1.銀の鈴
1.銀の鈴
東京駅、銀の鈴。
不安そうに寄り添って、しかし、時折はにかんだように笑みを見せる三人の女の子たち。初めて参加する旅行に遅れてはならないと、かなり早く待ち合わせ場所に来ていた。
「ちょっと早く来過ぎちゃいましたね」
今回のメンバーでは最年少のいろはがそう言って舌を出した。
「遅刻するよりはマシよ」
「そうそう!初対面の人もいるし、目を付けられたらせっかくの旅行が台無しになりかねないものね」
「でも、良かった。三人で行けることになって」
「当然よ!弟子同盟はいつも一緒じゃなきゃ」
いろは、まつもとなつ、みつながめいの三人は“なろう”に来たばかりの時、日下部に色々とアドバイスをしてもらったこと、同時期に交流が始まったことで誰からともなく“弟子同盟”と称して日夜励んでいる。
そんな彼女たちの方へ何やら不審な男が近づいてくる。
「ねえ、君たちも旅行に行くのかな?」
屈託のない笑顔とは裏腹に下心が見え見えのその男、三人が無視して背中を向けてもなお話しかけてくる。
「どこに行くの?僕も旅行に行くんだけど、ちょっと早く来過ぎちゃったから、少しお話でもしようよ」
男はそう言って、ベンチに腰掛けた。そこに日下部がやって来た。
「やあ!三人とも早いね」
「日下部さん、良かった」
日下部の姿を見て三人はホッとした。
「日下部ちゃん、幹事のくせに遅いよ」
先ほどの男が日下部に声を掛けた。
「りっきさん!今回はずいぶん早いじゃないですか」
「たまたまだよ。それより、この子たち誰?」
「紹介しますよ」
日下部はそう言って三人をりきてっくすに紹介した。
「日下部ちゃん、でかした!今回の旅行は楽しくなりそうだにゃん」
早くもご機嫌なりきてっくすをよそに三人の女の子たちは不安な表情を浮かべた。日下部はそんな三人を見て微笑んだ。
「大丈夫だよ。見かけはあんなだけど、いい人だよ」
「日下部さんがそう言うなら…」