37.南三陸の海の幸
37.南三陸の海の幸
プレハブの仮設店舗での営業とあって何かと不自由なこともあるのだろうけれど、『葵ちゃん』の店内はかなり凝った内装を施していた。
「へー、仮設店舗とは思えませんね」
大橋が感心する。
「この内装は私とあゆみでやったんですよ。ほとんどはあゆみ一人でやったんですけどね」
葵にそう言われたあゆみは照れ臭そうに頭をかいている。
「それより、みなさん。三陸の海の幸を存分に味わってくださいな。とは言ってもメニューは一つしかないんですけど」
あゆみの言う通り、メニューには海鮮丼とだけしか書かれていなかった。
「いいんじゃないかな。昨日は肉ばっかりだったから」
「それは私たちだけでしょう」
りきてっくすと齋藤のやり取りはなかなか絶妙だ。
「じゃあ、海鮮丼を人数分お願いします」
一行は出された海鮮丼に目を丸くした。帆立・鱈・タコ・いか・うに・イクラ…。新鮮な海の幸が山盛りで乗せられている。それに、出てきたのは丼だけではなかった。岩のりのお吸い物に、小皿にはカキフライ、茶わん蒸し、漬物、デザートにはアイスクリームまでついた超ボリュームのあるものだった。
「もう食べられないよ!でも、いくらでも入っちゃうよ」
そう言って、いろははすべての料理を平らげた。他のメンバーも誰一人料理を残すものは居なかった。
「うん、満足!だけど、しばらくは動けそうにないわ」
美子は膨れたお腹をさすった。そして、一行はそれぞれに商店街を見て回ってからバスに戻ることにした。
「美味しい地酒はありますか?」
美子が葵に聞いた。
「それなら、うってつけのものがありますよ」
葵が持ってきたのは復興祈願『南三陸』。金紋両国特別本醸造・男山本店本醸・一ノ蔵 特別純米酒大和伝造。美子はその中から一ノ蔵特別純米酒大和伝を手に取った。
「これをくださいな。宅配できるかしら」
葵はにっこり笑って頷いた。
「美味しい干物もたくさんありますよ」
あゆみがネット通販のカタログを持ってきた。カタログを眺めながら美子は目をキラキラ輝かせていた。