幕間四
夢。
夢を見ている。
今は遠く離れた夢。
姉と過ごした日々。
それはどの時間も奇跡のようで。
どれも宝石のようにキラキラと輝いていた。
だけどそれは幻想。
夢のような幻。
私にとって姉と過ごした日々は黄金色でも。
姉にとって私と過ごした日々は破り捨てたい――消去したい記憶なのかもしれない。
「結維、〝ペルソナ〟って知ってる?」
「〝ペルソナ〟?」
幼い結維は姉の部屋で、キョトンと首を傾げた。
姉はそんな私の様子を見て、クスクスと笑みをこぼす。
「そう。心理学の言葉でね、自分の外側の性格、といえばいいのかしら。人はね、皆何かを他人に演じながら生きているのよ」
机の上に置いてある白い仮面を手にし、くるくると弄ぶ姉。
結維は、それはどういう意味なの、と問いかける。
「うん。例えばね、友達と接する時、私はなるだけ優等生を演じ、彼女らと接している。父さんの前では、私は無口になるし、母さんの前では、学校の愚痴をこぼして困らせる娘にもなる。そして彼の前では、私は甘えた猫になって、彼を慰める立場にもなる。
人はね、他人と接する時、様々な仮面をつけてその人達と相手をするのよ」
そうする事で、本性を悟られないようにもしてるのよ。
姉はそう言った。
「でも……お姉ちゃん。私は、お姉ちゃんの事、好きだよ。お姉ちゃんは、私の目標だもの!」
私がそう言うと、姉は少し困った表情をした。
私の後ろに周り、私を抱きしめ頭を撫でる。
「……それはね、結維。私が、〝理想の姉〟を演じてるだけなのかもしれない。子供の頃から植え付けられている様々なイメージが、私に、『妹とはこう接するのよ』と言っているだけなの。本当の、〝本性〟の私はね――」
姉が沈黙する。
ぶるぶる、と姉の身体は震えているようで、私は不安になり、振り向いた。
「お姉、ちゃん……?」
「――ん、なあに?」
姉は破顔していた。
それは見たこともない笑顔で。
恍惚と快感が入り混じった顔で。
まるで、愛玩動物を見るような。
この玩具を壊したら、どんな事になるのかを頭の中で空想してるような顔だった。
私はその時、姉が何を考えているのか見抜けず――
「お姉ちゃん、好き!」
そう言って、姉に抱きついた。
それは、本能故の行動だったのか。
姉の本性にうっすらと気付いていながら、その現実を直視したくない故の行動だったのか。
それも、今となっては分からない。
セントパレスチナタワー。
その最上階で、私は姉に殺されようとしている。
大好きだった姉に――
「さあ結維、これが最後だ! 私の〝最後〟を決めるカーニヴァルを始めよう!」
ゼロに扮した姉は、右手に握られている装置のボタンを押す。
大爆発と轟音が鳴り響く。
「……さあ、これで終いだ。石杖裁也、私を殺しに来いッ!!」
ハッハッハ、とゼロの哄笑が響く。
ロスト・クリスマス事件。
過去最低最悪の惨事が、再び幕を開けた。
Fate/stay night ubwが面白すぎて困っている。
暇さえあれば、0話と一話を繰り返して見ている。
アニメ界の進歩に感謝。




