39.罰ゲームは?!
39.罰ゲームは?!
寝不足に満腹感が手伝って仙台へ向かうバスの中は静かだった。後部のサロン席ではいびきの大合唱が始まった。なつがサロン席から日下部のいる、いちばん前の座席に移動してきた。
「幹事さん、お疲れ様でした。みんな寝ちゃったから退屈で」
「なつさんは部屋飲みには来られませんでしたからね」
そこに齋藤が合流してきた。おでこにまだうっすらと落書きの痕が残っている。
「なつさん、抜け駆けはいけませんよ。日下部さんには女性のファンが多いですからね」
「そうですよね。私、以前に齋藤さんが書かれた日下部さんのイメージからどんな人なのか想像してみたんですけど、思っていたより普通の人で安心しました」
「あら、なつさんはまだ、この人の本当の怖さが解かっていないようですね?」
「本当の怖さ?」
「齋藤さん、僕にも解かりませんよ」
「フフフ、まあ、いずれ解かりますよ」
そこへ、昨夜は二次会を途中で切り上げた午雲と圭織もやって来た。
「そうだ!トランプでもやりましょう」
齋藤はそう言って上着のポケットからトランプを取りだした。
「黒川さんも一緒にどうですか?そうすれば、男女三人ずつになります。男女三組のペアでババ抜きをやりましょう」
「ペアでババ抜き?」
なつが聞くと、齋藤はルールを説明した。基本的には普通のババ抜きなのだけれど、ペアは協力してお互いが早く上がれるように手札を取ったり取らせたりするのだと言う。そして、最後に残った者とそのペアには罰ゲームを課すというものらしい。
「まずは一回戦やってみましょう」
ペアは日下部となつ、午雲と圭織、齋藤と瑠璃に決まった。ペアはそれぞれ、隣同士に並び、どちらかが引き役でどちらかがひかせ役になる。引かせ役は相手の手札を推理し、自分の手札からそれを引かせる、そして、自分が他のペアから引くときに自分、若しくは自分のペアが欲しい手札を引いてこなければならない。逆に引き役は他のペアに引かせるときに自分のぺが持っている当りを引かせないようにするのと、相手ペアが欲しがる手札を止めなければならない。
「引かせたい手札を1枚飛び出させたりするのはなしですよ。それをやったらその時点で罰ゲームです」
「それで、罰ゲームってどんことをするんですか?」
なつが聞くと、齋藤はニヤニヤしながらこう告げた。
「負けたペアにはキスでもしてもらいましょうかね」