22.宴の始まり
22.宴の始まり
めいはすぐに口を押えたのだけれど、隣に座っていたいろははすぐに気が付いた。めいはみんなの注目が集まって大騒ぎになってはまずいと思い、敢えて知らぬふりをしておこうと決めた。だから、隣のいろはに目配せをした。いろはもめいのその仕草が何を意味するのか、俯いた水無月の顔を見た瞬間に察したのだった。
「みなさん揃ったところで宴会を始めましょう」
日下部の言葉に面々は手を叩いた。
「これで1日目が無事終了…。と、言うか、これからが本番なのかもしれませんが、取り敢えず乾杯!」
日下部の掛け声にそれぞれグラスを合わせて宴会がスタートした。
席には海の幸、山の幸が所狭しと並べられている。
「ほら!やっぱりありましたよ」
斉藤がてりきてっくすに言った。二人のやり取りには最早棘ひとつ無いようだった。
「美味いものは何度食べてもいいにゃん。それに今度はしゃぶしゃぶだし。それより皆さん、楽しい宴会を前に転んで怪我した間抜けが居るにゃん」
りきてっくすがそう言って水無月の方を見た。水無月は焦ったけれど、いつまでも隠しておけるわけもないと開き直った。
「ハハハ、やっちゃいました」
そう言って照れくさそうに痣の出来た顔をさすって見せた。
「あっ!」
まゆが思わず声を上げた。
「まゆりんこ、どうかしたのかな?」
「いえ、なんでもないです」
二人以外、唯一現場を目撃していたまゆはあれが水無月だったのだと確信した。
「あとでゆっくり話を聞かせてもらいますからね」
水無月はただただ苦笑するだけだった。
バーでしおんと再会した刹那はしおんの顔を見てようやくすべてを思い出した。
「しおんさーん」
刹那は泣きながら、しおんのそばへ駆け寄った。そして、一部始終を報告した。
「まったく!仕方のない子ね。それで、使ったのはタクシー代だけなのね」
しおんは刹那からバッグを受け取ると、中身を確認した。
「まあ、いいわ。それより、お腹減ったんじゃない?絵痲に言って何か出させるわ」
果たして、この二人は一体何者なのか…。