七話目捨て猫と監査(前編)
「あぁー最悪だ。」
今日は試験の日・・・合格条件は全く揃ってない。
最低限10分間襲撃に耐えられる・・・駄目
秘書艦(ここでは軍艦系と銃系は同じ表記)と銃人が一人以上居ること・・・駄目。
キッチン、工府、入渠施設が機能すること・・・ok
資源が100以上・・・
「・・・」チラ
燃料30
鋼材50
弾200
ボーキ20
「・・・弾薬以外全然足らねえ。」
そう考えつつ歩いていると
ガン
「・・・ん?何か蹴っちまったか?」
「痛いにゃ」
「え?」
「痛かったにゃ」
・・・猫耳に猫尻尾・・・猫?
「・・・猫か何かか?ん?箱になんか・・・」
拾ってください。多摩と言います。
「猫じゃないにゃ。多摩にゃ」
「・・・ツナ缶食う?」
「猫じゃないにゃ」
「・・・食わないか・・・うん。ごめんな。食わないよな。ツナ缶何て」
しまおうとすると多摩は
「・・・」バシッ
「」
まさかの盗られた。
「・・・うまいにゃ・・・」
「そうか。」
「そう言えば名前聞いてなかったにゃ。誰にゃ?」
「・・・ツナ缶奪ってから聞く?普通・・・まぁ良いや俺は荒井 太刀風」
「・・・司令長官?」
そう言う多摩の顔からは緊張が伺える。にゃと言う語尾も抜けている
「・・・今じゃ少尉だ。司令長官は昔の話だ。」
「そうにゃか・・・」
「あぁ。」
「そう言えばダンボール見てなんとも思わないにゃ?」
「拾ってください。てあるな。」
「駄目にゃ?」
「・・・」
上目遣いに涙目は反則だろ・・・
「・・・多摩が良いなら」
「やったにゃ!」
~茜鎮守府~
「・・・と言うわけで連れてきたんだが・・・」
「天龍さん・・・居ないにゃ」
「手紙には資材集め行くとのことだが・・・」
心配だ。主砲と魚雷こそあるが・・・それでも恐い・・・
「だけど俺には何も出来ない・・・今のうちにあれやっとくか・・・多摩はそこら辺で休憩しててくれ。」
「暇にゃ。着いてくにゃ」
「駄目」
「暇にゃ・・・」
「・・・着いてきてもつまらんぞ?」
「ましにゃ」
「・・・そうか」
~茜鎮守府付近の崖~
「・・・天龍・・・」
今は天龍の墓を作っている。司令長官時代。あのとき俺が気を付ければ・・・
「・・・今更だよな・・・」
木陰に座り泣いた。多摩は
「・・・」
少し遠くで見ていた。
~数分後~
「・・・ろ・・・起きろ!」
「え?」
起きるときれいな花畑が広がっていた。
「・・・ここは?」
周囲を見渡していると後ろから
「こっちだよ。太刀風」
振り向くとそこには
「数日ぶりだな。」
天龍が居た。眼帯はない。右目には古傷がついていた。
「天龍!ここは?」
「ここか?まぁあの世と現世の境界線だな。」
「ずっとここに居たのか?」
「あぁ。六文銭うっかりぶん投げちまってな。」
・・・何してんだか
「・・・」
「そう言うわけで、あの世にも行けずここをさまよってたんだ」
「・・・」
「んな悲しい顔すんなよ」
「天龍は恨んでないのか?俺の事」
「あ?」
「・・・俺のせいで死んだようなもんだぞ?なのに恨んでないのか?」
そう言うと天龍はため息をついた。
「馬鹿野郎。あれは俺が勝手にやったことだ。それで恨んだらただの逆恨みだ。恨んでなんか無い。」
「・・・そうか」
「・・・そろそろ時間みたいだな。」
「え?ちょ」
聞こうとした途端地面が抜ける感覚がした。そして
「」ハッ!
寝てたのか?
刀が何故だか今までより重い気が
『お前の腕折るぞ?』
へ?
『暇だったからついてきた。よろしくな。』
「暇だからって駄目だろ!」
「誰と話してるにゃ?」
・・・聞こえてないのか?
「いや、何でもない。」
聞き間違えなのか?
「・・・何だったんだろ?」
~その頃の明石さん~
「・・・あいつ全部押し付けてきたかと思ったけど・・・」
案外、いや相当きれいになっている。それこそ新品同様に・・・しかもある程度修理も行われている。
「・・・あいつ、何で黙ってたのかしら・・・」
~そしててんりゅうは~
「わぁぁぁぁぁぁぁ!」(某ミサイルに巻き付けられた人風に)
くそっ!何でこんなときに怨念が!
「・・・ん?」
いや待て・・・怨念も資材になるって聞いたことあるぞ?・・・よし!
「コイヨ・・・コイヨ・・・!コイヨ!」
怨念を挑発してみる
「ーーーーー!」
怨念は見事引っ掛かり突っ込んできた。
「はぁ!」ズバッ!
