しょっぱなから死
目覚ましの音とともに僕は起床した。今日は高校の卒業式だ。まだ眠気モリモリの半開きの目で目覚ましの針を見る。あれおかしいぞこの時計は壊れているのかな?僕は昨日7時に目覚まし時計をセットしたはずなのにその時計は8時30分を示していた。
「お母さんーーー!!何で起こしてくれないんだよーーー!!」
「・・・・・・・・」
反応がない。きっと母は僕を忘れて卒業式に行ったのだろう。僕は母に怒られる姿を想像しながら重い足取りで二階にある自分の部屋から出てリビングに向かった。
「おはよう。」
後方から急にそんな挨拶が聞こえてきた。母かと思ったが声質がかなり違う。どっちかと言うと僕と同い年ぐらいの子の声だ。だが家の中に知らない人がいるというのは怖いものだ。後ろを向きたいのに体が言うことを聞いてくれない。そんな僕を笑うかのように彼女は言った。
「まあまあそんなに怖がらないでよ。今日から一緒に暮らしていくんだからさ!」
え?僕は反射的に後ろを振り向いてしまった。そこには僕と同い年ぐらいの女の子が自慢げな顔で立っていた。意味が分からない。僕がこの小さな脳みそをフル回転させて状況を整理していると彼女が話しかけてきた。
「あーごめんね。そういえば何も説明してなかったね。私の名前はメルシィー。メルって呼んでくれていいよ!それと君はもう卒業式には行けないから急がなくても大丈夫だよ!」
「そ、卒業式に行けないってどういう事だよ!というか一緒に暮らすってなんだよ!説明になってないよ!」
「もう!君はせっかちさんだなあ!分かったよ全て教えてあげる。まず単刀直入に言うけど君はもうあっちの世界にはいないんだよ。要するに死んじゃったってこと。」
「嘘をつくんじゃない!じゃあ何故この家にまだ僕が存在しているんだ!」
「んーそれは君が想像している景色だよ。私から見たらここはただの真っ白な場所だよ。試しに友達の家でも想像してみなよきっとそれで信じるよ。」
僕は恐る恐る友達の家を想像した。
・・・・・・・・
彼女が言っていることは全て本当のようだ。僕が見ている景色は僕の想像にしか過ぎなかった。
「ああ確かにお前が言っている事は本当みたいだ。僕は死んでしまったんだな。じゃあここは死後の世界って訳か。」
「死後の世界ではないかな。ここは死後の世界へ行くための中間地点だよ!それで今から死後の世界に行くんだけど最初に言った通り君は私と一緒に暮らしてもらうよ!」
質問する間もなく僕は死後の世界に飛ばされてしまった。