13.黄金バウム
13.黄金バウム
一同が金色堂に到着する頃に女の子たちも何とか追いついて来た。
「みなさん、お揃いのようですね」
メンバーを確認した瑠璃が金色堂の案内を始めた。
「はい、この中尊寺金色堂は平安時代後期に奥州藤原氏初代藤原清衡が天治元年に建立した仏堂で平等院鳳凰堂と共に浄土教建築物の代表例であり、国宝に指定されています」
「ガイドさん、そう言えばお昼に食べた秀衡って?」
水無月がガイドの瑠璃に質問した。瑠璃は待ってましたとばかりに水無月の質問に応えようとした…。
「なんだ、カズッち。そんなことも知らないの?秀衡は奥州藤原氏の三代目当主で、そのミイラがここに納められているにゃん」
りきてっくすが瑠璃の代わりに説明した。
「ガイドさん、そうなんですか?」
「おい、こら!いちいち確認するんじゃない」
りきてっくすはそう言ってドヤ顔を瑠璃に向けた。瑠璃は苦笑してうなづいた。
「ほう!閉伊さん、なかなかの物知りですな」
「じいさん、少しは見直したかな?」
「見直すも何も、私は作家としての閉伊さんはずっと以前から尊敬していましたよ」
「そうだったの?じいさん、案外いいヤツだな」
ここにきて、りきてっくすと齋藤が急接近。しかし、このままで終わるはずはない。それじゃあ、話が面白くない。
「何を企んでるにゃん!」
地の文にキレる、りきてっくすでした。
その頃、バスに残った運転手の弥欷助はレストハウスで嫁のお土産を物色していた。
「やっぱ、これだよね」
弥欷助が手に取ったのは平泉黄金バウム。復興庁の“世界にも通用する究極のお土産”に選ばれた品だ。
「ひとつ下さいな」
弥欷助は黄金バウムを購入してご満悦だ。途中でソフトクリームも買ってバスに戻り、一同が帰ってくるのを待った。待っている間、ソフトクリームに舌鼓を打ちながらスマホを手に取り、小説家になろうのサイトを開いた。
「これ好きなんだよな」
そう言って弥欷助が読み始めたのは柴野圭織作『すきま時間のおつまみ』だった。
「このバスの運転手さんがいいんだよな」