31.女湯脱衣場の怪
31.女湯脱衣場の怪
美子、圭織、なつの三人は本館大浴場の露天風呂に浸かっていた。心地よい夜風に吹かれて満天の星空を見上げている。
「みんな、まだやってるのかしら」
「あら、なつさん、本当はまだみんなと一緒に居たかったんじゃないの?」
「いえ、いえ。あの雰囲気にはさすがについていけませんよ」
「そうね!せっかくの温泉なんだから…」
美子が話していたところに、脱衣場の方から大きな物音が聞こえた。
「何かしら?」
「ちょっと見てきます」
圭織が脱衣場の様子を見に行った。
「キャーっ!」
今度は圭織の悲鳴が聞こえた。美子となつは脱衣場へ駆け戻った。圭織が脱衣棚の影に隠れるように何かを窺っていた。二人はそっと近づいた。
「なに?これ?何の悪ふざけかしら?」
そこには全身落書きだらけで全裸の名取が転がっていた。
酔いどれ軍団の秋元は夜の街へ繰り出すのを楽しみにしていた。酔い潰れた名取を部屋まで連れて行く様、井川に命じられたものの、おいて行かれてはたまらない。名取を担いで部屋へ運ぶ途中、大浴場の前を通りかかった。そこで秋元は閃いた。
「いいや、ここに置いて行こう。目が覚めたら勝手に部屋に戻るだろう」
そう考えた秋元は名取を脱衣場に転がして、そそくさと軍団に合流した。秋元が名取を放置したのは男湯のはずだった。ところが、急ぐあまりに確認を怠った。その時、既に美子たちは露天風呂で夜風に吹かれていたのだ。
りきてっくすたちが部屋に戻ると、齋藤は間仕切りで仕切られたベッドルームで床に就いていた。りきてっくすは縁側に部屋飲みのスペースを確保すると、いつの間に調達したのか焼酎のボトルを浴衣の懐から取り出した。
「ママさんに貰ってきたにゃん」
「貰ったって…。伝票にサインしたんですよね?」
「便利だにゃん。サインをするとなんでも貰えるにゃん」
「何を子供みたいなこと言ってるんですか。でも、まあ、しょうがないか」
こうして、三次会の部屋飲みが始まった。時刻は既に深夜の0時30分になろうとしていた。