食べ終わった食器を持ってくる。

 私が洗い終わった食器を布巾で拭いて、食器棚にしまう。その動作に手が届かないのでいちいち踏み台を移動させる作業が加わるので、見ててすごく危なっかしい。何より遥は不器用だ、絶対にお皿を落とす。


「そこまでしなくていいよ。疲れてるでしょ?」

「大丈夫、……それに一緒に片付けてると、まるで夫婦みたいじゃないですか!?」

「……妹ちゃんとは、姉妹にしか見えないと思うけど」

「むう」


 妹ちゃんが拗ねた顔は、素直にかわいい。思わずその頭を撫でたくなってしまう。


「……妹ちゃんって、呼ばないで!」

「え……、じゃあ、彼方ちゃん?」


 妹ちゃんの名前を呼んでみる。

 自分と同じ名前だととても呼びづらい。どっちを呼んでいるのかわからなくなる。


「……違うの! 私は……!!」


 ここまでだなー。

 私は濡れた手をタオルで拭いて、膝をついて妹ちゃんと目線を合わせた。


「……遥?」


 癇癪を起した子供みたいだ。


 しゃくりあげながら泣いていて、大粒の涙が目尻に溜まっている。


 そっと、体を抱きよせる。


「遥」

 

 もう一度、呼ぶ。


「――――なんで、わかっ……た、の?」

「遥はバカだから、わかるよー」


 これは罰だ。

 私を病院で泣かせたよね。


 遥の体を強く抱きしめる。


 耳元で遥の嗚咽が聞こえる。


 胸に遥の体温を感じる。


「――――ごめ、……なさい!」


 泣く子供をあやすのは得意なんだ、私は。


 遥は昔から、泣き虫だったから。





「―――んで、何でこんなことになってんの?」


 ようやく話しができる状態になった妹ちゃん(遥)に聞く。さすがにこのまま一生戻れなくなるなんてことになったらことだ。


「いやー、これは私も知らなかったんだって」


 ……やっぱり妹ちゃん(彼方)に聞いてみるしかないようだ。さっき少し話はできたって言ってたから、明日病院に行って、起きるまでねばってみるか……。


「……妹がこんなことできるなんて」


 おい!

 そういうことを聞きたかったんじゃないんだよ!


「……昨日、香奈多にふられてログアウトしてー、一人で泣いてたら妹が来てね。香奈多とちゃんと話し合ってくれって言ってー」

「ふむ」

「身体、貸すからって!」

「―――ふざけてんの!?」

「いやいや、大変だったんですよ? 気づいたら体入れ替わってて、で、私の体が倒れてね。ああ、今病院で寝てる方ね。そしたらお母さんがその音聞いて部屋に踏み込んできてね」

「……お母さんにはちゃんと話したんだよね?」

「私が茫然としてる間に救急車呼ばれて、……言えてません」


 ……まあ、そうだよね。

 娘が一人、昏睡状態になってる時に、さらに爆弾は落とせない。


「香奈多に言えたら安心しちゃった。……もう眠いから、寝ない?」


 ……それでいいのか?


 妹ちゃんの力で入れ替わったっていうなら、心配はしないか。まさか、この遥(妹ちゃん)の体を亡き者にして、完全に入れ替わるとかはないよね。


 ――――ないよね?


「香奈多、一緒に寝てもらっていい? 本当にマジで変なことしないから。……私を遥って呼んでくれる人がいないから心細くって」


 今日一日の行動を見てる限り、信用できるはずもないが、眠気が限界なのは本当らしい。目は閉じられて、すでに船を漕いでいる。


「お風呂どうする? 軽くシャワーでも浴びとく?」

「……うーん、どうしよっかなー」


 遥が指を開いたり、閉じている?


「……私の指じゃないからさ、香奈多をたぶん満足させられないんだよね。動きも違和感あるから、……いかせら「それ以は上言うな!!」


 全力で遥の頭を叩こうとして、こいつ今小学生だったと思いとどまって拳に急ブレーキをかけた。


「……いたい、……ねむい」


 どうやら本当に眠そうなので、とっとと寝かしつけた方がいいと思い、シャワーを浴びさせる準備をする。妹ちゃんの寝間着を取りに行くついでに、自分の親に遥の家に泊まると連絡を入れた。


「……手伝ってもらっていい? 風呂場で溺れる小学生とかよく聞くじゃん。それが私」

「はいはい、わかったよ」


 ふらふら歩く遥の背中を押して風呂場に連れていく。


「あっ、ばんざーいとかやってみたいんだけど」

「余裕あるな、恥ずかしくないのか?」

「……小学生は恥ずかしがらない!!」


 風呂場に反響してうるさいんだけど。

 両手を上げた遥の服を引っ張って、頭から脱がしていく。


「ふっ、どうよ?」

「……来世に期待」

「すぐ大きくなるもん。私みたいに!」

「いや……、なんでもない」


 風呂場に泣き真似しながら駆け込んだ遥はほっといて、私も手早く服を脱いだ。シャワーの温度を確かめてから頭からお湯を被る遥を見ていると、私も妹が欲しかったと羨ましくなる。


「さっさと洗ってあがっちゃおう」

「お、おお」

「何?」

「いやー、もっと何かくるもんだと思ってたけど、なんだかんだで香奈多の裸も見慣れたなって」

「頭、洗ってあげようか? シャンプーが目に入るように」

「一言余計だよ」





「さ、……さっぱり、したー」


 限界らしい。

 もう、まともに考えられないようだ。


「寝るけど、どうする? 妹ちゃんのベッドで寝る?」

「いやー、ここは自分のベッドでー、二人で抱き合って眠りたい」

「……布団、来客用あったよね。私は床で寝るから」

「ごめんなさい、調子に乗りましたー」


 遥の部屋に行き、電気を点ける。

 遥がふらふらとベッドに近づき、布団に潜り込む。


「……昔みたいに一緒に寝よー」


 遥が手元のリモコンを操作して部屋の電気を消した。もう一つ布団を出す隙は与えてくれないみたいだ。……もっとも、初めから一緒に寝るつもりだったが。


 遥も一日大変だったろう。

 私が同じ布団に潜り込むと、案の定遥は抱きついてくる。


「んふー、……安心する」

 

 抱きついてくる遥を私も抱きしめた。

 頭を軽く撫でる。


「……明日はちゃんと、学校に行くんだよ?」

「いや、行かないから!」

お風呂イベントははっちゃけようと考えてたら、「百合」と「レズ」は違うんじゃねって思いなおして、友達百合で!

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