28.恒例のワンマンショー
28.恒例のワンマンショー
日下部たちがしおんと話しているのを見て、井川が詰め寄って来た。
「日下部、早速ナンパか?お前にしては珍しいな。俺は大歓迎だけどな」
「井川さん、彼女、旅行代理店のしおん夢野さん。ここの若女将とはいとこ同士なんでよ。それで、東北に来る時は是非ここをって以前から勧められていて」
「そんなことはどうでもいい。美人は多い方がいいからな。早くこっちへ来い」
「あの、私たちは…」
しおんは断ろうとしたのだけれど、無理やり井川に連れて行かれてしまった。
「良かったら、あなたもどうですか?」
「いいんですか?」
「もちろん」
刹那も二人の日下部に促されて二次会に加わることになった。
バーはなろうファミリーと酔いどれ軍団で貸し切り状態となった。
そして、面々ははいくつかのグループに分かれて、それぞれボックス席に着いていた。井川は早速しおんを隣に座らせ、ご機嫌にしている。そして、大橋は早くもデンモク片手にカラオケの選曲を始めている。大橋の周りには三人娘と水無月が居る。
「大橋さんってカラオケが上手なんですよね!」
いろはが早速アプローチする。
「上手かどうかは…」
三人娘が目を輝かせて大橋に注目している。
小林商事の日下部は井川の席へ、なろうの日下部は刹那を連れて、りきてっくすや律子たちの席へ着いた。
「あら、この子、幽霊の子じゃない」
そう言った律子に日下部は刹那が自分たちについて来ていた経緯を説明した。
「ふーん…」
律子は少し考えてから、ニタッと笑った。何やら面白いことでも思いついたらしい。
そうこうしているうちに大橋のワンマンショーがスタートした。ミスチル、金爆、サザン、バックナンバー…。女の子受けする曲を次々と披露して行く。
「今度は私とデュエットして下さい」
そう言っていろははHYの『AM11:00』を選曲した。二人の息の合ったハーモニーに場内は割れんがかりの歓声と拍手の渦に包まれた。満足げに微笑む大橋といろはだった。