24.日下部が二人?!
24.日下部が二人?!
トイレから戻った水無月はひっくり返った齋藤の顔に落書きをしている律子とりきてっくすをよそに日下部のそばに行って聞いてみた。
「日下部さんって、双子の兄弟とかいます?」
弟はいるけど、双子ではないよ。どうして?」
「いや、トイレでそっくりな人を見かけて…。その人も日下部って呼ばれていたから」
「へー。世の中にはそっくりな人が三人は居るっていうからね。偶然じゃないの?」
「そうなんですかねえ…」
「水無月さん、それ本当?だったら私も会ってみたいな」
いろはが言った。めいとなつも目の色を変えた。
「ちょっと他の宴会場を覗いてみようかな」
「面白そう!」
「そうね。ちょっとだけ」
そう言って三人は席を立った。
「どこいくにゃん?」
りきてっくすが三人に声をかけたけれど、落書きが楽しいらしく、すぐに興味は齋藤へと向いた。齋藤は既に上半身まで落書きだらけだった。
三人は手始めに隣の部屋を覗いて見た。ちょうど、襖戸が開け放たれていた。
「見て!」
いろはの言葉にめいとなつがそっと奥を覗き込む。宴席の末席に日下部にそっくりな男が座っていた。
「ウソみたい!本当にそっくりだわ」
「おい!姉ちゃんたち。ちょっと、こっちへ来い」
上座に座っている男に見つかった。その強面の男が三人を手招きしている。それに気が付いた日下部そっくりの男がたしなめるようにその男に言った。
「井川さん、よそのお客さんにちょっかい出しちゃだめですよ」
「何がちょっかいだよ!向こうがこっちにやって来たんだろうが。おい、名取。ちょっとあいつらを連れてこい」
「すいません。ああなったら収拾がつかないんでちょっとだけいいですか?あなたたちもここを覗いていたのには理由があるんでしょう?」
思わぬ展開に三人は焦ったけれど、あの日下部似の男も気になったのでちょっとだけお邪魔することにした。いざとなれば隣にみんなが居るのだし。
「じゃあ、ちょっとだけ…」
井川は満足そうな顔をして三人を迎え入れた。