殺され、少女、夢の中
…………
ある日の夜、何故か、私は小学校の校庭にいた。
「何でここに来たんだっけ……?」
必死に思い出そうとする。ここに来ることになった経緯を。思い出せない。
すると、
だだだだだっ!
と、走る足音が聞こえてきた。私は音のする方に目をやった。ぎょっとした。眼が飛び出るかと思った。何故なら。
友人が、こちらに向かって全力疾走していたからだ。
手には、月光に照らされ怪しく光る、銀の包丁。
…………え……?
ヤバい。逃げろ。私の脳が、足の筋肉に走れ、と指令を出した。それに従い足が動き出す。なにかを考える暇なんて無い。ただ、刺されないように、殺されないように、逃げるだけだ。
ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバい。殺される。
ただ、必死に私は足を動かした。走って、走って、走って、走る。しかし。
追い付かれた。
追いかけるその足音が背後に迫る。怖くて、振り返ってしまった。
友人が、手に持つ包丁を振りかぶる。反射した月光が、眩しい。
包丁が、まるで私を断罪するかのように、振り下ろされた。
ブシュッ
私の臓から、鮮やかな赤色が舞い飛んだ。
ドクドクという鼓動が伝わる。少しずつ、少しずつ、その鼓動が弱くなる。
(あぁ、死ぬんだ……。ここで、友だちに殺されて、死ぬんだ……。)
痛い、イタい、いたい……。でも、それ以上に、友人に刺された、という事実がショックだった。
遠退く意識のなか、何か悪いことしたかな……。とか、考えたが、視界が悪くなり、鼓動も弱々しくなり、そして。
完全に、生命が途絶えた。
AM5:13
再び、意識が戻って来た。
私は身体を起こす。何処も痛くない。
(あれ……?もしかして、夢……だった?)
そこは、小学校の校庭ではなかった。
辺りを見回す。そこは、私の見知らぬ部屋。しかし病院ではなかった。
身体には、ふかふかの掛け布団がかかっている。
もし、夢なのならば、私は昨日、きちんと自分の家の、自分の部屋においてある、自分のベッドに入ったはずだ。
AM6:45
「朝よ~、夢納、あれ、珍しい、もう起きてるの?」
言いながら、私の居た部屋に入ってきた、見知らぬ母親らしき人物。その人の口から発された名前は、私のものでは、無かった。
…………
こんにちは、短編小説書いてみました!これは本当に、1話で終わりのお話です。
今回のお話で、少しでも、“夢”っていう、幻想的な、魅力的であり底知れぬ恐怖を感じる不思議な存在を良いなぁと感じてもらえたら作者冥利に尽きます。
ではまた別作品で。