4.今回の行先は…
4.今回の行先は…
全員揃ったところで日下部は切符を配った。
「水沢江刺?」
一同、声をそろえた。
そう、日下部は今回の旅行の行先は告知していなかった。来てからのお楽しみということで。今回日下部が選んだのは東北だった。
「えさし藤原の郷ですか」
「さすが、齋藤さん。鋭いですね。その通りです。そこが最初の目的地になります」
「へー、藤原の郷って、大河ドラマのロケなんかをよくやるところですよね」
「まゆさん、ご名答!それでは、みなさんホームに移動しましょう」
東京駅22番線。8時48分発のやまびこ43号が既にホームに入っていた。日下部は総勢13名を引き連れて9号車の前まで進んでいった。
「グリーン車ですか。贅沢ですね」
と、水無月。
「あら、当然でしょう。鉄人だもの」
まるでそれが当たり前だというように律子は言ってのける。
「座席は配った切符の番号に座らなくてもいいですからね。僕たちの席はここからここの範囲なので、お好きなところにどうぞ」
グリーン車は通路を挟んで両側共二座席だ。日下部が取ったのは片方4列、もう片方は4列の方と互い違いになるように2列。4人掛けのボックスが三つ出来るように取ってあった。
「あれっ?これじゃあ、一人溢れちゃいますよ」
座席の数を数えて水無月が言った。
「いいんですよ。僕が一人で座りますから」
そう言って日下部は三つのボックスとは違うところに座った。とはいえ、2列側のすぐ後ろなのでみんなの顔が見える位置だ。
それぞれのボックスはこんな感じに収まった。
日下部の前のボックスには齋藤、午雲、河、なつ。4列側は前のボックスに大橋、水無月、いろは、めい。後ろにりきてっくす、律子、圭織、まゆ。
「なんでこうなるんだ?お前、席変われよ」
りきてっくすが水無月に向かって言うと、まゆがりきてっくすに言った。
「りっきさんが日下部さんと変わればいいのに」
「まあ、まあ、後で変わればいいじゃないですか」
かくして、こうしてなろうファミリーの東北旅行がスタートした。