20.挙動不審
20.挙動不審
風呂に行っていた面々が戻って来た。
「日下部さん、いいお湯でしたよ…。あれっ?水無月さんその顔はどうしたんですか?」
齋藤に顔の痣のことを聞かれて狼狽る水無月。りきてっくすが追い打ちをかける。
「どうせ、女湯でも覗いて殴られたんじゃないの?」
正に図星だったけれど、実際には女湯を覗いたわけではない。そこは混浴だったのだから。水無月は開き直った。
「ちょっと転んだだけですから」
「そうですよ。水無月さんがりっきさんのようなことをするわけがないですよね」
「閉伊さんのようなこととは?」
午雲の発言に齋藤が喰いついた。午雲は齋藤に伊豆の温泉での出来事を話して聞かせた。
「あ、あれは不可抗力だにゃん」
矛先がりきてっくすに向いたことで水無月は胸をなでおろした。
「日下部さん、僕たちもお風呂行って来ましょう」
日下部と水無月が別館の大浴場の前に差し掛かった時、日下部が水無月に声を掛けた。
「ちょっと覗いてみますか?」
「勘弁して下さいよ!日下部さんも疑っているんですか?」
「そう言うわけではないですけど…」
日下部は大いに未練を残しつつ、水無月は見るからに挙動不審で本館へ向かった。
本館の女湯では変態男の話題で持ちきりだった。
「それで、その変態男の顔は見たんですか?」
「圭織さん、残念ながら二人ともコンタクトをはずしていたから。そばに来ても声を掛けられるまで気が付かなかったんです」
「まゆゆは?」
「私も後ろ姿しか…。でも、りっきーじゃないことだけは確かだけど」
「あら、でも、混浴だったのなら、その人に罪はないんじゃないの?」
「確かにかみむら先生の言う通りね。お二人は見られ損ってとこかしらね」
「河さん、そんなぁ…」
「事故よ。忘れましょう」
苦笑しながらなつが言った。めいといろはは半ベソをかきながら風呂を出た。
宴会場は本館の2階。女性陣は風呂から直接来ると言っていたので男性陣は先に宴会場へ向かった。女性陣の到着を待ちながら水無月は気が気ではなかった。そして、女性陣が宴会場へ入って来た。