46.作戦失敗!?
46.作戦失敗!?
斉藤はグリーン車のドア越しに中の様子を窺った。日下部にもたれかかって眠っている律子の姿が目に入った。水無月と大橋が談笑している。対面に居るのはおそらくいろはとめいだろう。そして、午雲と美子。誰も心配そうな顔をしている様子はない。そこに車内販売の売り子がやって来た。齋藤は売り子の後ろに隠れるように日下部達の席へ近づいて行った。
「おねえさん、温かいお茶をくださいな」
りきてっくすの声だ。りきてっくすがお茶を受け取るタイミングで齋藤は顔を出した。
「みなさんお待たせしました」
「なんだ、じいさん、生きていたのか?」
りきてっくすの反応は予想通りだった。齋藤は苦笑する。
「齋藤さん!間に合ったんですね」
他のみんなは一様に安どの表情を浮かべる。
「すみません。てっきり乗り遅れたのかと…。あ、それで、席は取り敢えずそこなんですけど…」
「いいですよ」
ま、遅れてきたのだから仕方がない。かえって一人の方がゆっくりできるというものです。齋藤は素直に返事をして座席を見た。
「な…」
その座席の隣には既に先客があった。午後の上り電車だから、席が埋まっているのには頷ける。しかし、そこにはまるで相撲取りのような大男がいびきをかきながら座っていた。
「途中で降りるかもしれませんから…」
そう言って苦笑する日下部。
「変な考えを起こしたから罰が当たったにゃん」
どうやら、りきてっくすは齋藤の考えなどお見通しだったようだ。齋藤は仕方なく、窮屈そうに座席へ尻をねじ込んだ。
まゆと美子が話していると、なつが二人に聞いてきた。
「なんの話ですか?」
「私は住んでいるところが遠いから、今夜は東京に泊まって明日帰るって話したら桂さんもそうしたいって言うから、じゃあ、そうすればって言ったのよ」
「はい。それで、私も河さんと同じホテルが取れたので」
「それって、もしかして、ロッテホテルじゃないですか?」
「なつさん、まさか…」
にっこり笑って頷くなつだった。