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母が王太子妃になりまして。  作者: もっちりワーるど
8/12

学院に入学することになりまして 

ずいぶん更新が空いてしまいました。汗っ。


学年カラーは、次の通りです。

1年 赤色 イヴ  主人公

2年 緑色 ミリア アレクの想い人

3年 青色 アレク イヴの偽物婚約者

4年 黄色 イアン 嫌みな生徒会長



今日から、この学院に入学することになる。


私は学院の正門の中央に仁王立ちになった。

煉瓦と鉄のデザインアーチで作られた学院の正門。

入学前に潜入したが、今回から正々堂々と入場できる。



「さぁ、行くわよ。」



私は、誰に言うわけでもなく、胸には赤いリボンが踊る紺色の制服を着て、正門をくぐった。

私は、今日からこの学院の生徒だ。



まず、私がしたのは、上級生の教室に向うことだった。


えっと~、ミリア様は、私の一つ上だから、緑リボンの制服よね。

で、えっと~、公爵で成績は上だから……多分この辺の教室…。


私は、上級生の教室が集まる階の廊下を闊歩していた。

授業前と言うこともあって、廊下には、上級生が友人たちと話している。


が…。


私の胸のリボンを見て、彼らは不審に思ったのだろう、突然話しかけられた。



「ねぇ、君、下級生だろ?ここに君の教室はないよ。」



私は、話しかけてきた上級生男子を見上げると、ニッコリ笑った。



「ミリア=ステファーノ様に面会にきましたの。いらっしゃいますか?」


「ん?君は彼女の知り合いなの?」



知り合いになりたいので、会いに来ました。とは言えないなぁ…。

私は、どう言葉にしていいか、うーーーんと、両腕を胸の前で組んで、考え込む。

すると…。



「私に何か御用?」



肩口までの金髪美人が、こっちに向かって歩いて来た。

彼女の髪の色にあった赤いリボンをカチューシャのように巻いている。


すごい美人。アレク、面食いなんだー。

いやいや、アレクもイケメンですもんね。揃って歩けば、美男美女!お似合いのカップルでしょうな。


私は自分の感想に、うんうんと相槌を打っていると、彼女は曖昧に笑って私の前に立った。



「私は貴女を知らないのだけど…?」


「あ、はい。私、イヴ=ベルメザーです。この度、母が王太子様と結婚しまして。」


恐縮するように、自分の後頭部を撫でるようにへこへこしてしまう。

すると、私の話しを小耳に挟んだ生徒たちが騒ぎ始めた。



「ってことは、この子、あの王太子妃の連れ子?」


「確か、庶民なんだよな?」



などなど、こちらをチラチラ見ながら、噂している。



んー…確かにそうなんだが、そんな面と向かって噂されると、対応に困る…。

私が、うーーんと困った顔をしていると、ミリア様が、私の前でお辞儀をした。



「私、ミリア=ステファーノです。公爵家の長女にございます。」



正式な礼に、私も答える形でお辞儀を返した。



「イヴ=ベルメザーです。今後、お見知りおきを。」



そう。一応、私は王族に入った身なので、彼女の対応が正解である。

私は頭を上げると、彼女の礼を解かせた。

そしてここでは話が出来ないと感じて、ミリア様に話を振る。



「ここではなんですし、少し別の場所でお話ししませんか?」


「私に話ですか?……畏まりました、こちらへどうぞ。」



そういうと、ミリア様は私を学院の空き教室に連れてきてくれた。



「此処でしたら、落ち着いて話が出来るかと思います。」


「良かった。」



私は、少し埃っぽい教室の中、使われていない机の上をさっと手で払って、そこに腰を下ろした。

その様子を目で追っていたミリア様が、ハンカチを差し出した。



「汚れてしまいます。これをどうぞ。」



なんていい子なんだろう。

これは、あれだ。

惚れてまうやろーーーーーー!!!ってやつ。



などと、前世の記憶にあるギャグを心の中心で叫ぶが、顔には出さないでおく。



「いえ、綺麗なハンカチが汚れちゃうので、大丈夫です。それより、何故貴女を探してたかってことなんですけど。お伝えしなくちゃいけないことがありまして。」


「はい。何でしょうか。」


「私、イヴ=ベルメザーは、アレク=ロシュタインの偽物の婚約者になりました。」


「………は……い?アレクの?こ…婚約者?」



驚きで私の言葉が理解できなかったのか、目の前の彼女の眼が点になっている。

