最終章『Zero・dark・hour』第一話
「……ふあぁぁっっ…………」
冬であるのに、真昼のこの時間帯は眠気が襲ってくる。
ムニャムニャと如月結維は、学校の机にうつ伏せになった。
皇製薬第一研究所が崩壊し、あれから月日が経過した。
季節は移り変わり、冬に到来する間、ゼロの犯罪はなりを潜めていた。
少し前は模倣犯による事件は活発化し、事件はテレビやネットを騒がせていたのが遠い過去のようだ。
石杖裁也も、皇系列専用の施設に運ばれ集中医療に入り、結維は追い出された。
一応、面会や連絡は取れるのだが、すぐ側には何故かあの皇月夜がいて、結維の心中は穏やかじゃない。
時たま面会に行って話しても、他愛ない世間話で、姉の花蓮の事や今回の一件については、裁也は口を閉ざして話してくれない。
結維が見る限り、裁也と月夜、帝人の三人は、何かに向けて準備を進めてるようだったが、結維には何も教えてくれなかった。
ハッキリ言って面白くないのだが、事情も事情なのだろう。致し方無いと思いつつも、その件を追求すると、裁也が不器用に誤魔化すのが、結維にとってはやはり腹立たしい。
(大体、何が治療中よ! アンタ、もう元気じゃん!)
先日、病院を訪れた時の事を振り返る。
いつも通り受付を済ませ、裁也の治療室に向かうと、彼はいなかった。
どこだろうと思い、病院内を散策していると、ハードトレーニングをしている裁也を見つけた。
ギョッと驚き、結維が裁也に声をかけると彼は、リハビリだと言って、気まずげな顔をしていた。
もう退院出来るんじゃないの、と問うと、
まだ怪我が酷くて無理だ、と返された。
まるで誰かと戦うのを想定した仮想戦闘を繰り返していた人の言葉とは思えず、結維が追求すると、月夜が乱入してきて裁也を連れ去ってしまった。
……今でも、あの勝ち誇ったドヤ顔が忘れられない。
まるで石杖裁也を、自らの所有物のように扱う月夜に、激しく憤りを覚える。
プルプルと、怒りで震えていると、
「あねっ、さーーーーん!!」
と、皇帝人が教室に飛び込んできた。
竜ヶ峰の制服を着た彼に、クラスの皆は驚き、結維も思わず目を見開いた。
「ど、どうしたの帝人君っ? 急に飛び込んできて、何かあったの?」
先日、竜ヶ峰の編入手続きを済ませた彼は、現在の結維のお目付け役兼、連絡係だ。
ゼイゼイ喘いでいる彼は、指を校内放送のスピーカーへと指し示す。
何だろうと、顔をしかめると、急にスピーカーにスイッチが入り、放送が流れた。
『あーっ、あーっ、マイクテス、マイクテス……。うん、OKのようね。
ゴホンッ。あー、生徒会長である皇月夜からの連絡よ。二年の如月結維、及び一年の我が愚弟の皇帝人。至急生徒会長室までいらっしゃい。いい? 十秒以内よ。それ以上は待てないからねっ!』
ブツッ、と一方的にスピーカーの音声が途切れる。
結維と帝人の二人は、微妙な面持ちで互いの視線を交錯させる。
「……とりあえず、逃げよっか」
「……ですね。ロクな事、起きないッスから」
そうして、二人は教室から出て行った。
皇月夜の呼び出し。
彼女に絡まれて、平和的に解決した事はまだ一回もなかった。
最後の章、始まります。




