一夜帝国
「いってきます」
そう言って扉を開くと
帝国だった
白地の旗が掲げられ「帝国」と書かれたその帝国は大きく口を開けていた
好奇心からかおっかなびっくり入っていく
地面から生えた帝国は古びた内装をしていた
どうしてうちの前に帝国が生えたのかその謎を解きたい
皇帝に会えるのかしら
皇帝はなぜ私を選んだのかしら
薄暗い階段を抜けると
煉瓦造りの街並み
茶色の街並みの中で一際目立つのは、
街を見下すようなガラス張りの城
レトロチックな街並み。そして、違和感
物音一つしない、静かな街並み
私が石畳を蹴る音だけが聞こえる
やがて、城の前に立った
門はやすやすと開いた
兵士も、ましてや人の気配もない
赤いじゅうたんを越えて、一際大きな扉の前に着いた
扉を開く
きしみさえ聞こえない上質な扉を開ける
誰もいない
その時私はやっとこさ気づいたのであった
これは帝国の「ぬけがら」だったのだと