まぁ、これが普通の反応だろう。

私は、改めて彼女にいうことにした。



「私は、アレクの“偽物の”婚約者です。」


「……偽物?」



“偽物”を強調するように話すと、彼女もそのワードを復唱した。



私はもったいぶるのは苦手だ。

要点は簡潔に、相手が分かるようにが教師の鉄則。



「はい。偽物です。実は、私には諸事情ありまして、急遽婚約者を立てなくてはいけなくてですね。でも、正式な婚約者っていうのは、私、必要ないんです。いるのは、期間限定、偽物の婚約者です。そこで、アレクに頼み込んで、なって頂きました。」


「は…い……。え?…でも、何故アレクだったのです?お2人は、お知り合いだったのですか?…私、しりませんでした。」



茫然と私の話しを聞きながら、困った顔をしている。

混乱しすぎてハテナが頭の上に点滅しているように見える。

なので、誤解を最短ルートで解決する。



「いえ、知り合いではありませんでした。偽物の婚約者をして頂く人を、私が調べて、アレクにしたんです。彼には……想い人がいて、私を絶対に愛さない人だったから。」


「想い…人?アレクに………好きな方が……。」



あ、これ、私への疑いは晴れたけど、余計な方へ思考回路が繋がっちゃったかも…。

私は、内心あちゃーっと頭を抱えた。

アレクの事だから、彼女への想いを彼女自身に伝えてはいないだろう。

私から言っていいなら、即言っちゃうけど…駄目だろうなぁー。下手したら、期限前に婚約解消されちゃうよ。



私は、どうすっぺーっと考えてから、片手をグーにして、ポンッと手を叩く。



「その想い人が誰なのかは、本人に聞いてください。貴女から聞いたら、彼はきっと答えてくれますよ。」


「…そう…でしょうか…?」


「えぇ。」



よし。いい流れだ。

私が、彼女の態度に満足していると、ミリア様は私を見て、頭を傾げた。



「でも、何故そのことを私に話してくださるのです?」


「それは、誤解されたくないからです。彼も、私も。」


「誤解?」


「はい。私達は、周囲を欺く為、一応婚約者らしく振舞います。しかし、彼は貴女に誤解されたくないと思うでしょう。だって貴女は彼の大事な……ぁー…、大事な幼馴染ですから。」



あっぶねー。危うく“大事な想い人”っていうとこだった。

口が滑る滑る!!



「そうですか。」



と、当人は、私の不自然な言動に少しも疑問に思わなかったようで、



「ご丁寧に、ありがとうございました。」



と、私にぺこりと頭を下げた。

ここで、更に私から提案をすることにする。



「そこで、出来ればなのですが、是非、私のお友達になってくださいませんか?私、彼と二人きりで行動するより、貴女と3人でがいいんです。それに私、今日転入したばかりで、心細いですし。」



いい具合にミリア様とアレクを、2人きりにして愛を育むお手伝いをしようと思っております。

等と、ニヤニヤの内心を悟られないように、目をキラキラさせながら、彼女の両手を取って握り、お願いのポーズをとった。


「まぁ、それは光栄ですわ。しかし、…お邪魔なのでは?」


「とんでもない!何度も言いますが、私とアレクは“偽物”の婚約者。それ以上でもそれ以下でもありません。貴女と…女性同士で話したいこともありますし、お願いします。ミリア様!!」


「は…はい…。分かりました、イヴ様。」



私の勢いに押された、ミリア様がこくんと頷いた。

その様子に、私の頭の中ではガッツポーズだった。


よっしゃ!!捕まえた♪




用事は終わったので、私達は空き教室の前で別れた。

そして、私は、職員室に向かうことにする。


“職員室”と書かれたプレートを見上げて、私はその下にある扉を開いた。


その後、平教師に校長室に連れていかれ、恰幅のいいお腹を持った校長の話を長々、聞く羽目になった。

でも、彼の話しを要約すると『王様達に宜しく!』と言うことだった。


私は、どこの世界も校長先生ってのは、話が長いのかと辟易しながら魂を飛ばしていると、校長室の扉がノックされた。

校長の了承を得て、その人物は入ってきた。



「げっ。」



私は短く声を上げてしまい、慌てて片手で口を覆った。

私の声に校長は気づかなかったのか、座っていた椅子から立ち上がり、彼を紹介する。



「紹介しましょう。貴女のクラス担任です。クロード=バレー先生。彼は保健医です。主に保健室にいます。クロード=バレー先生。彼女が、イヴ=ベルメザー様。王太子様のお嬢様になった方です。」


