48.弁当泥棒
48.弁当泥棒
りきてっくすが、買って来た厚切り牛タン弁当を広げた。香ばしい牛タンのにおいが溢れた。大橋と水無月も弁当を広げた。
「美味しそうね。ありがとう」
今まで寝ていたはずの律子がりきてっくすから弁当を取り上げた。
「あ…。僕のお弁当…」
責任を取ってくれと言わんばかりに日下部を見るりきてっくす。
「じゃあ、代わりのものを買ってきますから」
「はい!じゃあ、私も。さっき、あんなに食べたはずなのに、ちょっと小腹がすいたし」
そう言って圭織が手をあげた。
「じゃあ、私たちもちょっと軽いものを何かお願いしたいなあ」
「うん、大橋さんたちのお弁当を見たら急にお腹が空いてきちゃった」
いろはとめいも遠慮気味に、しかし、目をキラキラさせながら手をあげた。日下部は席を立って車内販売の売り子を探しに行った。
日下部が席を立つと、空いた席に齋藤が移ってきた。
「いやあ、ちょっと肩が凝ってしまいました」
「ハハハ、あの人、なかなか下りないね。たぶん、東京まで行くよ…」
そう言う、りきてっくすを制して律子が齋藤を睨み付けた。
「バーカ!これは大宮まで止まらないの。だから、鉄人が戻ってきたらどいてよね!」
「はいはい、解かってますとも」
「私が変わりましょうか?」
午雲が席を立ち、大男の隣へ移動した。
「齋藤さん、そちらへどうぞ」
斉藤は律子にウインクして席を移動した。
日下部が戻ってきた。仙台を出たばかりだったのが幸いし、牛タン弁当が車内に積まれていた。りきてっくすと圭織にはそれを渡した。
「同じものじゃないかもしれませんけど。それと、いろはさんとめいさんにはこれ」
日下部はアイスクリームとずんだ餅を差し出した。
「あ!ありがとうございます。新幹線のアイスクリーム大好きなんです」
満面の笑みを浮かべるいろは。その笑顔にみんな心が和んだ。
「鉄人、半分取っといたよ」
日下部が律子から渡された弁当には白飯だけが残っていた。