30.思い出のカクテル
30.思い出のカクテル
日付が変わる頃には午雲、美子、圭織、なつはカウンターでクールダウンしていた。絵麻が4人にカクテルを勧めた。美子がピンクレディーを注文した。
「あっ!河さん、それ」
「そうよ」
「じゃあ、私はスクリュードライバーを」
なつがオーダーすると圭織もモヒートを注文した。
「みなさん、このカクテルにはなにかあるんですか?」
絵麻がたずねると、なつが説明した。
「これは日下部さんがホワイトデーのお返しにプレゼントしてくれたものなんですよ。それぞれのカクテル言葉と共に」
「まあ!素敵。ちなみにピンクレディは“いつまでも美しく”、スクリュードライバーは“貴方に心を奪われた”、そして、モヒートは“心の渇きを癒して”だったかしら?なるほど、皆さんにお似合いですね」
「さすがママさん、お詳しいんですね」
「じゃあ、僕はホットコーヒーを」
「あら、午雲さんはもうおしまいですか?」
「ええ、これを頂いたらもう一風呂浴びようと思います。先に戻った齋藤さんのことも気になりますし」
「そうね。それじゃあ、私もお風呂に行って来るわ」
二人の言葉に圭織となつも頷き、4人はバーを後にした。
バーの営業時間が終わろうとしていた。井川達、酔いどれ軍団の面々はこれから外に繰り出すのだと言った。
「名取はどうします?」
「ここに置いといたら迷惑がかかるから、誰か部屋まで連れて行ってやれ」
こうして、酔いどれ軍団の面々は三次会へ繰り出していった。
「さて、僕らもお開きにしますか」
「え~、日下部ちゃん、もうちょっと飲もうよ。しおんちゃんも飲み足りないでしょう?」
「じゃあ、部屋飲みにしますか」
「オッケー!じゃあ、みんな僕たちの部屋までついて来るにゃん」
りきてっくすを先頭になろうファミリーもバーを引き上げた。
「鉄人、おんぶ」
「仕方ないなあ」
日下部は虚ろな目で見つめる律子を負ぶって、みんなの後に続いた。