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14.白ずくめの女

14.白ずくめの女


 金色堂の拝観を終えた一同はバスが待つレストハウスへ戻って行く最中だった。

「ねえ、あの人…」

 めいが蒼い顔をして、ぼそっと呟いた。

「どうかした?」

 なつが心配そうにめいに寄りそう。

「さっきから気になっていたんだけど、私たちの後をずっと付いて来ているみたい」

「ええっ?偶然だよ。たまたま行く方向が同じだけなんじゃないの?」

「でも、藤原の里にも居たのよ」

「偶然だってば!このコースは観光の王道だもの」

「そうかしら…。それならいいんだけど…」


 刹那は自分が今どこに居るのか判らなくなっていた。どうしてこんなところに居るんだろ?そう言えば私は誰…。全ての記憶がないのだ。ただ、この人たちについて行かなければならない…。そう言う意識だけが頭の中を占領していた。

 気が付いたのはえさし藤原の里だった。ベンチで目が覚めた。そこに通りかかったのが日下部たちなろうファミリーの一行だった。

「あの人たちと一緒に行かなきゃ…」

 無意識に刹那は日下部たちの後を追った。しかし、体がだるくてうまく歩けない。何とか見失わないようについて行ったのだけれど、日下部たちはバスで出発してしまった。

 刹那はたまたま乗客を降ろしたばかりのタクシーに飛び乗った。乗ってからハッとした。お金…。そこで、持っていたバッグの中を確認した。いくつもの一万円札の束がそこには収められていた。これって私のお金?

「あのバスと同じところに行って下さい」

 こうして刹那は平泉までやって来た。

 全身白ずくめの服装でフラフラと歩くその姿は見ようによってはまるで幽霊のように見えるかもしれない。


 レストハウスに着くと、ガイドの瑠璃が全員の顔を確認して告げた。

「出発は15時30分です。それまではお買い物などをお楽しみください」

 一同はそれぞれに土産物売り場へ散って行った。

 瑠璃がバスに戻ろうとすると、白ずくめの女性に呼び止められた。

「あの、こちらの皆さんはこれからどちらに行かれるのでしょうか?」

「鳴子温泉に宿泊予定ですけど」

「そうですか。ありがとうございます」

 その女性は礼を言うと、ふらふらと歩き去って行った。瑠璃は首をかしげた。


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