「君は。……初めまして、クロード=バレーです。今日から君の担任になります。宜しく。」


「は、はぁ…。宜しくお願いします。」



クロード先生は、私の顔を見てすぐに分かったのだろう。この前校内をうろつく不審な王族の私を…。

眉をつっと上げたが、校長に悟られると面倒と感じ、敢えてこの前の事には触れずに、初めましてを貫いた。

私も、彼に釣られるように返事を返した。



「では、この時間だと2時間目には間に合うかな?クロード先生、イヴ様をお連れしてください。」


「はい。」



大人たちの意見に逆らうのもおかしいので、私は校長の対面に座っていたが、立ち上がり礼を取った。



「校長先生。これから、何卒、ご教授賜りますようお願い致します。」



そういうと、制服のスカートを持ち上げた。

そして、クロード先生と一緒に校長室から出て、扉を背に立つ。

私はそっと、隣の先生を視線だけで見上げた。



「ぅわ…。」



がっつり、先生と目が合う。

これは…何か言いたいことあんのか?

…先手必勝で、こちらから当たり障りないこと言って、質問させずに終わるか…。



「学院見学ですからね。先日のは。」


「まだ、何も聞いてないけど?…何か他にやましいことでもあるんですか?」


「……いえ…別に。さて、では、先生行きましょう。次の授業が始まってしまいます。」


「……そうですね。」



主導権を持った私は、強気にずんずん歩き出した。

先生はまだ何か聞きたそうな様子を見せたが、知らん顔で私は笑顔を作り、進行方向に視線を戻す。

…担任の先生より先に歩く転校生ってどないなの?とか、頭の片隅を掠ってたりしたけどね。




~ お昼休憩時間 ~



何とか、自分のクラスで自己紹介を済ませ、転校生の宿命を終えた。

身分は彼らより高い地位にある私は、自分から話しかけなければ相手から来ることはない。

授業の合間の休みには、クラスメイト達の関心の的となったが、知らんぷりを決め込み、城から持ち出した本を読んで過ごした。


ミリア様にはあれだけ、友達が欲しいとか言っていたが、実は友達なんて必要ない。

1年しかいない学校だし、ここでの人脈も今後さして必要ない。

…しかし、母の為に使える情報は手にしておきたいので、聞き耳は立てていた。

そう、差し詰め、“ネズミーランドの耳の大きなぞうさん”のように!


