3.勘違い男
3.勘違い男
しばらくして午雲がやって来た。
「おや、今回は見慣れぬ顔の方がおられますね」
「そうだよ!フレッシュ三人娘を紹介するよ」
りきてっくすが得意そうに紹介する。
「どうぞよろしくお願いします。」
「こちらこそ宜しくお願いします」
いろは、めい、なつの三人は恐縮して午雲に挨拶をした。
「あとは大橋さんと美子さんだけですね」
「大橋君は二日酔いで寝過ごしちゃったんじゃいの?」
りきてっくすは前回の旅行の時のことを持ち出してぼやいた。確かに前回の大橋は集合場所に来たとき、ものすごく酒臭かった。
そのころ大橋秀人は迷っていた。けれど、さすがに昨夜は一滴も飲んではいなかった。
「やばいなあ…」
何度も来ている東京駅なのだけれど、銀の鈴で待ち合わせなどしたことがなかったから。遅刻して置いてけぼりにでもされたらかなわない。大橋は密かに楽しみにしていることがある。
「大橋さん、こんにちは。そんなに慌ててどうしたんですか?」
「あっ!河さん、ちょうどよかった。銀の鈴ってどこですか?」
「私も探しているのよ。一緒に探しましょう」
「そんな悠長な…。もう時間がないですよ」
「あら、そうなの?じゃあ、日下部さんにお迎えに来てもらいましょう」
最初からそうすればよかった。待ち合わせ場所には既に他のメンバーが勢ぞろいしていた。それでも何とか間に合った。大橋は隅の方で不安げにしている三人の女の子に目をやった。
「ほー、大橋君も彼女たちが気になるのかな。じゃあ、僕が紹介してあげよう」
りきてくっすは自慢げに三人の女の子を大橋に紹介した。
「大橋さん、会えるの、楽しみにしてました!」
いろはが言うと、めいとなつも軽く頭を下げて応えた。
「あれっ?知り合いだったの?大橋君も隅に置けないなあ。でも、この子たちは僕のものだから手を出さないでね…」
そう言って胸を張るりきてっくすをよそに、三人の女の子は「違うから」と首を横に振った。そして、間髪入れずに律子のこぶしがりきてっくすの顔面に飛んできた。