3話 手紙
※次話まで、国王目線です。
――――――歌姫失踪から一週間――――――
このころになると、王都は落ち着きをとりっもどしつつあった。
しかし、この事態がもたらした影響はすさまじかった。
経済は、通常よりもおちこんでしまった。また、王城に説明の求めてやってくる報道の数々・・・・・
唯一の救いだったのが、一週間たってもマナの熱狂的なファンである、ファンクラブの面々が行動を起こさなかったことだ。ほんと、なんでだろう...
「国王様、急ぎ謁見したいという者が来ておりますが、いかがいたしましょう?」
「その者の詳しい要件を教えてもらえぬか? 今少し立て込んでてな」
書類の山がいやになるほど溜まってしまっている。ほんと誰のせいだろう・・・・・
「すでに、お聞きしております。歌姫様に関することだそうです」
「なにっ! ・・・あっ」
思わず山を崩してしまった。
「とりあえず、すぐに通せ」
「了解しました。」
私が書類を片付けていると、謁見をしたいと言っていた者が入ってきた。
「お初にお目にかかります、国王様。私はノア様の家で雇われ、家事をしていたイスカと申します。早速要件なのですが、ノア様の机に本日突如直筆の手紙が現れたため持参させて頂きました。こちらがその品でございます」
イスカは私が見ているにも関わらず、堂々としていた。そして、カバンから手紙を出し、近衛兵に渡した。
近衛兵はそれを無言で私に差し出してきた。
私はそれに目を通し、色々と驚きつつもあいつらしいと納得するのであった。
「イスカとやら、これには目を通したのか?」
「はい。確認程度ですが・・・」
「了承した。ここで、読み上げよう。皆も聞くと良い」
そして、私は読み上げるのであった。
『もしこの手紙をシアが読んでいるのならば、私はこの世界にはいないでしょう。そして、いなくなって1週間が経過していることだろう。一週間で自動に私の机の上に出現するように隠蔽をかけてあるからです。私はとある理由で別の世界を旅することになりました。理由は然るべき時が来たら話します。この旅は何年かかるかは検討がつきません。最悪200年くらいかかるかもしれません。そのため、シアにお願いです、、シアは確かエルフだったよね? そうならば、私が帰ってくるまで王を続けてはもらえないでしょうか?
ここから先は、信頼できる人に話してほしい。私が旅するにあたって、歌姫の座が空くと思う、また戦闘歌が使える人がいなくなってしまう。そのため私は人の死体から機械人形を作り、私の魔力を大量に貯蓄させ200年は魔力供給なしでもつような代物を作っている。もちろん戦闘歌も使えるし、感情や思考等も人間と同様にできる。ゆえに心配はいらん。場所は私の研究室の中だ。開け方はイスカが知っている。起動してはもらえないだろうか? 私の魔力を使っているため、研究などに使われないように気をつけてほしい。国の方に触れてしまうからだ。
追伸、突然いなくなって困ったかな?話しても止められると思ったから話さなかったよ。ごめんなさい。帰った時に笑顔で迎えてほしいな。それと、もう一つ、私の財産凍結保存しておいてください、マジでお願いします。』
いかん、皆口が空いた状態でぽかんとしている。読み上げたのは間違いだったか...
「皆、いろんな意味で困惑していると思う。まず、あいつと私は親友というのは知っていると思う。だから、言葉使いはあえて無視するぞ!! そして、あいつがなんでしたいから感情や思考を持った人形を作れるかは私も知らん!!! 帰ったら問い詰める。 あ、戦闘歌についても何も知らんからな。そして、最大の問題、わたしがなんでこの文を読み上げたかだが、それはただ単にあいつに対する仕返しだ。気にするな」
「「...」」
「今日はもう下がってくれ。」
「「あ、はい」」
そういうと、下がっていった。言葉使いは、大目に見るとしよう。
―――その翌日―――
国王はマナの口座凍結のためにわざわざ銀行に来ていた。立場的な問題もあって歌姫の口座は特別性なのだ。国王が直接行く以外凍結保存する方法がないくらいに。
手紙の内容は公表されなかった。中身が中身なだけに。
結局その日は銀行が混んでいたため、一日銀行で過ごすことになってしまった。
――――――歌姫失踪から5年――――――
マナが用意した人形:カナが歌姫として活躍していた。
歌姫に並ぶ人気度で国中を熱くしていた。
私もはまっていた。だが何か違うと感じていた。
私の仕事も落ち着いていた。
――――――歌姫失踪から10年後――――――
なぜかカナが失踪した。理由は不明だ。
マナの時みたいに手紙等もなかった。
国中があれたが、歌姫は失踪するものとして定評が付いた。
――――――マナ失踪から100年――――――
まだ帰ってきていない。
ほんとに100年かえってこなかった。
帰ってくるだろうか?
――――――マナ失踪から150年――――――
私は謁見の間で隣国の国王と会合をしていた。
代替わりした騎士団長が護衛についてくれていたので安心している。
国全体の魔法技術が発達し、お城の結界なども発達した。そのためお城規模で転移無効結界を張れるようになった。侵入者の心配がなくなったため、ほんとに安心だ。
そんな謁見中、何の前触れもなく一人の少女が現れた。
「シア、ただいま!! そして、大変なことになった!!」
私は驚愕としてしまった。その少女の姿が消えたはずの血涙だったからだ。だが、声だけはなぜか聞き覚えのある親友の声だった。
「何者だっ」