9.秀衡(ひでひら)の宴
9.秀衡の宴
えさし藤原の郷は奥州藤原氏の歴史と文化が体感できる歴史テーマパーク。まずは腹ごしらえだ。一同は園内のレストランで平安時代の食事を再現した“秀衡の宴”を堪能する。
「これはなかなか豪華なメニューですね」
齋藤と午雲は出された御膳に目を細めた。
「そうか?なんか貧乏臭くないか?これ、いくらするんだ?」
「6000円ですけど」
「やっぱりな。どうりで豪華な料理ばかりが並んでいるわけだ」
「あれっ?閉伊さん、貧乏臭いって言っていませんでしたか?」
値段を聞いた途端に価値観が変わるりきてっくすに齋藤が苦笑した。
「おまえ、じじいのくせに俺をバカにするのか?」
「いえいえ、じじいだからこそ嘘がつけないんですよ」
「くそっ!覚えてろよ」
「まあまあ、二人とも。せっかくの食事が不味くなっちゃいますよ。それより、これで足りなかったら追加で頼んでもらっていいですからね。そして、この後、園内を回りますからお酒の方は…」
「はーい!ビール3本」
「りっきさん…」
「まあ、彼は好きなようにさせておきましょう。それより席が二つ余っているようですが?」
そこへ、ドライバーの弥欷助とガイドの瑠璃がやって来た。
「いいんですか私たちまで」
「なるほど。そう言うことでしたか。日下部さんらしい気遣いですね」
「幹事さん、先ほどのバスの中ではろくに自己紹介も出来ませんでしたからここで皆さんをご紹介していただいてもいいですか?」
ガイドの瑠璃の提案に日下部は一同を紹介した。それぞれ自分の名前と何か一言アピールするよう、日下部が指示すると、みんな簡単な挨拶を始めた。瑠璃もこれを機に名前と顔を覚えようと真剣にみんなの話に耳を傾け、メモを取った。日下部がそのメモをチラッと覗き込むと、りきてっくすと律子の名前の前に印が付けられたいた。それを見て日下部は思わず苦笑した。
「なるほど。みなさん小説を書かれているんですね!実は私も趣味で小説を書いているんですよ。そして、ドライバーの呂彪も」
意外な共通点に二人とメンバーの距離が一気に縮まった。
秀衡の宴にはみんな満足したようだった。食事を終えて一同はレストランを後にした。