おふないとの死
食い散らかしたフライドチキンばりに、どうぶつの死骸がころがっている。
もともと持つ獣臭さは、こうして肉の塊となることで余計に臭くなり、丸みを帯びた体型も、元の丸さの形なく、ぺったんこになっていた。
無論、一匹だけの死骸をさしての話ではない。パーティの一つでもやっているんじゃないか、と思えるくらいに広い荒野を埋め尽くすほどの死屍累々であるから、もはやこれ以上の言葉はいらないほど不快極まり無いのは目を瞑っていても鼻をつまんでいてもわかる。
そんな光景をなにを思ったのかぼんやりと口を開けて眺め、頭に乗っかっているハンチング帽ですら布切れと化す程のおぞましい詩的情緒に溢れる妄想をする男がいる。
妄想の大洪水はとどまることを知らず、興奮した男はポケットからペンつき手帳を取り出すと、一片の詩を己の情緒のさけぶまま書きなぐった。
「どろどろの/腐肉匂いし/赤土の地/大惨事かな/ぐずぐずの毛革」
脳の左半分とその奥が痛くなりそうな詩を書き上げたなんとも言えない達成感に包まれた男は、更なる詩的飛躍を得ようと、荒野に一歩踏み出した瞬間、ばらばらの肉片と化した。地雷を踏んだのだ。
よってこの物語は酷いポエム作者の伝記でもなければ生命宇宙地球海イルカ植木鉢水溜まりボウフラといった一大哲学の話では無い。単なる闘争の物語である。
哲学と詩について考えていた肉片に混じって、ただ「Ofu Knight」と刻まれた、ぎんぴかのドッグタグが宙を舞った。
これはおふないとの物語でもある。