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36.復興の兆し

36.復興の兆し


 葵もあゆみも地元の人間ではないのだと言う。最初は期限付きのボランティアとして働いていたそうだ。それが気が付けば、ここでアルバイトをしながら、二人でアパートをシェアして住みついてしまったのだと言う。

「みなさん、この辺りは当時とそれほど変わってはいません。復興は相変わらず進んではいないんです。けれど、ここに住む人たちは苦しみや悲しみを抱えながらも前を見て進んでいます。そんな人たちと触れ合うのにいいところがあります。宜しければご案内しますので行ってみますか?」

「是非、お願いします。元々決まったスケジュールなどない旅ですから」

 一行は葵の申し出を快く受け入れた。日下部が言った通り、行き当たりばったりの旅なのだから。

「じゃあ、私たちについて来てください」

 そう言って、葵とあゆみは自分たちが乗って来ていた軽自動車に乗り込んだ。


 南三陸町さんさん商店街。

 震災後、1年もたたない平成12年2月に南三陸町の志津川地区にオープンした仮設商店街。復興をになう地元の事業者32店が軒を連ね、連日多くの観光客でにぎわっている。週末ともなるとフードコートや特設のステージで様々な催しが開催されている。

 弥欷助は葵たちの車に従って、駐車場へ入って行く。瑠璃がバスを降りて葵と打ち合わせをしながら、バスをスペースへ誘導した。

「どうぞ、こちらへ」

 葵とあゆみが先頭に立って一行を案内した。行く先々で商店街の店主や買い物に来ている地元の人たちが葵とあゆみに声を掛けてくる。二人がどれだけここに溶け込んでいるのかがうかがい知れる。

「葵ちゃん、珍しいね。自ら観光客を引き連れてくるなんて」

「おっちゃん、この人たちは違うから」

 そう言って葵は明るく受け答えをしている。

「みなさん、そろそろお腹がすきませんか?」

「そう言えば、もうお昼ですね」

 葵はにっこり笑ってあゆみに合図をした。あゆみは頷き、先に進んで行った。しばらく進むと、先に行ったあゆみが手招きしている。どうやら、そこで昼食をさせてくれると言う事らしい。

「あれ?ここは…」

 その店には『葵ちゃん』と書かれたカラフルな看板が掲げられていた。



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