2.天敵
2.天敵
銀の鈴の影から日下部たちの様子を窺っている男がぼそっと呟いた。
「やっぱり来ちゃったのね」
彼にとって、りきてっくすは天敵ともいえる存在。犬猿の仲だというわけではないのだけれど、彼はどうにもりきてっくすのことが苦手なのだ。
「齋藤さん、こんなところで何をしているんですか?」
いきなり声を掛けられて齋藤一明は飛びあがった。
「水無月さん、脅かさないでよ」
「別に脅かしてなんかいないですよ。それより早く行きましょうよ。もう、日下部さんたち来ているじゃないですか」
「いや、ちょっとお茶でも買ってくるよ」
そう言って齋藤は売店の方へ歩いて行った。
この期に及んで齋藤はまだ迷っていた。それほどりきてっくすに対する苦手意識が強いのだ。銀の鈴とこの売店を何度往復したことか…。
「おじさま、ずいぶんたくさんお茶を買ったのね」
かみむら律子は悩める齋藤に微笑んだ。柴野圭織と桂まゆも一緒だ。
「そっか!私たちの分ね。ありがとう」
律子は齋藤がぶら下げていたコンビニ袋を取り上げ圭織とまゆに分け与えた。
「さあ、行きましょう!」
齋藤の手を取り律子は歩き出した。齋藤は何も言えずに律子に引きずられていった。そして、銀の鈴で天敵に再開した。
「鉄人、おはよー」
「やあ、律子さん、それに皆さんも。お久しぶりです」
「おっ!じいさん、モテモテじゃないか」
齋藤はドキッとした。この三人みんなりきてっくすとは親しい子たちだ。変に妬まれでもしたらあとが厄介だ。何か言い訳の一つでもせねば。そう思い齋藤は口を開いた。
「いえ、これには深い訳が…」
「まあ、仲良くやってくれ。僕にはこっちのフレッシュ三人娘がいるから。じいさんにはお古がちょうどいい…」
その瞬間、律子のこぶしがりきてっくすの顔面に炸裂した。
「りったん、やり過ぎだよ」
圭織とまゆが苦笑する。三人娘は顔を引き攣らせて恐怖に怯えた。
「相変わらず仲がいいですね」
日下部は満面の笑みでそんな光景を眺めた。今回もまた楽しくなりそうだ。