と、まあそんな風に過ごした中休み。で、昼食休みだ。ランチを摂るため、私は廊下を軽い足取りで歩いていた。

すると、前からやってくるのは、私の“友達”ミリア様ではないか。



「ミリア様!」


「イヴ様。ごきげんよう。おひとりなのですか?」



ミリア様は、他に2人、何処かのご令嬢と思われる人物と一緒にいた。

しかし、私は1人。

私は、苦笑しながら、ミリア様を見た。



「どう皆様に声を掛けていいのか、迷ってしまって。」



と、儚げな表情で微笑むと、ミリア様が「お可哀想に…。」と騙された。

ミリア様の両サイドにいる令嬢も、「仕方ありませんわよ。」「最初は戸惑いますもの。」などと、同情の言葉を戴く。



…ミリア様は本心だろうが、他の2人には私を好奇な眼で見ている感じがする。

が、私はミリア様に向き直り、



「ご無礼を承知で申し上げるのですが、是非皆様とご一緒してもよろしいでしょうか?」


「まぁ、イヴ様とランチですか?もちろん。ねぇ、皆さん。」



私の申し出に、ミリア様はニコニコ笑い了解してくれた。

他2人も、ミリアがいいと言ったので、頷いた。


私達は、4人でテラス席に昼食を持って座った。

自分たちの前には、自分で選んだランチ。

ここでは、令嬢だろうと子息だろうと、自分のことは基本自分でする。

なので、配膳も自分で行うのだ。


さぁ、みんな揃ったところで食べましょうとなったとき、ミリアが不意に視線を上げ、“誰か”を見つけた。

そして、嬉しそうに笑顔になり、小さく手を振った。

すると、それに気づいたのか、“彼”はこちらに足を向けた。

ミリアの前で止まると、ミリアがにこっと笑い“彼”の名を呼んだ。



「アレク、今日は。お元気?」


「ミリア様、私とは昨日もお会いしましたよね?元気ですよ、変わらず。」


「そう、良かった。」



そう2人だけの世界で話始めている所を、他の令嬢たちと眺めた。

同席している令嬢たちは、その2人を微笑ましく思っているようで、ニコニコと話を聞いていた。

私と言えば。


周囲公認でないか!こりゃ、私がいなくなった暁には、誰にも文句言われない素敵な夫婦になるだろうよ。きっと。

等と考えて、ランチのスープを掬い、口に運ぶ。


あら。



「美味しい。」



自然と漏れた言葉が、このテーブルに落ちた。

みんな、ミリアとアレクの“イチャイチャ”を微笑ましく見ていたのに、私の言葉が彼らの時間に割り込んでしまった。



「あ、ごめんなさい。お腹が空いてたので、少し頂いたら、思った以上にこのスープが美味しくて……。皆さん、私の事は気にせず、お話しを続けてくださって。」



そうニッコリ笑うのだが、そんな私に行儀悪いなぁーという顔をしたのは、同席していた令嬢2人。あ、アレクとの婚約関係はまだ公表してないから、この状況のカオスぶりを知らない。

ミリアは、私と彼の関係を思い出して、気まずげになり、アレクと言えば、≪どうしてお前がここにいる?!≫という心の怒声が聞こえるような顔をしている。

私は、アレク目の端で留めながら、ミリアに微笑んだ。



「ミリア様。大丈夫です。今まで通りでいいのですよ。私の事は気にしないでください。」



ミリアの気遣うような視線に、気にしていないと笑顔を送れば、彼女はホッとしたのだろう。

私に、微笑み返してくれた。

そして、私はアレクに片手で空いてる席を勧める。



「アレク様、良かったら一緒に食事はいかが?」



しかし、私の露骨な誘いが気に入らなかったのか、アレクは笑みを作り頭を振った。



「……いいえ、皆さん、女性同士楽しい会話にお邪魔するわけにいきません。私は、お暇させて頂きます。」



アレクはそのまま、一度お辞儀すると、来た方向へ戻っていった。

しかし、私は見逃さなかった。

3人が視線を外した瞬間、凄い目で私を睨みつけていたことを。



怒ってる~ぅ。



ふぅーーーー。と息を吐いて、ランチに着いていたパンを千切って口の中へ入れた。

パンは白くてふわふわで、一口だけで幸せな時間を味わえた。

うん、美味しい。ここの学食は、どんな事があっても毎日味わおう。


美味しいランチを堪能して、ミリア達と席を立つと、柱の陰で私に指で“こっちにこいっ!!”と呼ぶ人物がいる。

私は、彼女たちに適当に理由を付けて別れると、仕方なく、彼の元へ向かった。

すると、開口一番に、誰にも聞かれないように、小さな声で怒鳴った。



「どういうことだ?!なんで、ミリアと一緒にいた?!…余計なことは言っていないだろうな?」


「あら、アレク。ご機嫌よ。んーーーー“余計な事は言ってない”。けど、“必要なことは言った”。かと。」


「それ!!言ったんだろう!何を言った?!」


「心配しないでよ。たく、小さいなぁー。んー…何を言ったか…かぁー……そーねー。うふ。それは乙女の秘密だから、お教え出来ませんことよ。婚約者様~♪」



途中までは話そうかなぁ~なんて思ったりもしたが、何か面倒くさくなり、やめた。

それに、聞きたいことがあるならミリアに聞けばいいのだ。

会う口実にもなるんだし。



「じゃーねー。」



と、片手をあげて彼と別れた。

彼はまだ何か言い掛けてはいたが、私は取り合わず、自分のクラスへ引き返すことにした。




さて、どうやって酷い令嬢になってやろうか…。



そう思いながら、足取り軽く廊下を歩いたのだった。














有言無実行なことがあります( ;´・ω・`)

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