7.ヘーイ!タクシー!?
7.ヘーイ!タクシー!?
大橋が席を外したので、いろはは代わりにやって来たりきてっくすを睨み付けた。
「いろはちゃーん、そんなに見つめちゃイヤよ。他の男たちがやきもち焼くからね」
りきてっくすが真面目な顔をして言うから、三人は思わず吹き出してしまった。
「そうですね。せっかくの旅行ですから楽しまないと損ですね」
いろはの緊張も緩んだようだ。
「そうそう、せっかく師匠が誘ってくれたんだから」
「なつさん、まだ師匠って呼んでいるんですか?」
「あら、二人は違うの?そう言えば、以前に弟子は卒業って言われたのよね」
「そうですよ。でも、たとえ卒業しても弟子同盟は永遠ですよ」
いろはの言葉にめいとなつは頷いた。
「ところで、りきてっくすさんの名前ってアクリル絵の具の…」
めいの問いかけを遮るようにりきてっくすは口をはさんだ。
「僕の名前は閉伊卓司」
「えっ?ヘーイ、タクシー?」
「そう!閉伊卓司」
「ヘーイタクシーって、タクシーを止める時の?」
「なっちゃん、ナイスな突込みだけど、違うよ。タクシーじゃなくて卓司ね」
「なんかふざけた名前ですね。そう言えば、以前は妖精だったり大魔王だったりしてましたよね?」
「おお!いろはちゃん、よく知ってるね。そんなに僕のことが気になるのかな?」
「ぜんっぜん。ただ、日下部さんがりきてっくすさんを尊敬していると言っていたから調べてみてだけです」
「ふーん、まあいいや。この旅行で僕の魅力をたっぷり味わうといいよ。旅行が終わるころにはみんな僕のとりこだよ」
「そうなんですか?それにしてはあちらの先輩方はずいぶん醒めた感じみたいですけど」
「なっちゃん、それこそが究極の愛なんだよ…」
「こらっ!適当なことを言ってるんじゃないわよ。りったんの代わりにグーパンチをお見舞いしてやろうか…」
まゆがりきてっくすに向かってそう言った瞬間、まさにグーがりきてっくすの顔面に飛んできた。
「うわあ!なんだこれ?」
「ロケットパンチだよ~ん」
「律子さん、そんな飛び道具どこで手に入れるんですか?」
「ネット通販」