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プロローグ

俺は、幼馴染の香の夢を叶える為に、一昨年女子校から共学に生まれ変わった、私立金呉(かねくれ学園に彼女と共に入学した。

この判断は、強豪シニアチームで共に戦っていたチームメイトや監督を唖然とさせるものであった。彼らは、裕太がてっきり地元を離れ、彼がスカウトされた大阪や神奈川にある強豪校に入学するものだと思っていたからだ。


裕太の心はもう何を言っても決して動かない、強い決意があった。

(香と一緒に甲子園に行く)


こう決意したのは、今から半年ほど前に彼女と2人で会った時の事であった。


その日は朝から香と2人で遊園地を訪れていた。ひとしきり遊んだ後、ベンチで休憩していると、彼女が沈黙を破った。


「裕太、高校はどこにするか決まった?」

「まだ、今から考える」

「でも、裕太の事だから、大阪や東京の強豪校からスカウト的なことされてるんじゃないの? 中学生で、裕太ほど凄い人なかなかいないと思うけど」

「ああ、沖縄ならな、でも、全国に混じったら、俺も平均かそれ以下だよ。でもありがたいことに、向こうの高校から誘われてる。その中から決めるかもな。香はどうなんだ?」

しばらくの沈黙の後、香が口を開いた。

「私は決まった。私立の金呉学園に進学したい。まあ、私の頭脳では難しいかもしれないけど」そういって、はにかんだ。俺は、その姿が突然愛おしく感じ、彼女の頭を撫でながら、言った。

「大丈夫、お前ならできる」

すると、彼女が、

「何よー、今まで頭撫でたりしたことなかったくせに。急にどうしたの? 中学に続いて、高校でも離れ離れになるのが、そんなに悲しいの?」

「そんなんじゃねーよ」俺はぶっきらぼうに答えた。 ただ思ったより大声だったらしく、周りの人の注意を引いたらしい、多くの通行人がこちらを気にしている。

香が口を開いた。「まあいいわ。 話変わるけど、あなたにお願いがあるの。聞いてくれる?」

俺は黙って頷いた。

「その金呉学園でね。私野球部のマネージャーをしたいと思っているの。そして、甲子園に行きたいと思ってるわけ」


俺は、香の暴論に驚きを隠し切れなかった。去年金呉学園に野球部が創設されたのを知っていたが、当然、甲子園に出れるような高校ではないし、香の在学期間中に甲子園に行く可能性も限りなくゼロに近い。

俺は香が勉強のし過ぎでネジが外れておかしくなったのかと思った。

風にさらされてぐちゃぐちゃになった髪を整えながら、彼女が続ける。

「頭がおかしくなったわけじゃないよ。だから裕太にお願いがあるって言ったじゃん。

無理かもしれないけど、裕太には金呉学園の野球部に入ってもらって一緒に甲子園を目指して欲しいの!お願いします」そう言って頭を下げた。

俺は、このお願いに対して、驚きを感じながらも、ある種の幸福感を覚えていた。また香と同じ学園生活が送れるかもしれないという、高揚感もあった。一応、どちらが良いのか考えた。ある程度、少なくても在学中に一度ぐらいは甲子園に行ける方を選ぶか、幼馴染と共に、楽しい生活を送りながら、厳しいかもしれないが甲子園を目指すか。心はすぐに決まった。

「香、俺はおまえと共に甲子園を目指し、金呉学園に行くよ」


それから数週間かけて、強豪私立に特待生で行かせるつもりだった両親を説得した。

両親は最初は反対していたが、裕太の熱意に折れた。


そういうわけで、俺と香の私立金呉学園での学園生活と、甲子園を目指す戦いが始まった

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