11.世界遺産
11.世界遺産
瑠璃がメンバーの人数を確認している。
「ひい、ふう、みい…。はいOKです」
弥欷助が頷いてバスを発車させる。バスが走り出すと、ガイドの瑠璃が次の行き先を告げた。
「みなさん、次は世界遺産、平泉へ向かいます。平泉と言えば、中尊寺金色堂ですが、他に毛越寺、観自在王院跡、無量光院跡、金鶏山を含めた、仏教の中でも特に浄土思想の考えに基づいて造られた多様な寺院や庭園、遺跡が一群として良好に保存されており、海外からの影響を受けつつ、日本で独自の発展を遂げたもので、平泉の理想世界の表現は他に例のないものとされています」
「へー!瑠璃ちゃんって物知りなんだね」
「はい!ガイドですから。これでご飯食べさせてもらってます」
りきてっくすのボケに見事に突っ込む瑠璃だった。
やはりここに来たら一番の目的は中尊寺の金色堂だ。平泉にはガイドの会があって専門のガイドも居るのだけれど、日下部は引き続き瑠璃にガイドを申し出た。とは言え、平泉は広い。最初こそみんな一緒に歩いていたのだけれど、自然にばらけてきた。
「なんか、空気が違いますね」
水無月が歩きながらその景色と空気感に感動している。
「そうですね。心が洗われます」
「普段、ろくなことをしていないからそのように感じるんですよ」
大橋が水無月の言葉にうなずいていると、齋藤が冗談交じりにからかった。
「それを言うなら日下部ちゃんがいちばん感じているんじゃないの?もしかして息苦しいんじゃかな?」
「ほう!閉伊さんもそう思われますか。初めて意見が合いましたな」
「まあ、不本意だけど認めるにゃん」
「日下部さんって、そう言う方なんですか?」
瑠璃が驚いた表情で尋ねる。
「そうよ!鉄人は不倫ばかりしているろくでなしなんだから」
「ちょっと、律子さん!それは小説の中だけだし」
「それにしては日下部さんの不倫小説は内容がリアル過ぎますよ」
「大橋さん!」
「それにしても、いつの間にか女の子たちが見当たらなくなりましたね」
大橋の言う通り、いろは、めい、なつ、まゆ、圭織の姿がいつの間にか見当たらなくなっていた。