突っ込む怨念を切り殺し・・・
「他の資材も十分・・・これで大丈夫か」
持ち帰ることにした。
~茜鎮守府~
「ヤバイヤバイヤバイヤバイ!」
「どうしたにゃ?」
事情を知らない多摩に説明した。
今日は試験の日であること、資材が足りないこと、天龍はまだ帰ってきてないこと、時間まだなのに試験官とおもしき銃人が来たこと。
「にゃにゃ!?やばいにゃ!」
「あぁー!駄目だ!俺死んだ!」
両親へ
どうやら今日が俺の命日のようです。六文銭二枚おいといてください。
「・・・今日の監査を頼まれました。夜見ともうします。」
「茜鎮守府 提督 荒井 太刀風です。よろしくお願いします。」
「多摩は多摩にゃ」
この人は確実に銃人・・・だとしたら艦種は駆逐艦もしくは軽巡・・・
「何ですか?」ギロ
あ、これは戦艦ですね。
「あ、当たり前ですが買収行為は即不合格です。そして私はどんなやつでも公平に審査します。例え誤断で仲間を殺したような奴でも」
嫌味を言われてる気がした。
「・・・」
「それでは試験を始めましょ「ちょっと待った。」
「・・・何ですか?」
「時間はまだですよ?試験開始時間はヒトゴーマルマル。今はまだヒトヨンサンマルですよ?」
「そうですね」
「お茶飲みます?」
「買収行為は禁止といったはずですが」
「買収行為じゃないですよ。そもそも開始時間はヒトゴーマルマルである以上まだ始められませんからそれまでお茶をと思いいっただけですよ。」
~その頃のてんりゅうさん~
「重い・・・」
思った以上に怨念が重かった。
~執務室~
「・・・これは?」
書類を渡された。
「提督が、ストレス・・・また銃人との接し方が分からない(いちおう男性もいるが圧倒的に女性が多い)などの相談をするための場所です。先程誤断で仲間を殺したような奴でもと言った以上これも説明ておこうかと。この仕事は柏鎮守府が請け負っていて毎日電話が止まらないとか」
柏鎮守府・・・聞いたことがある・・・事務仕事が主なところなはず・・・
「確か事務仕事が主な鎮守府でしたっけ?」
「詳しいですね。流石元司令長官と言ったとこでしょうか」
「最近は銃人を兵器としか見ていない人が多い。司令長官の頃はそんな人をたくさん見てきた。見てて虫酸が走りましたよ・・・銃人も人間も変わらず人なのに」
「・・・」
「夜見さん?」
「いえ、何でもありません。太刀風さんも何あったら電話で相談してください。自殺されるよりましです」
「は、はい」
総大将が電話くれなかったけど
「・・・ざっと見ましたけど・・・トラブル何てありませんよ?なぜ俺に?」
「分かりませんか?」
「全く」
「・・・提督はいじめられてるのでは?」
「え?」
は?何言ってんだこの人( -_・)?
「執務室を見てそう思いました。監査官は監査は勿論、銃人と提督の関係も見なければいけません。そして良くなければ相談窓口を紹介する。」
「・・・・」
「なにか言って下さい」
「監査を始めましょう。もういい時間ですし。」
「話は終わってません」
「・・・いじめとはいつの事ですか?まさかここの話とか言いませんよね?」
「そのつもりで言いました。」
「あんなゲス野郎と俺の仲間を一緒にするな!!」ギロッ
「っ!」ビクッ!
『!?』
総大将の事がふと脳裏に浮かび思わず怒鳴ってしまった。
「あ、あの・・・その・・・」ジワッ
夜見さんが震えながら泣きそうな目でこちらを見ている・・・
「夜見さんこれだけは譲れない事なんです・・・ここの子達は俺の大切な仲間なんです。例え思ってくれて言ってくれてたとしても言わないでください・・・そんな事を・・・」
沈黙が続く。一分ほどだったが一時間ほどに感じられた。夜見さんが口を開いた。
「・・・はい。わかりました。私こそ勝手な決めつけをしてしまい申し訳ありませんでした。」
「俺も怒鳴ってごめんなさい」
「こちらこそさっきは誤断で仲間を殺した人なんて・・・」
「それは良いんですよ事実なんですから」
『おい!』
何か聞こえるが気のせいだと思う
「ですが、私は最低です。」
「そんなこと言ったら俺だっていきなり怒鳴る最低な野郎です。」
そのあとこんな会話が少し続いた。そしてお互い笑い話になり監査が始まった。お茶は飲んだよ。自分で用意したけど美味しかった・・・だがてんりゅうが心配だ。
~その頃てんりゅうは~
「くそ!監査が始まっちまってる!」
怨念が重すぎて余り早くは動けない。だがだからといってこのままでは提督が・・・そんなことはさせない。そう思い、艤装と自らに鞭を打ち走るのだった。
~茜鎮守府~
「食堂です」
「パッと見る限りでも綺麗に掃除されていますね。」
「ありがとうございます」
「・・・はい。問題はないようです。」
よかった。後は入渠施設と・・・工府と・・・資材だ。
果たしててんりゅうさんは間に合うのか!?後半へ続く!